まだ旅の途中2
「あんたたちはどうするの? ザイハンシの懸賞金があればしばらくはのんびりできると思うよ」
「……私たちにはやらなきゃいけないことがあるんです」
「やらなきゃいけないこと……その年で何か重たいもん抱えてんだね」
真っ直ぐに見つめるクリアスの目を見て、ミャルエスカは寂しそうに微笑んだ。
「一つ聞きたいんですが、いいですか?」
「んー、いいわよ。お姉さんに答えられることなら何でも聞きなさい」
「キツソウは、どうなりましたか?」
「キツソウ? 何でそんなこと知りたいのか分からないけど……まあ、教えてあげる」
ミャルエスカは俺たちとキツソウの関係を知らない。
知っているとしてもジュレインぐらいだろうが、軽々しく口にできることでもない。
知らなくとも当然だし、そうなるとキツソウのことを聞くのを不思議に思うこともおかしなことではないだろう。
「全滅」
「全滅……?」
「‘あの人数が全滅か……’」
ミャルエスカは軽く答えたのだけど、なかなか重たい言葉だった。
見た感じではピヨハンシの方よりもキツソウの方が多く人数を割かれていた。
それなのに全滅したというのはかなり衝撃的な話であった。
「正確には分からないんだけどね」
「どういうことですか?」
「キツソウの追跡メンバーは全員行方不明になったの」
「行方が分からなくなってしまったんですか?」
「そう。全員消えるなんておかしいでしょう? だからキツソウにやられて全滅した……と冒険者ギルドは考えているわ」
「‘もしかしたら、俺たちは運が良かったのかもな’」
メルドランギルドの崩壊から始まり、追跡部隊の全滅までまだ俺たちが想像していたキツソウのイメージがだいぶ変わってきた。
もしかしたら想像よりも遥かに危険な力を持った人物なのかもしれない。
ピヨハンシの方を優先せず、キツソウの方に行きたいなんてワガママを言っていたら俺たちも今頃行方不明者の一部だった可能性がある。
「冒険者ギルドの中ではキツソウの危険度をさらに高く見積もって、指名手配が認定された国以外でも積極的に追いかけるように広く通達を出したわ」
これまでキツソウは違法な実験を行っていた国で指名手配をされていて、他の国ではあまり注目されていなかった。
一応冒険者ギルド全体では情報共有されていたが、指名手配の掲示板の隅に置かれている存在であった。
だがこれからは他の国でも掲示板の中央に置かれる、本格的な世界指名手配犯扱いになるようだ。
俺としては遅すぎると思うぐらいだが、被害が出なきゃ腰が重いのはどこでも同じ。
「キツソウとの関係は知らないけど……あいつは危険だよ。ザイハンシもかなりのものだったけど……もう死んだからね」
「……気をつけます」
「何にしてもどこに行ったのかは分からない。あんたたちは旅の続けるのかな?」
「そのつもりです」
「あんたたちなら……大丈夫そうだね。でも困ったことがあったら、私のことを呼ぶといい。少しぐらい力になってあげるよ」
ミャルエスカは優しい笑顔を浮かべていた。
「ありがとうございます」
「今回はあんたたちに命を救われたと思ってるからね。何をしたいのか……それは聞かないけど頑張りなよ」
「…………はい」
出会い、別れ、そして成長。
旅路を考えると、足踏みかもしれないが俺たちの中に残る大きな経験であった。
ヘルンという存在に出会い、俺の魔物観も少しは変化があった。
そして合成により、俺自身の身にも大きな変化を受けた。
だがピヨハンシを倒すことは俺たちの旅の目的じゃない。
これはあくまでも旅の途中なのだ。
まだまだ俺たちの旅は続く。
カリンを元に戻すため。
そして人に戻るための長い旅の途中に俺たちはいたのである。
ーーー第二章完結ーーー




