想いに応えて7
「ラクさん! 行ってください! ヘルンさんの……敵討ちです!」
ピヨハンシが大口を開けてブレスを放つ。
クリアスがシールドを張って防いでくれて、俺は恐怖を振り切るように走り出す。
「みんなの犠牲を無駄にはできないからね! ダークチェーン!」
ミャルエスカも魔法を使ってピヨハンシを拘束する。
黒い鎖にグルグル巻きにされたピヨハンシは、ギョロッとした目で俺のことを睨む。
「コケーッ!」
もはや人の言葉すら発さないピヨハンシは尻尾の蛇を俺に向かって伸ばす。
散々切断されたせいで先端の蛇頭はないが、太い尻尾はいまだに脅威的な存在だ。
「‘くっ……’」
みんなで作り出したチャンスを無駄にはできない。
俺は尻尾の蛇が脇腹を掠めて鋭い痛みが走っても前に出続ける。
「‘左目、復活してるな!’」
ヘルンがナイフをブッ刺して潰したのは左目。
右目は爆発の衝撃で飛び出てしまっているが、左目はバケモノ化した時に治ったままであった。
「‘もう一度潰してやるよ!’」
俺は爪を振り下ろす。
爪がピヨハンシの顔面に突き刺さり、そのまま眼球を切り裂いて腕を振り切る。
流石に眼球を潰されればピヨハンシも痛いらしく甲高い声で鳴く。
「ラクさん!」
鳥の手の鎖が引きちぎられる。
俺の頭に向けて鳥の手が突き出されて、クリアスが悲鳴のような声を上げる。
「‘残念。右目、見えてんのか?’」
適当に突き出したのではなく、思いの外しっかりと俺の頭を狙ってきた。
それでも狙いは甘く、俺は首を傾けて鳥の手をかわした。
顔の横が軽く切れたが、今の俺はそんなに痛みも感じていない。
「‘お前に三度目はあるかな?’」
一度目はザイハンシとして死にかけている時にコカピヨスと合体して生き延びた。
二度目はザイハンシの頭を斬り飛ばされたのにコカピヨスの頭を生やして生き延びた。
三度目はあるだろうか。
俺はピヨハンシの首に爪を突き刺す。
「‘次はない…………吹き飛べ……ヘルンの仇だ!’」
爪の先に魔力を集める。
全ての魔力を復讐の炎に変えて、俺は一気にピヨハンシの首を爆破して吹き飛ばした。
「ラクさん、大丈夫ですか!」
爆発の勢いで俺は後ろに転がる。
クリアスが駆け寄ってきて、心配そうに俺の顔を覗き込む。
「‘くっ……あいつは…………’」
爆発の衝撃、それに魔力がなくなって酷い頭痛がする。
それでも俺は復讐の結末が知りたくて、クリアスに支えてもらいながら体を起こす。
「どうやら倒したようだね」
ピヨハンシは上半身が吹き飛んでいた。
腰から下しか残っておらず、ミャルエスカが鎖の拘束を解くとゆっくりと地面に下半身が倒れる。
「‘…………やったぞ、ヘルン。約束は…………果たしたからな’」
いつから俺はこんな義理堅い男になってしまったんだ。
‘アニキ、ありがとっす’
目を閉じたらヘルンの顔が浮かんできた。
声が聞こえた気がした。
きっと別れじゃない。
これからヘルンは俺と共に旅を続けるのだ。
共に行こうか、復讐を終えてお前は自由だ。
俺を支えてくれ。
これからも俺は俺のために戦っていくから。
「ラクさん……ラクさん!」
「気を失っただけだ。……さて、この状況どうするかな」
俺はそのまま気を失ってしまった。
俺の復讐の戦いは終わったが、事後処理せねばならないミャルエスカは深いため息をついたのだった。




