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【第二章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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想いに応えて6

「‘人をむさぼり食っていたのか’」


 何をしていたのか、俺には分かった。

 戦いの最中の言動、それにコカピヨスが人肉を与えられていたことなんかを考えると、もはやピヨハンシは人を食らう化け物になっていたのだ。


「はぁ……はぁ……」


 ピヨハンシは苦しそうに呼吸をしている。

 虚ろな目はブルブルと震えるように細かく動き、もはや理性のカケラも見られない。


「なんで……こんなことに……? そうだ……あの野郎……キツソウが……」


 鳥の手で頭を抱えてピヨハンシはぶつぶつと何かを呟いている。


「ラグルド、まだ行けるか?」


「行く。ウィスドンドやボルスティの仇を取っていないからな」


 ユベーラとラグルドが粘度の高くなった血を踏み締めて、部屋に入っていく。


「その前に……何かが………………」


「何を言っている!」


「みんなの仇を取らせてもらう!」


「俺は……何者なんだ……?」


 ユベーラとラグルドの剣が迫るも、ピヨハンシは動かない。

 ピヨハンシの首が刎ね飛ばされる。


 半端に羽が生えた頭部が床に落ちて、鈍い水音が響く。

 なんとか体を縮こませてベアラステが部屋に入った時にはもうすでに、ピヨハンシの首はコロコロと転がっていたのだった。


「‘これで終わり? あまりにもあっけない……’」


 強敵の最後にしてはなんとも拍子抜けである。

 最後の抵抗でも見せると思ったのに、何もせず首を斬られるなんて正直つまらない。


「倒したのでしょうか?」


 ベアラステの背中でピヨハンシの体の様子がよく見えない。

 俺とクリアスは部屋の中を覗き込む。


「‘…………クリアス!’」


「ひゃっ!?」


 尻尾の蛇がピクリと動いた。

 危険を感じた俺はクリアスを抱えて大きく後ろに飛び退く。


「ベアラステ!」


 頭はないはずなのに、ピヨハンシの尻尾の蛇が動いた。

 部屋に入ってきたベアラステの前まで伸びていくと、ずるりと蛇の頭が生えてきて、大きく口を開けてブレスを吐き出した。


 かわすこともできずにブレスを思い切り頭から浴びたベアラステは、みるみると石化していってしまう。


「この!」


 ユベーラが尻尾の蛇を切り落とす。


「‘なんだあれ……’」


 斬られた首がモコっと盛り上がる。


「あれはコカピヨスの頭……?」


 首から頭が生えてきた。

 しかしそれは人の頭ではなかった。


 ニワトリのような、クチバシやトサカのあるコカピヨスの頭が生えてきたのであった。


「もう一度頭を切り取ってやる!」


「ケーッ!」


 ラグルドがピヨハンシに斬りかかる。

 ピヨハンシは人間ではない鳴き声を上げて、鳥の手を伸ばす。


「くっ! いい加減……気持ちが悪いんだよ!」


 ピヨハンシの爪に腕が浅く切り裂かれるが、ラグルドはそのまま剣を鳥の手に刺した。


「ユベーラ、やれ!」


 剣を突き刺したまま、ラグルドはピヨハンシの羽毛を掴む。


「死ね……この化け物が!」


 ユベーラが後ろからピヨハンシの胸に剣を突き刺す。


「ミャルエスカ!」


「……死なないでね!」


 ミャルエスカが手のひらを向き合わせる。

 火花が散ったと思ったら瞬く間に火が大きくなって、圧縮された火球が生まれる。


「はぁっ!」


 ミャルエスカが両手を突き出し、火球を撃ち出した。


「ラクさん、私の後ろに!」


 まっすぐ飛んでいった火球はピヨハンシの頭に直撃して大きな爆発を起こした。

 行き止まりの地下の部屋で起きた爆発は行き場もなく、火炎と熱風がこちらに向かってくる。


 クリアスが魔力でシールドを張って、俺とミャルエスカを保護してくれた。


「‘どうなった?’」

 

 部屋に充満する黒煙で状況がよく分からない。

 焦げ臭さに覆われて鼻も効かず、俺たちはただ黒煙を睨むように見つめるしかない。


 爆発によって周りの空気の温度が一つ上がっている。

 戦いの熱気と混ざり合い、嫌な熱さとなっていた。


 俺はクリアスとミャルエスカを守るように前に出る。

 もはや残っているのは俺たちだけかもしれない。


「‘誰だ? ユベーラか、ラグルドか、それとも……ピヨハンシか?’」


 黒煙が不自然に揺れた。

 何かが黒煙の中で動いている。


 心臓の鼓動が速くなる。

 俺は何を望んでいるのか。


 ユベーラとラグルドが黒煙の中から出てくるのであれば戦いは終わり。

 それでいいはずなのだけど、どこかでピヨハンシが出てくることを望んでいる。


 この手で終わらせる。

 心のどこかでそう望んでいるのかもしれない。


「ウソ……」


 ミャルエスカが落胆したようにつぶやく。


「‘やっぱり……俺の手で終わらせるしかないか’」


 黒煙の中から現れたのはピヨハンシであった。

 片目が飛び出して、胸に剣が突き刺さったままのピヨハンシは瀕死の状態であるが、まだ死んでいなかった。


 俺は思わず口の端を歪めて笑顔を浮かべてしまう。

 うなるような顔をした怖い笑顔だと思う。

 

 ここまで邪魔しちゃいけないと下がっていたが、口惜しさはあった。


「‘俺が終わらせる’」

 

 散々こいつには振り回された。

 ヘルンを殺された。

 

 多くの人も亡くなった。

 俺は爪に魔力を集めてマジッククローを発動させる。


 淡く輝く魔力の爪はヘルンとの合成で得られた力だ。


「‘正直怖い……だけど、俺にはヘルンのアホがついてるんでな’」


 復讐を終わらせる。

 そして俺はまた前に進む。


 ヘルンもそれを、望んでいたから。

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