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【第二章完結】魔物に転生した俺は、優しい彼女と人間に戻る旅へ出る〜たとえ合成されても、心は俺のまま〜  作者: 犬型大
第二章

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想いに応えて4

「……来るぞ!」


 ピヨハンシが一歩踏み出した。

 鈍い水音が聞こえて、部屋の床に何がどろっとした液体があることを俺の耳が察知する。


「くっ!」


 一気に加速したピヨハンシが鳥の足のようになった手を突き出してユベーラに襲いかかった。

 ユベーラは剣を前に出してピヨハンシの攻撃を防ぐも、堪え切れずに押される。


 後ろにいたラグルドがユベーラを支えてようやく止まる。

 ピヨハンシの爪先がユベーラの額にわずかに食い込み血が流れていた。


「ふっ!」


 ユベーラとラグルドの横をすり抜けて、剣を抜いたボルスティがピヨハンシを斬りつける。


「なに……」


 ピヨハンシは素手で剣を受け止めてしまった。

 手のひらにわずかに血が滲むも、その程度で済んでいるのだからボルスティも驚く。


「コッ!」


 剣を鷲掴みにされて動けなくなったボルスティを鳥の手で狙う。

 主人のピンチにボルスティの魔獣が動く。


 カッと目を目を見開いた頭の上のニワトリは、口を大きく開いて凍てつくブレスを放った。


「……コルテス!」


 言わば鳥同士の戦い。

 しかしピヨハンシは頬を凍りつかせながらも怯むことなく鳥の手を動かす。


 ニワトリのコルテスを掴むと、首を握って叩き折る。

 さらには口を開けて、そのままコルテスの頭は食いちぎってしまう。


「この!」


「ボルスティ、冷静になれ!」


 まるで果物でも絞るように滴る血を飲むピヨハンシにボルスティが激昂する。

 自分の魔獣をやられたのだから気持ちは分かる。


 でも魔物を握りつぶして血を飲む化け物を相手に冷静さを欠くのはいただけない。


「ボルスティ!」


「‘こいつは……ヤバいな’」


 ボルスティは剣を振り下ろし、ピヨハンシの肩に直撃した。

 しかし対してピヨハンシの方も防御を捨てて鳥の手を突き出していた。


 コルテスの血に塗れたピヨハンシの口が笑うように歪む。


「か……は……」


 ボルスティの腹部を突き破り、ピヨハンシの手が出てくる。

 ピヨハンシも肩口をざっくりと切り付けられているが、あまり気にしていない。


「ばけもの…………」


「やめろ!」


 ユベーラの叫び虚しく、ピヨハンシは不自然なほど大きく口を開いてボルスティの喉を噛みちぎった。


「あいつ……!」


「ミャルエスカ、落ち着け!」


 取り出していきそうなミャルエスカをユベーラは止める。


「もう助からない……」


 ピヨハンシは首から噴き出す血を浴びて恍惚とした表情を浮かべている。

 腹に穴が空いただけならまだ助けられたかもしれない。


 だが首に穴を開けられては助からない。

 ここは一度冷静になる時が必要であった。


「‘何が起きたらあんなバケモンになるんだ……’」


 流石の俺もドン引きだ。

 精神的に成長してきたクリアスも目の前の光景は流石に受け止めきれないようで、顔が真っ青になっている。

 

 もはや精神的にもイカれた存在になってしまっているとしか言いようがない。


「仕切り直しだ……ボルスティの仇を討つぞ!」


 油断していたわけじゃない。

 だがピヨハンシが予想を超えた化け物になっていたのだ。


「ベアラステ!」


「‘おっと’」


 後ろから血まみれになったベアラステがやってきた。

 ベアラステの血ではない。


 先ほどまで戦っていた相手の血だった。

 ユベーラとベアラステ、そしてラグルドがピヨハンシに向かっていく。


 ミャルエスカは魔法で後方からの攻撃、クリアスも同様だ。

 俺は後ろを警戒しつつ邪魔にならないよう前には出ない。


 俺が前に出ては通路もいっぱいいっぱいになってしまう。

 まあ、隙を狙わせてもらう。


「俺の乾きを癒してもらおうか!」


 ピヨハンシは正面から迫るベアラステに鳥の手を伸ばす。

 ベアラステの首をグッと掴むも、コルテスのように簡単には首を折ることなんてできない。


「‘このままいけるか……?’」


 ベアラステは自分の首を掴むピヨハンシの腕を、太い前足で叩き折る。

 骨が折れる鈍い音が響く。


「ウィスドンド!」


 ラグルドが手を伸ばす。

 ここまでラグルドの魔獣はなんなのか一切説明がなかったのだけど、服の中にいるとミャルエスカから話だけ聞いていた。


 ラグルドの袖口から魔獣が飛び出してきた。

 ウィスドンドという名前がつけられた魔獣の正体はムカデだった。


 数え切れないほどの足を持つデカめのムカデが袖口から伸びて、ピヨハンシの首に噛みついた。


「‘うお……’」


 俺の背中にゾクゾクとしたものが走る。

 ムカデが魔獣というのはいいのだけど、それを常に服の中の体に巻きつけていたと考えると結構ムリだった。


 よく体にムカデを這わせて平気だな。

 俺は嫌だ。


「う、うわぁ……」


 ムカデの鋭い牙がピヨハンシの首に食い込んでいる。

 だが完全に目がイッてるピヨハンシは痛みを感じていないのか、ウィスドンドに噛みついた。


 メリメリと音がしてウィスドンドの体が食いちぎられ、ラグルドの顔に驚きと怒りが広がっていく。

 ムカデを噛みちぎる光景にはクリアスも思わず声を漏らしてしまっていた。


「化け物め!」


 ユベーラが剣を振る。

 ピヨハンシは剣を防御しようと腕を上げるが、ただの腕に剣など防げず腕の真ん中から斬り飛ばされる。


 壮絶。

 あまりにも過酷な命の奪い合いが目の前で起きていた。


 ほんの少しだけ、俺は自分の戦うという覚悟の甘さを自覚したような気分になった。

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