表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未知なる世界の歩き方  作者: リース
最終章 天界の国ヴァルハラ編
160/161

第160話 未知なる世界の歩き方

光に包まれたミサキの体が、天界の大地に降り立った。


まばゆい天空城の前、白く輝く大理石の広場には、仲間達が揃っていた。


「ミサキ!帰って来たんだな!」


「よかった……!本当に戻ってきたんだね……!」


「心配したんだから……っ!本当に、本当に……!」


「まったく……心臓に悪いぞ」


仲間達が次々に声をかけてくる。


「みんな……本当に心配かけた」


ミサキは申し訳なさそうに返事をする。


「……でも、本当に戻ってきてくれてよかった」


「おかえり、ミサキ!」


「本当に無事でよかった!」


仲間達のその声に包まれながら、ミサキは改めて感じた。


……私は、ここに帰ってきたんだ。


「でも、本当に良かったんですか?やっと故郷に戻れたのに、またこっちに来てしまって……?」


ミサキは一瞬だけ空を見上げ、そして笑って答えた。


「ああ。正直……凄く悩んだ。あっちの世界にも、私の家族や思い出があるし……簡単な選択じゃなかった」


リーナは黙ってうつむき、ミサキの言葉を待つ。


ミサキはゆっくりと、まっすぐにリーナの瞳を見て言った。


「でも……私はリーナと一緒に居たいんだ。リーナと一緒に、もっともっといろんな場所に行きたい。

いろんな景色を見て、いろんな人に会って、まだ見ぬ世界を一緒に冒険したかったんだ」


その言葉を聞いた瞬間、リーナの目に涙が溢れた。


頬に流れるその雫を拭おうともせず、リーナは声を震わせた。


「ミサキ……」


言葉にならない想いが胸にあふれて、リーナはただその場でミサキに抱きついた。


ミサキも優しくその背中に手を回し、そっと目を閉じる。


静かに、やさしく、二人の心が確かに重なった瞬間だった。


「ミサキ」


ふと、ラプラスがミサキに声をかける。


「お前には礼を言わねばならん」


そう言って、ラプラスは静かに頭を下げた。


「ベルゼゴルを倒してくれて、ありがとう」


ミサキは驚いた、あのラプラスが、こんなに丁寧に礼を言うなんて。


「ううん……」


ミサキは首を振る。


「私はただ戦っただけだ。あいつを野放しにしてたら、この世界が滅茶苦茶になってた。

だから、やるべきことをやっただけ」


「そうか……」


ラプラスはミサキの言葉を聞き、静かに目を閉じた。


「ソラ……」


かすれた声が漏れる。


ラプラスの拳が、ぎゅっと握りしめられる。


「お前の仇は、彼女たちが取ってくれたぞ……」


その頬を、静かに涙が伝った。


「師匠……」


ミサキは、その名を呼ぶことしかできなかった。


しばしの沈黙の後、ラプラスはゆっくりと顔を戻す。


「……さて」


彼女はいつもの冷静な声に戻っていた。


「お前たち、これからどうする気だ?」


ミサキはリーナと顔を見合わせ、笑った。


「うーん……まだ、冒険を続けるつもりですよ」


「そうか」


ラプラスは頷き、少し考えるように目を細める。


「ならば……もし冒険が終わったら、俺のところへ来い」


「え?」


「いい役職を与えてやる」


「……ありがとうございます、師匠」


ミサキは真剣な顔で頭を下げた。


ラプラスは満足そうに頷き、そして静かに背を向けた。


「……では、俺は行く」


ラプラスはゆっくりと歩き出す。


「お待ちください。これから邪神ベルゼゴルを倒したお礼に宴を開こうと思っています。

よろしければ貴方も参加しませんか?」


アルテミスがラプラスを呼び止めるが、ラプラスはそれを断った。


「悪いな。魔族と人間との契約が無くなった今、やる事が山積みだ。

邪神との戦いが終わった後に、今度は魔族との戦争でも起きようものなら、洒落にならんからな」


「……わかりました。そういう事でしたなら」


そう言うと、ラプラスは天界から去っていった。


ミサキたちは、その背中を見送った。


「貴方達はどうされますか?」


「そうですね……折角だから、参加させてもらいます」


「天界の宴なんて楽しみです!」


ミサキたち6人は賛成し、天界の宴に参加する事となった。


***


大邪神ベルゼゴルを打ち倒し、世界に平穏を取り戻したその日、女神アルテミスのはからいで、6人の英雄たちを祝う盛大な宴が開かれることとなった。


澄み渡る空気の中、天使たちは金と白の羽衣をひるがえし、優雅な歌と舞を披露している。


清らかな歌声は空に届き、きらめく光の粒となって辺りを舞っていた。


その中心の長テーブルでは、ミサキと仲間たちが席に付き、テーブルの上には、美しく飾られた食事が並んでいた。


雲のようにふわっふわなフルーツ、夜空を掬ってきたかのようなスープ、虹のような層が産まれたゼリーなど、6人は思い思いに天界の食事と、天使達の歌と踊りを楽しんだ。


しばらく宴会を楽しんでいると、アルテミスが静かに舞台の中央へ移動する。


その場で一礼すると、天使たちと共に舞い踊り始めた。


金の髪が風にたなびく、月の光のような舞。


その美しさに、広場の誰もが息を呑んだ。


しばらくの間、6人は天使と女神の舞を堪能するが、次第に瞼が重くなってくる。


満腹と心の安堵、そして何よりも長きにわたる戦いの疲れが、ミサキたちを優しく包み込んでいた。


ふと気づけば、ミサキはそっと目を閉じていた。


その肩にもたれかかるリーナも、すでに小さく寝息を立てている。


エルメスも、ジャンゴも、アクアも、ツバキも──


気づけば皆、椅子に寄りかかりながら静かに眠っていた。


女神アルテミスはそれに気づくと、微笑みを浮かべる。


「あれだけの戦いの後ですからね……今はただ……おやすみなさい」


天使たちは踊りをやめ、静かに眠る者たちの周囲に、雲のような毛布をかぶせていく。


それは疲れを癒やし、穏やかな夢へと誘う、至高の毛布。


こうして、英雄たちの祝宴は優しさに満ちた眠りの中で、静かに幕を閉じていったのだった。


***


神々の祝宴が明けた翌朝──


柔らかな朝の光が天界の空を包み、淡く揺れる雲の上で、ミサキたちはゆっくりと目を覚ました。


「おはようございます。昨夜はよく眠れたようですね」


微笑む女神アルテミスが、静かに彼女たちに近づいてくる。


「あなた達に馬車を用意しました。これで地上にお戻りください」


そこには天馬に繋がれた大きくて豪華な馬車が6台用意されていた。


エルメス、ジャンゴ、アクア、ツバキ──


ミサキたちと苦楽を共にした4人が、少し名残惜しそうに立ち上がる。


「ミサキ、リーナ、天界の旅は最高だったぜ!またな!」


元気よくそう言ったエルメスは、王都セントルの空へ向かって天馬の馬車に乗り込む。


「また会えて嬉しかったよ……またね……」


ジャンゴは寂しそうに笑いながら、砂漠の国エジェトへと飛び立っていく。


「色々大変だったけど……楽しかったわ……またね」


アクアは少し照れた様子でそう言い、海底都市アトラントへ向かう。


「またな、二人とも」


ツバキは短く挨拶すると、和の国ヤマトへ向けて馬車に乗り込んだ。


それぞれが去っていく中で、ミサキとリーナは肩を並べて空を見上げた。


「残るはあなたたちですね」


アルテミスが優しく微笑む。


「地上のどこへでも届けられます。ご希望はありますか?」


ミサキとリーナは顔を見合わせ、笑う。


「じゃあ……どこか適当な船着き場にでもおろしてください」


「わかりました」


二人は同じ馬車に乗り込んだ。


「改めて、本当にありがとうございました。あなたたちは、この世界の救世主です」


アルテミスは深く頭を下げた。


「救世主か……」


ミサキはその言葉を噛みしめるように呟く。


「でも……私たちは、冒険者の方がそれっぽいかな?」


リーナも同意するように笑う。


「そうですね、やっぱり私たちは冒険者ですよ!」


そして、天馬の馬車が出発し、空の海を駆ける二人。


見下ろせば、世界の大地と海が広がり、まだ見ぬ新たな冒険が待っている気がした。


「さて……次はどんな冒険になるかな」


ミサキが笑う。


「何が来ても、二人なら乗り越えられますよ!」


リーナも元気に応える。


──こうして、世界を救った英雄たちの旅は終わりを迎えることなく、ミサキとリーナの冒険は、まだまだ続いていくのだった。


***


ミサキ達は冒険をする。


どれだけ険しい道を行こうが、どれだけ強い敵と出会おうが。


そこにある輝かしい経験の為に、彼女らは足を進める。


それが彼女達の、未知なる世界の歩き方。

面白かった 続きが読みたい方は ブックマーク 感想を入れたり

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ