表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/64

25話 彼女の願い

「白火倶槌ってのはな、その名の通り、白い火倶槌の事だ」

「はあ」

「もののけはそれぞれの環境に対して主が存在していて、白火倶槌は……まぁ晴れの主ってとこか」

「それが今の状況と、どう繋がるんですか」


 それを聞いた龍治がニヤリと笑う。


「白火倶槌はな……高いんだよ」

「は?」

「素材だよ素材。どの部位も高価で武具にしても一級品。ただ、すんげえつえーから、白火倶槌が出たら狩りたい狩人を集めて、集団で狩る事にしてんだよ」


 成程。つまり先程の狩人達の行動は、白火倶槌を狩る為の行動だったと言う事か。

 しかし、それならそれで疑問がある。


「それって、白火倶槌を狩り終わったら、内乱が発生するんじゃないですか?」

「ああ、素材を賭けたバトル・ロワイアルが始まる」


 結局ここでも力技なのか。

 不死之山の狩人は姫山の狩人に比べて、どうも力で解決する傾向があるな。

 むしろ、それが狩人の本質なのだろうか。


「そう言う事だから、お前はもう用済みだ」

「それは助かります」

「ただし……」


 切り株に座る龍治が殺気を放つ。

 そして、真っ直ぐに俺を睨み付けて、言った。


「俺達の狩りを邪魔したら……殺す」


 本気の表情。

 俺は姫山で龍治と遭遇した時、ハンデ付きの殺し合いで一度負けている。そこから考えても、俺が龍治に勝てる可能性は皆無だろう。


「分かりました」


 よって、大人しくこの言葉を発しておく。

 龍治はそれに頷くと、ゆっくりと切り株から立ち上がり、仲間達が去った方向へと帰って行った。

 周囲に人が居なくなり、俺と鷹子だけが残される。

 そんな状況で、俺は笑顔で鷹子の方を向き、サラリと言った。


「それで、鷹子さんはどうしたいですか?」


 その言葉を聞いて、目を見開く鷹子。

 恐らく、この言葉を言われるとは思って居なかったのだろう。


「お前は龍治に従うんじゃないのガ?」

「俺はそんな返答をした覚えはありません」


 言葉を失っている鷹子。

 だから、俺の方から言った。


「鷹子さんも白火倶槌をどうにかしたいから、不死之山に籠って居たんじゃないんですか?」


 鷹子が行方不明と偽って、白火倶槌を追って居た理由。

 それを聞くまでは、素直に姫山に帰る訳には行かない。


「白火倶槌は……」


 そして、鷹子が語り始める。


「白火倶槌は、霊山の守り神なのガ」

「守り神?」

「そうガ。だガ、それは人間では無く、ワシらの様な『半落ち』の間だけだガ」

「はんおち?」


 初めて聞いた言葉に首を傾げる。


「半落ちとは、ワシの様に、もののけの特性を体に宿した人間の事ガ。霊山の一階層と二階層の間に集落を構えてるガ、ワシのように狩人になる者も居る」

「そうなんですか」

「ワシらは、一部のもののけを守り神として崇め、それらを守る事で、霊山の均衡を保って居るのガ」


 それを聞いて、鷹子が不死之山に籠った理由が分かる。

 しかし、同時に一つの疑問も浮かんだ。


「そんなに大切な存在なら、どうしてさっき、白火倶槌が居る事を話たんですか?」

「……ガ」


 しまったと言う表情を見せる鷹子。

 どうやら鷹子は、言葉の駆け引きが苦手な様だ。


「……狩人を一網打尽にする為ガ」

「成程、案外武闘派なのか」

「皆殺し、一番効率的ガ」


 何それ怖い。

 しかし、それを堂々と言ってしまうという事は、それなりの実力を持って居るという事だ。

 俺はやれやれと息を吐いた後、近くの切り株に座る。


「それじゃあ、皆殺しにする手段でも考えますか」


 それを聞いた鷹子が、再び驚きの表情を見せた。


「手伝ってくれるのガ?」

「手伝いますよ。同じ姫山の仲間ですし。それに……」

「そレに?」


 龍治が持っていた成章。

 随分と手に馴染んで居るように見えたが、あれは元々俺の事を選んでくれた成章だ。

 だからこそ、俺の手で取り返さなくてはいけない。


「……いえ、何でもありません。それでですが、鷹子さんには、不死之山狩人皆殺しのプランはありますか?」

「出会った奴を片っ端から皆殺しガ」

「殺人鬼ですか貴女は」


 満更でもないにこやかな表情に、小さくため息を吐く。


「そうですね……俺が囮になって、狩人が出て来た所を皆殺しって言うのはどうですか?」

「それだとイチローが危険ガ」

「俺は元々狙われてますし、他でも無い『この山』であれば、俺にも勝機はあります」

「……ガ?」


 鷹子が首を傾げる。

 まあ、この山が俺のやっていたゲームと同じ地形で、同じ手段が使えそうだからと言っても、鷹子には理解出来ないだろう。


「とにかく、お互いの戦い方が分からない状態で、協力して戦うのにはリスクがあります」

「それはそうガ」

「では、それで行きましょう」


 話が終わり、ゆっくりと立ち上がる。

 すると、鷹子が改めて真っ直ぐに立ち、こちらに向かって頭を下げて来た。


「え? 何ですか?」

「ワシの我が儘に付き合ってくれて、ありがとうガ」

「や、やめて下さいよ。お礼を言われる事なんて、何もありませんから」

「しかし、これは半落ちの仕来たりであって、人間であるイチローには、何の関係も無いガ」


 それを言われて、俺は先程思った事を悔やむ。

 俺は彼女を初めて見た時、人間では無いと思った。

 しかし、今の彼女は礼節を弁えていて、素直に感謝の念を示している。

 半落ちなどと、人間の格下っぽい呼び方をされている様だが、彼女の方が余程紳士的で、高尚な存在じゃないか。


(見た目で判断してはいけない。家族の事で、散々学んで来たはずだったんだけどな)


 自分の傲りを恥じ、ため息を吐く。

 とにかく、彼女は素敵な人物だ。

 そんな彼女の為に、俺は自分の持つ知識を存分に生かして、白火倶槌を助ける事にしようじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ