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2学期になってからふと、夏休み終わったんだなぁって感じるあのかんじ

「お2人さんはさ、どうしてこのバイトに応募したんだ?」


俺が質問すると2人は怪訝そうな顔でお互いに顔を見合わせる。


「えっと…俺は単純にこういう船に乗ってみたかったから…?2人も船とか好きなのかなって。」


別にこういう話は変ではないはずだ。

バイト先で話しかけるネタとして鉄板なのではないだろうか。

俺は働いたこと無いから分からないけど。

しばらく考えこんでから男の方が


「ぱっと目についたから…じゃ説明不足?」


と言った。

別に説明不足ではないし、実際にそうなら他に説明のしようもないだろうし。

もう話題尽きたーーっ…こういうのはコミュ力が高いやつがやるやつなんだ…俺は一体何を思って……、、、と早くも自分の何も考えていない軽率な行動を反省し始める。

今度は2人に変わって俺の方が口ごもってしまう。

固まってしまった俺を見て、あちら側も何か感じとったのかおずおずと女の子の方が後ろで手を組みながら口を開く。


「えっとー…。私たちも休憩がてらちょっとおしゃべりしたいな。君の故郷ってどんなところ?」

「故郷…か。」


向こうから話題をふってくれて助かった…と思ったのもつかの間、なかなか答えにくい質問をされた。

俺の生まれ育ったところはこことは違う世界だし、そもそも都会育ちの俺には‘故郷’…なんて概念があまりない。

いろんな意味でどう説明していいか分からないが折角質問をしてくれたんだ。なんとかして話をつなげたい。

俺が困っている様子を見てか、男の方はなんだか咎めるような視線で女の子の方を見ているが彼女も彼のことを負けじと視線を送っている。


「ええと、俺の生まれ育ったところは…そうだな、なんだか殺風景で緑も少ない、空気もそんなに綺麗じゃないけど…そのかわり生活は便利な所だった…かな。」


俺の生まれ育ったところ……都会な方であるあの住宅街を思い出す。

最近は「緑豊か」「空気が綺麗」「とても便利な生活」が全て揃っているということもあり、なんだか字面だけ見るとあの世界が無茶苦茶ひどいもののように思える。

実際この世界はあっちより断然‘いいもの’と言えるだろう。

ただまあ、そんなことを言えるのは俺が2つの世界を経験しているからであり、全ての面でこちらが優っている…とは思わない。

どんな面で劣っているのかと言われたら一口には述べられないがこれは一般論として、である。

元いた世界について考えることを最近してなかったので、1人感傷に浸っているとそんな俺を見てどう思ったのか、目の前の2人もなんだか神妙な顔をしていた。


「‘だった’…んだね。」

「あぁ。もう戻ることはないだろうから。」

「…そっか。」


彼女達の目が、2人ももう故郷に戻ることはないんだなってことを俺に悟らせる。

最初感じた雰囲気のように、きっと彼らもいろいろ数奇な運命を辿ってきたのだろうと勝手に思う。

ただ、2人は俺のことを寂しげな目で見てくるけれど俺は故郷に戻りたいとは特には思わない。

会いたい人ややりたいことが無いといえば嘘になるが、俺は一度死んでしまった身。死人に口なし…だ。

そこらへんのことは忙しかった新生活の中で知らず知らずのうちに整理がついていた。

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