お金持ちっていうのは使ってる文房具からして違うね…超滑らかなプリンを口にした時の感覚がそのまま手に伝わってきてるような書き心地のペンを俺は今愛用している
俺も一応何かをしようとは思ったのだがいうなれば俺はこの船のトップであり、いきなり現場に社長が来たら社員は緊張して仕事が手につかなくなってしまう…だの、そんな理由で部屋でくつろいでいてくださいと言われ、大人しく俺は部屋でいろいろ準備をすることとなった。
現在の時刻は午後1時半をまわったところだ。
船が次の港に着くまで後3時間半…まあ、いろいろあるだろうし俺が部屋で自由にできるのは後2時間といったところか。
この2時間でスピーチとマナーの最終チェックと、姉に会った時何を話すか…を決めておきたい。
そもそもこの時間は俺の予定に入っておらず、予想外に生まれた自由時間だ。
よって別に無くてもなんとかなったわけだが、いろいろ準備をする時間があるというのは悪いことじゃないだろう。
なのでこの時間にやろうと思ったことは別にmustではないのだ。
そう、姉に会った時何を話すか……俺は全くノープランだった。
別にノープランでいこう!!とか最初から思っていたわけではない。ただ、何を話していいのか全然分からないな…と考えるのを先延ばしにしていたらこうなった、というわけだ。
あくまでも身内…そして向こうも俺の事情を分かってくれてるわけで別に会話に事前準備が必要なものでもあまりないだろう、とは思うのだけど会って何も言えず気まずいのは避けたいのだ。
そして向こうが俺のことを弟と思ってくれるかも分からない。人の中身が変わったら立ち振る舞いから何から変わるわけで、今の俺を受け入れてくれた人は多いとはいえ姉として何か思うところはあるかもしれない。
そんな時、トオル・マーケタリーとして彼女をあまり不安にさせたくないのだ。
いや、不安なのは俺の方かもしれない。
なんだか自分を否定されたく無くて、会話を途切らせて変な沈黙が生まれるのを避けたい…というのが本音な気がする。
かといって俺はあまり会話が上手くないのでどうしたものかなぁ…とずっと考えていたのである…。
自分、何か考え事をするときは必ず紙に書き出しながら作業するタイプで、今紙の上には ”あたりさわりのない会話” “妹のこと” “自分の体調” “姉の仕事のことについて聞く” …なんて要素がいくつか書かれている。
「でも結局なんか全部あたりさわりのない会話じゃね…?」と自分で自分にツッコミを入れ、頭を抱え込む…。
やりきれなくなって手に持っていたペンで紙をぐちゃぐちゃに塗りつぶす。
マナーとかスピーチ内容とかもう一回確認しとくかーーとメモを広げるも、すぐ飽きて閉じてしまう。
だめだ。もう始まるなら今すぐ始まれよ…と思ってしまう。
こういう時は歩いて気分転換するのがいいという話だ。
部屋を出るな…と言われているが少しならいいだろうし、それに船の構造をよく知っておきたい!
別に怒られやしないだろうさ……と俺は机の上のぐちゃぐちゃに塗りつぶされた紙から逃げるように(ように…?いや、逃げたな)部屋を後にした。
時計をちらっと見ると1時40分であった。
長いような短いような感じだったので、‘10分’という具体的な時間が分かって少しほっとした。
200円でもボールペン高いって思っちゃう




