あ、俺、無意識に世間体気にしてる………
パタパタと去っていく彼女の後ろ姿を見ながらぼんやりと考える。
…何が正解とか分からない。
ただ、彼女に今俺が思っていることをそのまま伝えただけだ。
これがどうなるか、どう彼女に伝わったかは分からない。
何をもって良しとするかすら曖昧だが、良い方向に物事が進めばいいと思う…。
確かに俺は彼女にとってただの知り合い以上でも以下でもないだろう。
けれどせっかく出会ったのだ。何かと縁は大事にしたい。
俺に出来ることは何かないだろうか……と考える。
もちろん、リマが言っていたようにヒト国家資産制度の該当者は一定額の税金を納めていない人…サーシャさんの収入が高ければ問題無いわけで、俺が金にものを言わせてヴェネットの花をありったけ買えばそれだけサーシャさんの収入は上がるだろう。
けれどそれで全てうまくいくものだろうか?
俺の願いは彼女が笑顔で花と向き合い続けてくれること。俺が継続的にここの花を買い占めるのは1つの解決策ではあるのだろうけどあまり良い案だと思えない。
マーケタリー家の一員として、あまり家にケチつけられるようなこともしたくない。
なんかこう、もう少しいい案がないだろうか…と頭をひねる。
依然として気温が高く、考え事をしていると頭の中からゆだっていく感覚にとらわれる。
「ぐぁぁぁぁ…」と小さく呟きながら机の上に倒れこみ、店の外の方を見やる。
ここから彼女の姿は見えないが、彼女が花に話しかけている声が聞こえる。
「今日は暑いですね」「水分補給をこまめに…といっても取りすぎはよくありませんが」「夏はあなたの季節ね」…なんて。本当に花のことを大事に思っているんだなぁと感じる。
そんな彼女を感じながら俺はぼーっと頬を机にこすりつけて「ひんやりしててきもちいなぁ」なんて思っていた。
花か……。どうしたら売れるように…というかそもそもどういう人が花を買っていくのだろう?サーシャさんの長所を生かした販売方法がないものだろうか。
頭の半分はもう溶けてしまったがもう半分でぼんやりとそんなことを考える。
ふと、ここであることを思いつく。
サーシャさんの花はどこの花よりも綺麗だ。
つまり、単価が高くても花一本一本の値段なんて気にしない、セレブ階級の人たちに気に入ってもらえる可能性は十分にある。
しかし何故今彼女がこんなことになっているか。
それはきっと「いいお客さん」に出会えてないからだ。
街の人たちに綺麗なお花を配るサーシャさんもいいけれどそれだけだとやっていけない。
一本一本の花を丁寧に扱い、綺麗に咲かせることの出来る彼女ならそういった上流階級のお得意さんも作ることが可能なのではないだろうか。
ここに店を構えたまま、街にいながらして、彼女の収益を上げることができるのではないだろうか。
俺が彼女の「いいお客さん」になることは難しいだろう。…あまり花を必要とする機会がない。
だがしかし彼女が「いいお客さん」に会える機会を作ることはできる。
これは名案を思いついてしまった…!と俺は体をゆっくりと起こし、「よし!」とガッツポーズすると、まだ少し残っていた炭酸をコップに注ぐことなくそのままグイッと飲み干した。
すっかりぬるくなっていたが、口の中で弱くパチパチとはじける感じが今の俺には心地よかった。




