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第14話 学園祭の準備


「マリーローズ様! 学園祭の間だけでいいのでお力をお貸しください!」


 生徒会から助けを求める声が上がりました。


 本来なら、二年生から生徒会に入ります。一年生の私はまだ関わらないはずです。

 しかし、自宅謹慎になった三人が抜けてしまった今、現在の人数では学園祭の事務仕事が回せなくなってしまったそうです。


 そうですよね。

 本来なら生徒会長のアスター様や書記のニゲラ様が率先してやらなければならないのに、いなくなってしまったのですから。


 前期の間は大きなイベントがなかったので、何とか残った方で回していたようです。

 学園祭は一年間の中でも一大イベント。それに穴を開けるなどあってはなりません。


 二・三年生にも声をかけているそうですが、人数が足らず、私にまで声をかけざるを得ない状況だそうです。


「どこまでお力になれるかわかりませんが、お役に立てることがあれば」


 私に引き受ける以外に選択肢はありません。侯爵家の私が率先して、学園に貢献しなければ。


 生徒会役員の愚痴はお兄様から散々聞いていますから、何となくお仕事もわかりますし。

 お兄様はきちっとしていますから、適当な書類が相当気に食わなかったようです。


「――と、言うわけで生徒会へお手伝いに行くことになりまして」


 教室でクラス企画の話し合いをする際に、A組のみんなに事情を説明します。

 きっとクラス企画はほとんど手伝うことが出来なくなりますから。


「どこまでマリーローズ様に迷惑をかければ気が済むのかしら」


 ため息がそこかしこから上がりました。


「でも一年生から生徒会のお手伝いなんてしたら、マリーローズ様が学園祭を楽しめなくなるんじゃ」


 薄茶色の髪の男子生徒が心配そうにしてくれました。


 身分が高い生徒や学業の優秀な生徒は二年生から生徒会に入るのが習わしです。将来、人の上に立つことを想定してのことです。

 今回は致し方ありません。


「お気遣いありがとうございます。自分なりに楽しみますから、皆さんはクラス企画をよろしくお願いします。ちゃんと書類を作ってくださらないと、怒りますからね」


 ニコッと笑うと、何人かが顔を引きつらせました。そんなに脅したつもりはないのですが。



 それからは生徒会室で提出される書類のチェックに追われました。

 サフィニア様とイベリス様も婚約者の穴埋めとして参加しているようです。

 皆さん、私のことばかり心配してくださいますが、苦労しているのはお二方も同じなんですけどね。


 私が担当するのは、各クラスから上がってくる企画書のチェックです。


 催し物の内容。その安全対策。どこの教室を借りるか。魔道具の使用の有無。などなど。


 借りたい教室が重なることもあるので、貸し出しの微調整が必要です。

 また、魔道具の使用限度も校則の規定に違反していないか、確認が必須です。下手に使いすぎると学園の結界が魔法を使用したと判断して作動してしまいます。


 魔道具の出力を書いていないクラスもあると、計算が滞ります。

 お兄様がイラッとする気がわかりました。これが積み重なるのですね。


 ひとまず一通り書類をチェックすると、魔道具を使用するクラスで出力が記載されていないクラスが三クラスありました。

 規則以上の出力を使用するクラスも一クラスあります。これは見直してもらわないといけません。


 私は「生徒会」の腕章をつけ、書類を持って各クラスを回ります。


 まずは一番近い三年生の教室から。このクラスが魔道具の出力をオーバーしてしまっているクラスです。


「失礼致します。生徒会からのお知らせです」


 近くにいた金髪の女子生徒が私に気付いて来てくれました。


「どうしました?」

「はい。学園祭の企画書の件なのですが、魔道具の合計出力が校則の規定を越えてしまっているのです」


 私は彼女に企画書を差し出しました。受け取った女子生徒の表情が曇ります。


 私の声が聞こえたようで、何人かの生徒が集まってきました。生徒会の先輩から聞いた情報を交え、状況を伝えます。


「規則では合計1500までとなっています。ただ、出力の微妙な差が発生すると悪いので、通例では1300までに抑えているそうです」

「うわ、マジか。超えてたのか」

「使う魔道具を変えたほうが良さそうね」


 さすが三年生。文句も言わず、すぐに代替案を話し合っています。


「お話がまとまりましたら、企画書を訂正して再度ご提出ください」


 私はペコリと頭を下げました。


「ありがとうございます。ですが、どうして一年生のマリーローズ様が生徒会に?」

「ただの学園祭限定の臨時要員です。おバカ様のせいで穴が開いてしまいましたから」


 不思議そうな金髪の女子生徒の問いに、私はニッコリと笑顔で答えました。

 先輩方はそれで色々察してくださったようです。


 さて、次のクラスへ向かわなければ。私は先輩方に会釈をして早歩きで二年生の教室へ急ぎます。


「あれは完全にアスター様を見限っているわね」

「サフィニア嬢たちだって見限ってもいいんじゃないか?」

「私だったら夏休みの内に婚約解消を訴えてたと思う」


 そんな会話が後ろでされていたことには、さっぱり気付いていませんでした。


 次は記入漏れのクラスです。これは簡単です。


「記入して再提出をお願いします」


 張り付けた、有無を言わさぬ、侯爵令嬢の笑顔。

 自分の武器は最大限に使わなければなりません。アスター様がいない今、この学園で一番身分が上なのは私です。


 身分を振りかざすことは好きではありません。

 しかし、そんなこと言っている事態ではないのです。使えるものは全部使うべきです。

 学園祭の開催がかかっているのですから。


「はい……」


 皆さん、しっかりと返事をして受け取ってくださいました。

 文句は言わせません。書いていないほうが悪いんです。


 それからも校舎の中を行ったり来たり、生徒会の先輩方について回ったり、大忙しでした。


 事前準備の段階では、何もトラブルはないはずです。みんなでそれだけのことはしました。



 ――学園祭の開幕となります。


お読みいただきありがとうございます。

催し物の陰には、必ず奔走する人たちがいるのです。

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