5.La vida breve
「私達、異世界から来たのかもしれない。」
◇
「は?」
「ごめんいきなり結論から言っちゃったけど、私が言いたいのは、村の起源のこと。」
「私達有翼人がどこから来たか、ってことね。」
「私達、大きな翼を持ってるけど、それを背中にしまえるでしょ?」
「しまえるわね。」
「それ、物理的にありえないでしょ、あんな大きなものを背中にしまえるなんて。」
「改めてそう言われると、そうね。変だわ。」
「だから、私達は、それが変じゃない別の世界から、この世界へ転移してきたんじゃないかと思うの。」
「…………。」
◇
「理由まではわからないけど、翼を持った私達の祖先が、何らかの方法であのクロアチアの山中に転移してきた。」
「ふんふん。」
「その場所が、あの井戸小屋だったんじゃない?」
「転移してきた人達は、何か理由があってもとの世界に帰れずに、そこに村を作って定住することにした。で、転移してきた井戸は、大事なものだから、周りに小屋を作って、屋根をかけて保護したのよ。」
「なるほど。」
村の井戸と転移について、カイラの推理が始まった。
◇
カイラが、村のはずれの井戸小屋について、彼女の仮説を語り始めた。
「最初に会った時、姫様が『どこから来たの?』って聞いたでしょう?あの時のアンテ様の答えが……」
「村はずれの井戸小屋。」
「変だと思わない?」
「何が?」
「私はそこへ水汲みに行って、たまたま何かの偶然で転移しちゃったけど、アンテ様は、あそこへ何しに行ったの?」
「あ。」
「アンテ様は、村の井戸に水汲みに行く理由なんかないわ。でもあの小屋には井戸しかない。では、アンテ様は、あの小屋に何をしに行ったの?」
「……そうか!」
「私は、アンテ様が、あそこから転移出来ることを知っていたとしか思えない。」
カイラの推理が続く。
◇
「アンテ様は多分、村長から転移の方法を教わったんだと思う。それで一度試してみた。」
「私も聞いてなかったのに?」
「それだけ信頼されてたのね。多分、そのあとすぐにあなたにも教える筈だった。でも、教える間も無く悪魔討伐が始まったんじゃないかしら。」
「そうか。」
カイラが、草餅に齧り付いてお茶を飲む。
「推理ってお腹空くわね。」
「金鍔もあるわよ。」
◇
「で、アンテ様は転移先の『アコーリス』で偶然あなたに会って話をして、自分の運命を知ったの。」
「ふんふん。」
「でも、自分は兵士に殺されるけど、魂はあなたに救われることを知った。多分だけど、アンテ様はそれで良いと思ったんじゃないかしら。」
「ええー?死ぬのに?」
「自分は魂の欠片になるけど、その代わり不老不死の姫様にずっと寄り添っていられるじゃない。」
「アンテ……そんなこと考えるなんて。私は短い命でも、生きてるあの人の方がよかったわ!」
◇
「あとね。」
「あと?」
「このお話で、まだ一人だけ救われない人がいるの。」
「あ!」
「迷子になった男の子よ。」
「そうか。」
「アンテ様は、あの男の子の運命を変える為に、悪魔討伐前のクロアチアにまた戻るつもりよ。」
◇
この先の筋書きは、もう私にもわかる。
アンテは、峠の手前で、男の子だけを谷へ降りる遠回りの細い道に行かせる。そして、あの兵士が待ち受けている峠まで、私と二人で行く。
兵士に槍で突かれて、私に魂を吸い取らせるために。
アンテ。
駄目、峠へ行かないで。男の子と一緒に、谷へ降りる狭い道へ行って。
そして、何も知らない900年前の私と、そこで別れて。
男の子を里の手前まで送ったら、貴方は村外れの井戸まで戻って、900年後の私の所へ帰ってくればいい。
人生は、短くてもいいの。




