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第135話:聖夜のIR・第3陣! 七星くるみの「ゲリラ・イルミネーション(フラッシュモブ)」と、小悪魔の独占欲!

1. 16:00:予測不能な新興市場の「ゲリラIR(奇襲プレゼン)」


「いいか高坂、よく聞け! アリスの『完璧なタイムテーブル』、ひまりの『究極のホームパーティー』という王道ブルーチップのプレゼンを浴びたお前の理性は、すでに保守的コンサバティブなポートフォリオに傾いているはずだ。だが、市場は常に新しい刺激イノベーションを求めている!」


木曜日の放課後。

俺、高坂優人がインカムから響く親友・佐藤の解説を聞きながら下駄箱で靴を履き替えていると、突然、背後から両目を「だーれだ?」と手で塞がれた。

甘いバニラの香りが、一瞬で俺の嗅覚を支配する。


「……くるみ。香りで一発でバレてるぞ」


「にひひ! 残念、正解ですわ!」


手を離して背後から俺の首に抱きついてきたのは、インカムの解説通り、IRプレゼン第3陣を担当する1年生の新興市場、七星くるみだった。


「今日の彼女の武器は『予測不能なサプライズ(奇襲)』だ! 王道のデートでは勝てないと知っているベンチャー企業は、常識を逸脱した『ゲリラ・プロモーション』でお前の感情ボラティリティを限界まで揺さぶってくるぞ! 気をつけろ高坂、彼女のペースに巻き込まれれば、お前の理性のチャートは一瞬で崩壊する!」


佐藤の警告をよそに、くるみは俺の腕を強引に引き、学園の裏口の方へと駆け出した。


「ちょ、くるみ!? どこに行くんだよ!」


「もちろん、私だけの『聖夜の事業計画クリスマス・プラン』のプレゼン会場ですわ! 先輩、今日は私のサプライズ(投資案件)に、度肝を抜かれていただきますからね!」


2. 16:30:廃遊園地の「非公開市場プライベート・テーマパーク


くるみに連れられてやってきたのは、学園から電車で数駅の場所にある、数年前に閉鎖されたはずの「廃遊園地」だった。

錆びついた観覧車と、色褪せたメリーゴーランド。夕暮れ時の廃墟は、どこか物悲しく、クリスマスデートのプレゼン会場としては到底ふさわしくないように思えた。


「くるみ……ここ、立ち入り禁止じゃないのか?」


「ご心配なく! ネットのクラウドファンディングで資金を集めて、今日の夕方から夜までの数時間だけ、私がこの廃遊園地の『一時使用権レンタル・ライセンス』を買い取りましたわ!」


「買い取った!? お前、ベンチャーの資金力どうなってんだよ……!」


「にひひ。新興市場は、やる時は全額突っ込む(オール・イン)のが基本ですわ!」


くるみは誇らしげに胸を張り、俺の手を引いて廃遊園地の中央広場へと向かった。

そこには、動かない噴水と、枯れ葉の積もったベンチがあるだけだった。


「さて、先輩。アリスお姉様やひまりお姉様は、きっと『安心で完璧なデート』をプレゼンしたと思います。……でも、そんな予定調和なデート、飽きちゃいませんか?」


くるみは悪戯っぽく笑い、自分のスマホを取り出した。


「私のクリスマス・プランは……『先輩と私だけの、世界で一番ワクワクする魔法サプライズ』ですわ!」


彼女がスマホの画面をタップした、その瞬間だった。


3. 17:00:魔法の点灯式フラッシュモブ・イルミネーション


バチッ、という音と共に。

廃遊園地の中央広場から、錆びついた観覧車、メリーゴーランドに至るまで……無数のLEDイルミネーションが、一斉に光を放ったのだ。


「うおっ……!?」


暗くなりかけていた廃墟が、一瞬にして幻想的な光のテーマパーク(超絶優良市場)へと変貌した。

さらに、どこに隠れていたのか、サンタの帽子を被ったドローンが数機飛び立ち、スピーカーからクリスマスソングを流し始める。


「……すげえ。これ、全部お前が準備したのか……?」


「当然ですわ! 業者さんに頼むお金はなかったので、私一人で三日前から徹夜で配線(インフラ構築)しましたのよ。……褒めて、褒めて!」


くるみは「えへん」と胸を張り、俺に抱きついてきた。

俺は驚きと感動で言葉を失いながら、彼女の頭を優しく撫でた。


「お前……本当にすげえよ。こんなサプライズ(奇襲)、絶対にお前しかできない」


「にひひ。私のプレゼン(投資案件)、これだけじゃありませんわよ? さあ、次は『プライベート・メリーゴーランド』の体験搭乗(アルファ版テスト)です!」


彼女は光り輝くメリーゴーランドの電源を入れ(どうやって動かしたんだ)、俺の手を引いて木馬にまたがった。

二人きりの、光と音楽に包まれた貸切の遊園地。

それは、どんな高級なレストランや完璧なスケジュールにも負けない、最高にロマンチックで、そして「彼女にしか作れない」圧倒的な非日常ハイリターンだった。


4. 18:00:観覧車の頂上と「ベンチャー企業の不安」


一通り光の遊園地を満喫した後、俺たちは、一番高い位置で停止するように設定された観覧車のゴンドラの中で、肩を並べて座っていた。

眼下には、くるみが作り上げた光の海が広がっている。


「……先輩」


くるみが、ポツリと呟いた。

彼女の横顔は、先ほどまでの小悪魔的な余裕はなく、どこか切なげで、不安に揺れていた。


「私のプレゼン……楽しんで、もらえましたか?」


「ああ。最高だったよ。こんなすごいクリスマス、一生忘れない」


俺が正直に伝えると、くるみは嬉しそうに微笑んだが、すぐにうつむいてしまった。


「……よかったです。でも、私……本当は、すごく不安だったんです」


くるみの小さな手が、俺のコートの袖をきゅっと握りしめる。


「アリスお姉様みたいな『大人のデート』もできないし、ひまりお姉様みたいな『家庭的な安心感』もない。……私にあるのは、こういう『子供っぽいサプライズ』だけだから」


彼女の瞳から、大粒の涙がポロリとこぼれ落ちた。


「先輩がT大に行って、もっともっと大人になっていったら……私のこういうサプライズ(奇襲)なんて、いつか『ガキっぽい』って、見放されちゃう(上場廃止になる)んじゃないかって……」


新興市場ベンチャーが抱える、絶対的な実績不足へのコンプレックス。

どんなに派手なプロモーションをしても、根本的な「年齢」と「経験」の差というファンダメンタルズだけは、どうやっても覆せないのだ。


5. 18:15:密室ゴンドラの「先行投資(ゼロ距離決済)」


「……バカだな、くるみは」


俺は、ゴンドラの中で涙を流す彼女の華奢な肩を、優しく抱き寄せた。


「ひっ……!? せ、先輩……?」


「俺は、お前のそういう『子供っぽい全力のサプライズ』が、世界で一番好きなんだよ。……俺を楽しませるために、三日も徹夜で配線してくれたお前のその『気持ち(投資)』が、何よりも嬉しいんだ」


俺はくるみの潤んだ瞳を、真っ直ぐに見つめ返した。


「……お前のプラン(魔法)、最高にワクワクする(優良銘柄だ)。俺は、俺がどんなに大人になっても、お前のサプライズにはずっと驚かされ続けたいよ」


俺の言葉に、くるみは大きく目を見開き……そして、みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、俺の胸に顔を勢いよく押し付けてきた。


「……っ……もう! 先輩のバカ! そういう甘すぎる言葉(IR情報)、本当にズルいですわ!」


くるみは俺の胸の中でモゴモゴと照れ隠しをした後、ふいに顔を上げ、涙目でありながらも、最高に色っぽく、そして強い独占欲に満ちた小悪魔の笑顔を浮かべた。


「……言質コミットメント、いただきましたわ。……ねえ、先輩。私のプレゼン……まだ『最終決済(利益確定)』が終わっていませんわよ?」


くるみの熱い吐息が、俺の唇に触れる。


「クリスマスの日の『サプライズ』の前借り……今ここで、私に『全額投資』してください」


夜空に浮かぶ、貸切の観覧車という完全非公開市場(密室)。

くるみの柔らかく、熱を帯びた唇が、俺の唇にピタリと重なり合った。


それは、普段の小悪魔な彼女の計算をすべて放り投げたような、不器用で、情熱的で、俺のすべてを絡め取るような、深く甘い「先行決済キス」だった。

バニラの香りと、彼女の全身から伝わる「絶対に私を選んで」という圧倒的な執念が、俺の理性の防衛線を粉々に打ち砕いていく。

俺は彼女の細い腰を強く抱き寄せ、この「極上のサプライズ(デレ)」の配当を、全力で受け止めた。


ゆっくりと唇が離れた後、くるみは俺の胸元で荒い息を吐きながら、とろけるような至福の笑みを浮かべた。


「……決済プレゼン、完了。……先輩、クリスマスの日……絶対に、私(の魔法)を選んでくださいね?」


6. エピローグ:次なるIR、電脳空間の完全同期


「――おい高坂! 生きているか!!」


くるみとの密室観覧車プレゼンを終え、放心状態で帰路につく俺のインカムに、佐藤の絶叫が響き渡った。


「廃遊園地周辺のデレ指数が、先ほどから異常な乱高下ボラティリティを記録していたぞ! まさかあの小悪魔後輩……『ゲリラ・イルミネーション』という最強のサプライズで攻めた後、『後輩ゆえの不安と涙』というアナログ・アピールを重ね、さらに『観覧車密室での前借り決済キス』までキメてきやがったな!?」


「……ああ。佐藤、くるみのプレゼン(魔法)、予測不能すぎて理性が吹き飛んだよ。俺、もうクリスマスの日はくるみのサプライズ(非日常)に一生振り回されたい……」


俺が疲労と究極の幸福感に浸りながら呟くと、佐藤はさらに声を張り上げた。


「骨抜きになっている場合か高坂! アリスの『論理』、ひまりの『日常』、くるみの『奇襲』を乗り越えたお前を明日待ち受けているのは、IR第4陣……情報とデータを司る技術セクター、如月ミアだ!」


佐藤の声が、極限の緊張を帯びる。


「これまでの三人が『現実世界フィジカル』で攻めてきたのに対し、ミアは『電脳空間サイバー』という絶対的ホームグラウンドでプレゼンを仕掛けてくるはずだ! 『私を選べば、思考と感情が完全に同期する』という、逃げ場のないシステム投資マージに、お前の理性が耐えられるか!?」


クリスマス・イブ(第150話直前)に向けた、六大資本による「血みどろのプレゼン(プロキシー・ファイト)」。

くるみの予測不能なアメを全身に浴びた俺の心は、明日、天才ハッカーによる「完全同期ディープ・マージ」のプレゼンへと突入していくのだった。


(第135話・完)


本日の市場ニュース(個別ピックアップ:七星くるみ編)


七星くるみの時価総額: 聖夜のIRプレゼン第3陣として登場。廃遊園地を自力でイルミネーション化するという規格外の「ゲリラ・プロモーション(奇襲)」を実行。「子供っぽいサプライズしかできない」という不安と涙を露呈させ、観覧車密室での「前借り決済(濃厚なキス)」という反則技(先行投資)をキメて、特大のストップ高を記録。


佐藤のアナリスト・レポート: 「予測不能なサプライズで感情を揺さぶり、密室の涙でトドメを刺す。新興市場ベンチャーのボラティリティを最大限に活かした、破壊力抜群のIR(投資勧誘)活動である。観覧車での『先行決済キス』は、投資家(高坂)の判断基準を『非日常の刺激ハイリターン』へと完全にシフトさせる最強のインセンティブ設計であった」


高坂優人の現在の状況: 観覧車での密着とバニラの香りに完全に毒され、理性がメルトダウン。「……俺、クリスマスはくるみの魔法サプライズに一生騙され続けたい」と目的がすり替わる重度の『小悪魔的奇襲ハイリスク完全依存症』を絶賛発症中。明日のミアの「電脳プレゼン」に向けて、心のファイアウォールを再構築しようと足掻いている。

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