第3章 その5
よろしくお願いします。。。
「はい。ワーテル様でしたら可能です。
呪文を唱えながら手を伸ばすと、手の周辺だけ氷が溶けるはずです。
恐れずにお試しになってください。
ただ、他の方は駄目です。凍傷になりますよ。
──そうそう。その間、ゴルド様のフォローは役に立つはずです。
強化して差し上げてください」
「分かった。がんばるよ」
「──」
これまでになく守護者としての役目にやる気を見せているゴルドを見て、兄のウードは思うところがあるようで、その場では何も言わなかったが、目だけは心配そうにかげっていた。
「では皆、いいな?
──出陣だ」
守護者の中でリーダー格に当たるのは年齢はかかわりなく日光の守護者だ。現在はリヒトが該当する。
彼は守護者ひとりずつと順に目を見交わした後、真っ直ぐな眼差しで告げた。
* * *
守護者たちが出発していった後、しばらくの間は神殿の一室で休んでいたエティ。
キーペが持ってきた、どんなに使っても温くならないおしぼりを額から外して、少し熱がマシになったことをキーペに告げると、エティはふらりと寝台から立ち上がった。
「まだ回復と呼ぶには早いですよ。それとも家でもっとゆっくり静養なさりたいですか?」
「あたし今、衛士が寝る部屋を一部屋取ってしまってるわけでしょ? それなら戻りたいわ」
「そうですね。そういう意味では。家にあるエティ様の部屋を代わりに衛士様にご利用いただくわけにもいきませんし。戻りましょうか。大丈夫ですか?」
「大丈夫。ごめんなさいねキーペ。あんたもしかして、あたしを家に届けた後でまた神殿に戻ったりするの? 手間になってしまうわ」
「いいえ。ぼくはエティ様のいるところにいます。エティ様が家にお戻りなら、ぼくも離れにいますよ」
「あん……こんっ。あんた、あたしのこと、甘やかしすぎだわ」
「案内役の特権ですから」
エティは小さい笑み声に咳を混ぜて、悪びれないキーペに応えた。
一番気になっていたことに話題を変える。
「守護者のみんなはどうしてるかしら。もう出発したのでしょう?
探索行のこと、心配そうにしてた? あたしも早く回復しなくちゃ」
「皆様、慣れてらっしゃいますから。さほど心配はしてらっしゃらないご様子でしたよ。
そうですね。エティ様は焦らずじっくり休養なさってください。
それが回復への一番の近道ですよ」
「はぁい」
「──」
キーペが、物わかりのいいエティに対して、何かを言おうと口を開いた。
けれどすぐにその口を閉じて、いつもの穏やかな笑みに台詞を溶かしてしまう。
違和感に気付いたエティは、ほんのり染まる頬に手の甲を当てて冷やそうとしながら、少し熱に潤みかけている瞳を少年神官に向けた。
「良いのよ。気を遣わないで──言いたいこととか、聞きたいこととか。あるなら。言って」
キーペは、暖かい微笑みにわずかに寂しさの影を混ぜて、首を横に振った。
キーペ君のエティへの接し方は、これまでの乙女へのそれとは明らかに異なるのです。
おっと。ねたばれ?
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




