第3章 その1
よろしくお願いします。。。
キーぺが問いかけた時、エティは遠い目をしていた。
「あれからそんなに日数経ってないはずだけど。
何だかえらい昔のような気がするわね」
「はぐらかさないでください、エティ様。
すぐそばにいたぼくには分かりました。
あの時のエティ様はとても深いお考えのもとで、ひとつひとつの言葉を慎重に選び取っておいででした。
あれは、その場の勢いとか。言葉のあやとかじゃない」
「……」
つまらなさそうに吐息を漏らすエティ。
観念したのか、その顔は笑っていた。
「困った子ね。若いうちからそんなに周囲に気を配って生きていなくても良いのに」
「教えてもらえるんですね?」
「そうね。ここには衛士はいないから──でも、大した話じゃないわよ。
みんながあたら命を粗末にするのが許せなかった。それだけよ……」
「エティ様……皆さんに生きててほしいんですね?
幸せでいてほしいんだ! どうしてそれを言わないんですか!
口下手にも程がありますよ!」
「こういうのは口の上手い下手じゃないわ。
結果が全てなのよ。
それに、下手にそんなこと口走ってみなさいよ。
あいつら『なんてお優しい』とか盛り上がって、余計に命を差し出そうとしてくる輩が増えるかもしれないわ。
それじゃ意味ないのよ」
「エティ様……それではずっと皆さんに誤解させたまま進み続けるのですか?
そんなの悲しいです」
「どうせ繋ぎのお役目よ。
どうってことないわ」
そう告げる彼女の瞳はきつく吊り上がっていたが、少し潤んでもいた。
握りしめた拳が微かに震えている。
雫がこぼれてしまう前に、彼女はそっと目を閉じた。
キーペはそれを見て、少し違うことを思い出していた。
火熱の儀礼具を回収しに行った時に同行した衛士と、その家族のことだ。
(あの人たちは、気付いている。きっと。
エティ様が皆の命を守ろうとしていたことに)
キーペは、それだけでも今は十分だと、思うことにした。
そして、ん。と動きを止める。
「そういえばエティ様。もう一つお聞きしたいことがありまして」
エティが震える手をほどいて目元を押さえる。
濡れるほどではなかったが、少し湿った。
大人の意地か、子どもの前で泣きたくなくて。
潤んだ目元から水気を追いやるように強がって笑った。
「何よ。そんなにかしこまらなくてもいいのよキーぺ。
あんたは──あんただけは何があっても変わらない。
ただひとり、ずっとあたしの味方でいてくれる存在なんでしょう?」
「エティ様……!
信じていただけるんですか!?
ぼくのこと!」
「これはむしろ、あたしからお願いしないといけないことだけどね。
まわりみんな敵に回して。
せめて自称案内役くらいは、ってね。
完璧に自業自得なのに」
耐えかねたキーぺはエティに駆け寄ると、その手へ両手を伸ばした。
そっと手を重ねると、思った以上にエティの手は小さくて。キーぺは泣きそうになってしまう。
エティよりもよほど激しく目を潤ませながら、少年は聞いた。
第3章が始まりました。
今度はもう少し少ない話数でお話を進めたいなぁと思ってます。
がんばります^^
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




