第2章 その52
よろしくお願いします。。。
「エティ、儀礼具の部品の名前は『火熱の軸』だ。
俺が取り出すからワーテルと二人で保管庫のふたを開けといてくれよ」
祠の隣まで移動したフィーレがキーペの腕にある保管庫を指さす。
ワーテルがキーペから保管庫を受け取ると、足元の水と氷とが混ざっているあたりにそれを置いて、ふたを開けた。
「泉なのかと思ったけど、実際は水たまりなのね」
「水冷は土岩には滅多に干渉できないぜ。
窪地に水を張って泉を作ることはできても、地面に穴を掘って泉を作ることはできない」
エティのそばに衛士たちが進み出た。
「エティ様。この命には代えずに、貴女をお守りします。
我らが盾となることをお許し願えますか?」
「ありがとう! 心強いわ。
でも約束して。侵害者はあなたたちにとっては厄介な相手よ。
いざとなったら撤退することも視野に入れてちょうだい。
守護者のみんなも、いいわね?」
「「承知いたしました!」」
「エティ──いや、今は良いとしよう」
少し離れたところに立っていたダルクは、何かを言いかけて、しかし思いとどまった様子で首を振った。
エティはそれが気にはなったが、状況が状況だけにあえて深く追求しなかった。
ダルクが続ける。
「みなの立ち位置が決まったなら、わたしはキーペとともに侵害者への警戒に当たろう。
接近したら知らせる。夜なら誰が見ても一目瞭然なのだが──日中では日光に紛れて分かりづらかろう」
「ありがとう、ダルク。お願いね」
ダルクに言われてキーペが祠から一歩下がった。
月闇の守護者と少年神官は、無言で瞳を見かわしてわずかにうなずき合った後、使命感をにじませた面持ちで前を向いた。
キーペが声を張る。
「では始めましょう! フィーレ様、お願いします!」
フィーレは了承の意を示した後、火熱の軸を手にするための祝詞を唱え始めた。
* * *
エティには祝詞の言葉はよく分からなかった。
けれども、火熱の軸に向けて『熱くたぎりすべてを溶かし尽くせ』と追い立てている。
そんな気がした。
祠のそこここにある隙間から、ちらちらと火がはみ出して見える。
フィーレが祠の観音開きの扉を開けると、エティにとっては懐かしいような、強烈な熱波が辺りを包んだ。
「「……!!」」
キーペと守護者たちが揃って驚愕に目を見開き、それぞれに身構えた。
「なんだこれは」とか「火事かよ」とか呟く声が聞こえてくる。
──そっか、慣れてないのねあんたたち。
エティは額から汗が伝うのを手の甲で拭いながらフィーレに向かって歩み寄った。
一歩。二歩。
「……くそっ」
「無事? フィーレ」
「実はあんま大丈夫じゃねぇ。何だこれ、今までのどんな儀式よりも熱すぎる!」
祠から朱色に輝く細長い棒を取り出したフィーレは、顔を真っ赤にしながらエティへ振り向いた。
「ちょっと。あんた倒れるんじゃないの!? 無理しないでよ。水とか飲んで──フィーレ!?」
ばたん! とフィーレが凍った地面に倒れ込む。
この世界で一番熱に強い(はず)のフィーレが倒れる熱波。
でも元の世界で惑星温暖化通り越して沸騰化まで経験しているエティには、身に覚えのある感覚だったんですね。
さてこの先どうなるか!
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




