第2章 その43
よろしくお願いします。。。
「うん? おかしいな。
確かにエティ様は『コインでいるな人間に戻れ』っておっしゃっていましたが──衛士は自分の意志でコインになれるはずですよ?」
「ぼくもおかしいとは思ったんだけどね。
神殿から帰ろうと思った時に衛士たちがチェストの前で騒いでいるのを見てさ」
「チェストって、コインを収めている、あの?」
「そう。その」
雪国で小麦色の肌をしているウードは、自分ではスキー焼けと言っているが、実は木風属性であることを示す配色を精霊神から授かっている。
彼は緑色の長髪を揺らしながらうなずくと、眉尻を下げて続けた。
「精霊神様がいない今、救世の乙女が衛士たちに何かの術をかけたんじゃないかと噂になりかけてる。
ともあれ本人がいたほうが良いと思って呼びに来たんだ」
「本人がいたほうが……」
キーペは気がかりがありそうな面持ちでウードに言った。
「衛士様たちのご様子はいかがでした?
お怒りではなかったですか。
コインに戻りたがっていたということは、おそらく帰る場所がない方々でしょう。
エティ様にその怒りをぶつけたりされては困ります」
「ぼくらが守るよ。
他に、ゴルドとリヒト様、ソイル様もいてくださる。
エティ、心配しないで」
「してないわ。行きましょ。
帰る場所がないっていうのも気になるし」
「エティ様……分かりました。行きましょう!」
* * *
神殿に近付くにつれて大きくなっていく喧噪。
どこから始まったものか分からない乱闘が、枯草の野に火を放ったように瞬く間に広がっていく。
エティが神殿に着いたころには、既に衛士たちはその半数ほどがケンカ相手にのされて雪面に寝転がっていた。
「そんなところで倒れてたら体が冷えるわよ。
もう日も暮れたし──家へ帰りなさいな。
帰る場所がないって聞いてるけど、そんなわけないでしょ。
どういうことなの?」
「は、エティ様よ。
あんたホントに何も知らねぇんだな。
──いや、それはもしかしたら、これまでの乙女も同じだったのかもしれねぇな」
『何も知らない』ってのは。
どかりと雪面にあぐらをかいて座り込んだのは厚みのある体をくすみのない銀色の金属鎧に包んだ中年の男性だった。
肩のところに紺色の線が二本引いてある。
衛士長の肩にあった線は一本だったので、彼は副士長かもしれない。
エティは素直にうなずいてその場に屈むと、そろえた膝の上に自分の手を重ねた。
「そうね。無知とは罪だわ。
──だから教えてくれないかしら。
あんたたちに何が起こっているのかを」
帰る家がない。
理由は「人それぞれ」にしました。
なかなかすっきり終わりませんね〜;
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




