第2章 その41
よろしくお願いします。。。
「どういうことでしょうかエティ様!?
我々にとっては乙女の盾になることこそ自らのため!
誇りのために散っていくことこそ最大の名誉であり、そのために日々の鍛錬を欠かしません」
「身代わりになって死ぬ練習を繰り返すことのどこに名誉があるのよ!
──生きて帰る。その覚悟を決めることこそが最も重要な心の鍛錬でしょう?」
エティは言いながらその場にしゃがみ込んで衛士長と目線の高さを合わせた。
その真っ直ぐな眼差しを至近距離から受けた衛士長は短く鋭く息を吸い込む。
彼が何か言う前にエティが口を開いた。
「死なない覚悟を決めた者しか探索には連れて行かないわ。
──あんたたちも覚えておいて!」
エティは遠くまで見えるように立ち上がって衛士たちに告げた。
「命を捧げるなんて馬鹿な考えは捨てることよ。
侵害者相手に危ないと思ったら真っ先に逃げなさい!
鍛錬は獣や人間相手を想定して行えばいいんだから」
その言葉に反論してきたのは衛士長ではなく、聴衆の中に混ざっていた、役職も何もない一般の衛士だった。
「しかし乙女。もしお言葉通りに僕らの剣の向く先を獣や人間相手に限定するにしても、命をかけるつもりで臨まなければ勝てる戦も勝てません。
僕ら衛士にとっては勝つことがすべてなんです。
そこまで否定なさらないでください」
「そうよ……勝つために自分が犠牲になっても構わないと思ってるんでしょ。
生き甲斐が必要なんだわ。あんたたちみんな」
極寒の世界に閉じ込められて、ただ生きているだけの衛士。
どういう理由か知らないが、コインに変化させられて貯蔵庫の中で眠っている。
「──生きてこそ得られる幸せってあるでしょ?
お願いだから自分の可能性を自分で殺さないでよ」
守護者たちはそれぞれ思うところがあるのか、すぐにはイエスともノーとも言わずに沈思黙考していた。
「乙女……口調は厳しいけれど、あなたの言葉はすべて僕らのためを思ってのことだ。
そうでしょう?
僕らにあなたを守らせてください。
普段はコインで良いんです。
長いこと一緒にいたら乙女もきっと僕らの考えが分かる日が来ますよ」
エティは、これではまずいと思った。
方向性を間違えたら目的を果たせない。
脳内で考えを高速回転させて、吐き出す言葉を、その内容を調整した。
「冗談じゃないわよ。
あんたたちは戦場で華々しく散れればそれで満足なのかもしれないけど、あたしはその後さらに結果をもって中央の神殿まで帰らないといけないのよ?
行きはよいよい帰りは恐いで、あたしに一人で帰れっての?
そんな無責任な連中に大事な役目を任せられない」
「ま、まあまあエティ様。衛士長は? 衛士長。
お約束していただけますよね。なるべく死なないように心がけると。
配下にもそれを守らせると。ね、衛士長?
ほらほらエティ様っ。
衛士長も頭を下げておられますし、この場はそのくらいで」
キーぺの采配で何とか事なきを得たが、通常の「救世の乙女のおひろめ会」であれば乙女が最も心掛けなければならないことは自分を守る立場にある者たち──守護者や衛士の人心の掌握である。
彼らの信条に真っ向から対立する宣言をぶち上げたエティの立場は、はっきり言って良くはない。むしろあからさまに悪くなった。
それをフォローしないといけないキーぺの心はすこぶる重かった。
第2章でエティが一番言いたかったことまで、とうとうたどり着きました。
さてそろそろ守護者たちの反応が見たいですよね。
書けたらいいなとは思うんですが、七人全員書くと間伸びしそうなので何人かにしぼるつもりです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます!




