第2章 その17
よろしくお願いします。。。
「は、はい?」
目の前の女性はエティに、何か言いたいことがあるのだろう。
けれど、それを許されない何かの事情があるのだろう。
エティはそれを慮るにはまだ知らないことが多すぎて、ろくに言葉を返せなかった。
そうして困っていると、今度はその横にいる男性が苦み走った口調で告げた。
「エティ様。うちの穀潰しをよろしく頼んます。立派に役目を果たせますように」
男性は衛士三名の中でも一番年若い──さすがにキーぺほどではないが、おそらくゴルドと同学年だろう年齢の──少年兵の頭をつかんで下げさせながら、自分も頭を下げた。
「まだ子どもじゃないですか? 穀潰しなんて」
「良いんですよ! 五人目ともなれば子どもでもムダ飯食らいだ!
乙女の盾なんてお役目、もったいなくて泣けてくらぁ」
最後は吐き捨てるように言うのだ。
これはさすがにエティでも分かった。
この男性の本心は、言葉そのままじゃない。
エティは自分なりに気を遣って男性に頭を下げ返した。
「安心なさってください。
無事に連れて帰ります」
「エティ様!」
「おいエティ!」
「ヘタなこと言うな!」
キーぺだけでなく、フィーレとワーテルもエティを咎め立てる面持ちで口を挟んだ。
ゴルドとウードは、信じられないものを見る目で息を呑んでいる。
エティはその扱いの意味が分からず、怪訝そうに守護者たちを見回した。
「な──何よあんたたち。
よそさまのお子さんを預かったら無事に連れて帰るって言うのは当たり前でしょ?」
痛みを堪えるように顔をしかめて、キーぺが首を横に振る。
「子どもである前に一個の人間です。
彼らは命がけで事に当たると自分で決めてここにいます。
たとえ帰れなかったとしても、覚悟はできているんです」
「何言ってんのよ! そんな」
「行きますよ! もう乗ってください皆様!」
エティはまだまだ言い足りなかったが、ゴルドとウードが衛士をひとり連れて、エティの後ろから一台目のソリに乗り込もうとするので、渋々流れに従った。
* * *
ソリの中で、エティは背もたれから身を乗り出して、まったく納得のいっていない表情で、後部座席に乗っている同乗者たちを見つめていた。
「ねえ。あんたたち全員、ほんとに──死ぬ覚悟なんか。できてて、今ここにいるの?」
エティの目には、皆、まだ遊びたい盛りの少年たちばかりに見えた。
この車内でエティを除いた最年長はウードのはずだが、彼にしてもまだようやく成人した程度の年齢に見える。
──捨てるには、早すぎる。その命を。
冒険者の街で暮らしていたエティには、
命あっての物種、という精神が染み付いているのです。
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