第1章 その15
よろしくお願いします。。。
エティはそれを聞いて安心のため息をひとつ。
彼女も否定はしたものの、全面的に禁止とは言い難く。
一部、同意もしておく。
「まあねえ。この寒い土地で体を温めるために飲むんだって言われたら、何がなんでも禁止とは言えないわよね。気を付けてね?」
「はい。エティ様は……」
最後まで言わずに、くすくす笑うキーペ。
エティは、んー? と不思議そうに首を傾げた。
そうこうするうちにソリは精霊神殿へと到着し、ふたりは雪のように白い建物の中へと入っていった。
* * *
本当に墓地にでもいるかのような静寂の中。
エティとキーペは小瓶が十本載ったテーブルのそばに立って、薬酒の瓶のコルク栓を抜いていた。
眼醒めの薬酒の入れ物はワインのボトルによく似ていて、ボトル部分をキーペが押さえて、コルク栓をエティが引っ張っている。
「よ、い……しょっ」
ぽんっ。
コルク栓が抜けるようなささいな音も、無音の中ではよく響く。
ふたりは笑んだ目を見かわして次の工程へと進んだ。
いよいよ守護者たちの口に薬酒を含ませるのだ。
「では、ぼくは部屋を出ておりますので。
覚醒は誰からでも、どんな方法でも構いません。
エティ様のお好きなようになさってください」
「スプーンとかないの?」
「申し訳ないですが、家から持ってこさせるしかありません。
これまでに使われたことはないのです。
瓶を直接口元に近づけて傾けたりするのが一般的でしょうか。
ボトルが大き目だからあまりお勧めしませんが。
後はガーゼに含ませたり、そう──ひとりずつ全員に口移しで飲ませたり」
「口移し? 全員に?」
聞かれたキーペは両のまぶたを伏せてそっとうなずいた。
まるで感情をエティから隠そうとしているかのようだ。
少年は自分が見届けてきた過去を淡々と告げる。
「そうです。ただ目が覚めると守護者様は乙女がどうやって自分に薬酒を飲ませたか覚えているらしくて。
恥ずかしがっておいでの乙女もいらっしゃいましたね。
もちろん、堂々となさっていて、むしろ守護者様方のほうがペースを乱していたような方もおいででした」
「ぜ、全員ガーゼで良いわ……悪いけど、部屋を出る前に準備してくれる?
どこにしまってあるのか教えてくれるならそれでもいいけど」
うつむきがちだったキーペが顔を上げた。
その顔から、ほんのりと乗っていたかげりが消えて、普段通りの屈託ない笑顔が戻ってくる。
「気兼ねなくお申し付けください。七名分のガーゼをすぐにご用意いたしますね」
そうして持ってこられたガーゼは、よく歯医者で扱われる小さい円柱状のものだった。
実はそれはコルク栓と同じ大きさだったのだが、残念ながらエティはそれに気付かなかった。
スプーンを持ってきてもらったほうが良かったんじゃないかなと思いますが、エティは人を使うの苦手だし、代わりになるものがあれば使いますよね。と言い訳。




