43.容赦しない?
「そ、そんなことは………! マリナだって、俺といるときは笑っていてくれていて………きっと、俺のことを………」
カーズは否定する言葉を口にしようとするが、同様のあまりはっきりできない。それに対してレフトンははっきり口にする。
「マリナ嬢は兄貴の話に合わせただけだ、とまでは言わねえよ。だけど好きかどうかは別じゃねえか? サエナリア嬢みたいによお」
「さ、サエナリアは………」
カーズは、サエナリアの気持ちに関してだけ、マリナからすでに確認している。だからこそ、その先を聞きたくなかった。だが、二人の弟は容赦しない。
「そもそもサエナリア嬢も兄貴のことを好きだったと思うか?」
「………っ」
カーズにとって痛い言葉をレフトンが口にした。更にナシュカが後に続く。
「ないでしょ。サエナリア様はカーズ兄さんのことも好きそうに見えなかったしね。それでも婚約者として務めてこようとしてきたんだ。それは周りのことを考えてのことだろうね」
「周り?」
目が虚ろになり始めたカーズだが、弟達の話をしっかり聞こうとする。そんなカーズでも二人の弟は容赦しない。
「場所は学園、周りは貴族の子供達ばかり。サエナリア嬢の立場を考えると敵が多くて味方は少ないもんさ。なんたってあのソノーザ公爵の御令嬢だからな。そんな場所で婚約者の不貞の噂が広まればどうなる?」
ソノーザ公爵と聞いただけで、レフトンの言うことがカーズでも理解できた。落ち目から成りあがって公爵に上り詰めたと言われるベーリュ・ヴァン・ソノーザの顔が頭に浮かぶ気持ちになる。そんな経歴があるために敵が多いことでも有名だった男。サエナリアはそんな男の長女なのだ。
「多くの生徒がサエナリア様に敵対姿勢を示し、勝手な噂を広める。噂を聞いて信じてすぐに行動したカーズ兄さんなら分かるよね?」
ナシュカの言うとこも確かなことだった。先ほど両親に言われたことであり、実際に学園で起こったことでもあるからだ。
「(……俺はなんて馬鹿だ)」
もはや嫌味にも聞こえる弟たちの容赦ない言葉。それは遂にカーズの心をへし折った。カーズは手で顔を覆って過去の自分を悔やむがもう遅い、遅すぎた。
「(俺は……なんて考え無しの大馬鹿者だったんだ……どうして、もっと周りのことを……二人のことを、考えず……)」
「「(…………これが実の兄とは情けないにもほどがある)」」
長男であるカーズの惨めな姿を見ても、レフトンとナシュカは全く同情できなかった。心の中では侮蔑すらしている。口に出さないのは兄弟の情だった。
「兄貴、今は休んでな。サエナリア嬢のことは気になっても捜索は任せるしかない。これに懲りたら考え無しに動かないでくれよ」
「後のことはカーズ兄さんの出る幕はないよ。そんな資格もないしね。今度からは自分の起こした行動に責任持てるようになってね」
「…………(俺は……俺は……マリナ……サエナリア……)」
二人はそう言って兄の部屋から出て行くが、カーズにはもう誰も声が届きそうになかった。




