第十八章 高木記者の妹、刺される二
翌日勤務中に初美から、堀田総一郎から鶴千代指名で今晩お座敷の声が掛ったと連絡があった。
広美は緒方係長に伝えて、芸者の準備の為に帰宅した。
母に、堀田総一郎が予約した料亭と部屋を確認して、隣の部屋を予約して緒方係長に伝えた。
緒方係長は、須藤刑事と前田刑事に料亭で待機するように指示した。
堀田総一郎が料亭に到着して仲居に、「鶴千代が来たら通してくれ。」と告げて部屋へ入った。
広美が料亭に到着すると仲居に、「先ほどから堀田さんがお待ちかねですよ。」と堀田の待っている部屋に案内された。
堀田総一郎が部屋で寛いでいると仲居が、「鶴千代さんが到着しました。」と広美を案内した。
堀田総一郎は、「こっちに来ておしゃくしろ。」と手招きして喜んでいた。
広美はいつものように、堀田総一郎の横で、体を密着させておしゃくしながら、「お久しぶりですね。最近声を掛けてくれないので、もう私の事は忘れて、他の芸者に乗り換えたのかと思っていたわ。」と堀田総一郎のお尻をつねった。
堀田総一郎は、「これは手厳しいな。鶴千代さんの事は忘れないよ。最近忙しかったんだ。」と苦笑いした。
広美は、「仕事と私とどちらが大切なの?」と堀田総一郎と雑談していると、堀田総一郎の携帯に着信があった。
堀田総一郎は戦車やお金の単語を出さずに例の物と表現して、受け渡しの場所や方法、時間について話をした為に、芸者には解らないだろうと油断していた。
広美は、「こんな時まで私達国民の為にお仕事されているのですね。例の物って何ですか?」と知らないふりをしていた。
堀田は、「極秘事項なので、いくら鶴千代さんでも教えられない。」などと雑談して、その日は別れた。
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広美は捜査会議で、「堀田総一郎は例の物と表現していましたが、恐らく戦車の事だと思います。」と告げて電話で聞いた取引の場所と時間を伝えた。
その後堀田総一郎から置屋に鶴千代名指しで呼び出しがあった。
広美は翌日緒方係長に、「取引直後に、堀田総一郎から呼び出しがありました。取引後、ほとぼりが冷めるまで私とどこかに雲隠れしようとしているようね。このような事になる可能性があったので、今回、現場の指揮は、西田副主任に任せたのよ。最悪、堀田総一郎を取り逃がしたら、私の携帯をGPS機能で検索すれば堀田の居場所が確認可能よ。」と伝えた。
当日捜査一課と捜査二課で貼り込みをしていた。
取引の確証を得た刑事達は、「警察だ!」と警官隊と踏み込んだ。
銀龍会と銃撃戦になり、その間に堀田総一郎は取引を諦めて、広美との待ち合わせ場所に急いだ。
西田副主任は、堀田総一郎が逃亡するのを確認したが、銀龍会との銃撃戦で動けなかった為に広美に、「堀田総一郎が逃亡しました。追跡不可能です。お願いします。」とメールして任せる事にした。
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堀田総一郎は取引場所のすぐ横で待たせていた広美に、「鶴千代さん、この車に乗って!」と慌てていた。
広美は、「どうされたのですか?そんなに慌てて。パンパンと花火のような音が聞こえますが、私をのけ者にして、花火を他の女の人と楽しんでいたの?矢張り別に女の人がいたのね。だから最近私に声を掛けて頂けなかったのですか?まだ音がしていますが、火の始末は大丈夫ですか?」と銃声の事を、どのように説明するか確認した。
堀田総一郎は広美が銃声を花火だと表現したので、「それは誤解だよ。実は新型の花火を花火会社と研究開発していて、その実験をしていたんだよ。この花火の事は極秘扱いなので、鶴千代さんを実験現場に呼ばなかっただけです。火の始末は花火会社がするから大丈夫です。行きましょうか。」と誤魔化して車を発進させた。
広美は、“花火の研究に税金を使うだなんて何を考えているのかしら。それに国家の極秘事項が花火だなんて海外のスパイが知ったらお笑いね。もっとましな説明を思いつかなかったのかしら。”とかなり慌てていると感じた。
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銀龍会の組員を逮捕後、捜査二課の刑事達は、「くそっ!堀田を取り逃がした!」と残念そうでした。
緒方係長が、「大丈夫です。林主任が近くで待機していて、堀田にぴったり付いています。」とノートパソコンで、広美の携帯をGPS機能で検索して現在位置を割り出していた。
捜査二課の刑事達は、「そうか。だから、ここに鬼軍曹がいなかったのか。」と納得して、緒方係長のノートパソコンを見ていた。
緒方係長は、「九号線を北に向かっていますね。私達もいきましょう。」とパソコンを持っている、緒方係長の車を先頭にして、捜査一課と捜査二課の刑事達が向かった。
しばらく走行していると園部付近で緒方係長が無線で、「追いついた。前のセドリックだ。前田、セドリックの前に出ろ。停車させる。」と指示した。
捜査二課の刑事達は、「鬼軍曹はどこだ?」と広美を捜していた。
前田刑事がセドリックの前にでると、緒方係長は赤色回転灯を点灯させて、「こちらは京都府警です。前の車、左に寄って停車しなさい。」とスピーカーで呼びかけた。
堀田総一郎は、「何故警察がくるのだ!」と慌てて逃げようとすると、前を走っている車も赤色回転灯を点灯させて走路妨害された。
広美が、「堀田さん、あなた一体何したの?ただの交通違反でしたら、警察車両が取り囲まないでしょう。」と堀田総一郎がどう返答するか様子を見ていた。
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堀田総一郎は逃亡不可能だと判断して車を停車させ、「これは何かの間違いだ。ここで待っていて下さい。」と広美を車に残して堀田総一郎は車から降りた。
堀田総一郎は覆面パトカーから降りてきた刑事達に、「これは何の真似だ!俺を誰だと思っているのだ!こんな事をして、ただで済むと思うな!」と鶴千代の手前、怒りをあらわにした。
緒方係長は、「先ほど取引現場でお会いしましたね。覚えていますか?説明しなくてもご理解頂けますね。署までご同行願います。」と堀田総一郎を睨んだ。
堀田総一郎は、「お前はさっきの刑事じゃないか。何故私がここにいると解ったのだ?」と不思議そうでした。
前田刑事が、「私の上司から連絡がありました。」と堀田総一郎を追求した。
堀田総一郎は、「そんな事が解るお前の上司は何者だ!」と堀田総一郎は広美の事に全く気付いていない様子でした。
前田刑事は、「私の上司は京都府警の鬼軍曹として犯罪者から恐れられています。」と手錠を出していた。
広美は堀田総一郎の目配りから、横道に逃げようとしていると判断して、車から降りて、「堀田さん、どうされたのですか?何かもめているようですね。」と堀田総一郎と横道の間に立ち、逃げられないようにした。
堀田総一郎は広美が邪魔で逃げられなかったので、広美を捕まえて、「京都府警の鬼軍曹の事は聞いた事がある。林とかいう凄腕の女刑事らしいな。さがれ!この女を殺すぞ。」と広美にナイフを向けて逃亡しようとした。
捜査二課の刑事達は、「しまった!」と焦って身を乗り出した。
緒方係長が止めて、「林君に任せておけば大丈夫ですよ。」と焦らないように忠告した。
捜査二課の刑事達は、“林主任は隠密行動が超一流だと聞いたが、どこにいるのだろう。”と広美を捜していた。
広美は、「堀田さん、酷い事しないで。堀田さんが酷い事するのでしたら、私もしますよ。」とかかとで堀田総一郎のつま先を蹴って、堀田総一郎がひるんだ時に、警棒で堀田総一郎のナイフをたたき落とした。
広美は警察手帳を提示し、「京都府警の林です。鬼軍曹で悪かったわね。」と堀田総一郎の腕を捻あげた。
堀田総一郎は、「鶴千代!お前が鬼軍曹だったのか。」と予想外の鶴千代の正体に自分の目を疑っていた。
広美は、「私の前で、取引の時間と場所を携帯で喋ったのは失敗だったわね。」と堀田総一郎を逮捕した。
堀田総一郎は、人気No.1の人気芸者が京都府警の鬼軍曹だと知って油断したと諦めた。
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堀田総一郎は逮捕され、殺人事件の実行犯も、隆の妹、由紀子が病室で、「私の大事な人を殺したこいつらの顔は絶対に忘れないわ。この二人よ。」と銀龍会の組員から、二人を指差して証言し、パトカー警官や、広美や隆の記憶とも一致した為に実行犯として逮捕された。
さらに由紀子は、堀田総一郎の写真も指差して、「この人も殺害現場にいたわ。その二人に指示していたので、年齢からしても幹部かボスだと思います。私達はそれを偶然見てしまい、咄嗟に隠れたけれども、私が蜘蛛に驚いて物音をたてたのでばれてしまったのよ。それで彼は私を守ろうとして殺されたのよ。」と泣いていた。
堀田総一郎は由紀子の証言から、戦車購入以外に殺人にも関与している事が判明して事件は解決した。
翌日広美は由紀子のお見舞いに行くと隆も来ていた。
隆は、「由紀子、あの時、お前を助けてくれた林刑事です。」と紹介した。
由紀子は、「お医者さまから聞きました。刑事さんが発砲しなければ、私は死んでいたらしいですね。有難う御座いました。」と感謝していた。
広美は、「私は警察官として当然の事をしただけです。元気になられて良かったですね。」と安心していた。
由紀子は、「刑事さんの事は、お兄ちゃんから色々聞いています。ある時は怖い京都府警の鬼軍曹で、またある時は優しい芸者さんらしいですね。まるで七変化ですね。先日からの様子を見ていると、お兄ちゃんと仲がよさそうですね。独り者で恋人もいないお兄ちゃんのお嫁さんになって頂けませんか。」と笑っていた。
隆は、「お前、突然何を言いだすんだ。」と慌てていた。
由紀子は、「二人ともその気があるのでしょう?女の勘よ。」と二人の様子を見ていた。
広美は、「考えておくわ。」と由紀子さん鋭いわ。見抜かれていると焦って冷静を装っていた。
隆は、「俺は考えないぞ。」と照れていた。
広美は、「来週には退院できるそうですね。元気になられてよかったですね。それでは私はこれで失礼します。」と長居すれば、由紀子に根掘り葉掘り聞かれてボロがでそうなので慌てて帰った。
由紀子は、「ほら、お兄ちゃん、何しているの?後を追って!」と隆の背中を押した。
隆は、「俺は後を追わない。」と椅子に座った。
次回投稿予定日は、8月6日を予定しています。




