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第十四章 鬼軍曹と週刊誌記者

数週間後、鞍馬の山林をハイキングしていたハイカーが死体を発見して警察に通報した。

捜査一課三係にその一報があり、刑事達は現場に向かった。

遺体は二十歳前後の女性で、後頭部を鈍器で殴打された痕跡があった。

広美は、「遺体は靴を履いてなく、身元を確認できるものは何も身につけていませんでした。渡辺刑事、西田副主任、遺体の身元を確認して下さい。前田刑事、須藤刑事、付近を鑑識と捜索して下さい。」と指示した。

翌日の捜査会議で広美は、「司法解剖の結果、鈍器で殴打された事による脳挫傷が死因だと判明しました。」と報告した。

須藤刑事が、「付近を捜索しましたが、凶器は発見されず、現場にキャリーバックのあとがありました。遺体は靴を履いていませんでしたが、足は汚れていませんでした。身元を確認できるものは何も身につけていなかった為に、どこかの屋内で殺害されて、遺体をこの山林に遺棄した可能性があります。証拠は犯人が消した可能性があり、めぼしいものは何もでませんでした。」と報告した。

西田副主任が、「歯の治療痕を歯科医にあたっていますがまだ判明していません。」と報告した。

渡邊刑事が、「捜索願、行方不明者との照合を進めていますが、まだ身元は判明していません。」と報告した。

翌日、被害者は、両親から捜索願が提出されていた熊谷麻美さんと判明して、知らせを聞いた両親が遺体確認に来た。

    **********

広美が両親に、「麻美さんが亡くなられて悲しんでおられるところを申し訳御座いませんが、少しお話を聞かせて頂けませんか?」と両親の様子を気に掛けながら話し掛けた。

両親は広美の問いかけに軽くうなずいた。

広美は、「麻美さんを恨んでいた人物や、何かのトラブルに巻き込まれた事などに心当たりはありませんか?」と両親なら何か知っているかもしれないと判断して確認した。

母親が、「麻美は、最近ストーカーされていて怖がっていました。警察にも麻美と一緒に行って相談しました。その後、警察から、たまたま同じ方向に歩いていただけで心配ないと連絡がありました。何度もストーカーされるので、警察にも何度も足を運んで相談しましたが、“帰り道が同じだからですよ。”と門前払いされて、それ以上取り合って頂けませんでした。本当なのか、その人がどこに住んでいるのか聞いても個人情報になるので教えて頂けませんでした。麻美は、そのストーカーに殺されたに違いありません。警察がもっと真剣に対応してくれていれば麻美は死なずに済んだのよ。」と泣きながら広美に詰め寄った。

父親が、「ストーカーの件は私も聞いた。警察に相談していると聞いたので、警察を信頼して任せていたんだ。これは警察の怠慢だ。告訴してやる!」と怒って帰った。

    **********

京都府警から出てきた広美に週刊誌の高木隆記者が、「熊谷麻美さんの父親から聞いたが、ストーカーの相談に取り合わなかったのか?謝罪もなかったと父親が憤慨していたぞ。」と睨んだ。

広美は、「捜査中です。」と無視した。

隆は立ち去ろうとしている広美の前に出て、「熊谷さんに申し訳ないと思わないのか?謝罪もしないのか?冷たい女やな!」と広美に詰め寄った。

広美は、「温かくすれば事件は解決するの?謝罪して犯人が逮捕できるのであれば、何度でも謝罪するわよ。私達にはそのような事は必要ないわ。犯人を逮捕するだけよ。」と隆を押し退けて立ち去った。

隆は、立ち去って行く広美の背後から、「あんたの事は聞いている。そんな事を言っているから鬼軍曹と呼ばれるんだ!」と叫んだ。

隆は腹の虫が納まらず、独自に調査を開始した。

隆は事件を調べる一方で被害者の両親を慰めていた。

そんな中、広美達は、熊谷さんは再婚で、麻美さんは母親の連れ子で父親とは血の繋がりがない事に気付いた。

再婚後、父親の転勤により引っ越したので、近所の住民は誰も再婚だとは気付いていなかった。

お互いに気遣っている様子は、近所の住民には仲の良い親子に見えていた。

父親との関係を、麻美さんと仲の良かった女友達数人に聞くと、父親に体を触られたり着替えを覗かれたりしていた事が判明した。

広美が帰宅途中の被害者の父親にアリバイ確認した。

近くに隆がいて間に入り、「近所でも仲の良い親子だと評判だぞ。その麻美さんの父親にそれはないだろう!」と広美を睨んだ。

麻美の父親は、「不愉快だ!」と帰った。

隆は、「お前には心がないのか!」と広美の肩を小突いた。

広美は隆の手を払いのけて、「私達に心は必要ないわ。邪魔なだけよ。」とその場から立ち去った。

    **********

隆は、「心が邪魔だなんてなんて女だ!」とむしゃくしゃして、麻美の父親も誘い料理茶屋で、以前からひいきにしている鶴千代を呼び、京都府警の林主任の悪口をぶちまけていた。

「鶴千代さん、あなたの爪のアカを煎じて、京都府警の鬼軍曹に飲ませてやりたいよ。」と真剣に怒っていた。

広美はいつものように、隆の横に来て体を密着させておしゃくしながら、「京都府警の鬼軍曹ってそんなにひどいの?」と話を聞いていた。

隆は、「鶴千代さんとは比べ物にならないよ。」と広美の肩を抱いて鼻の下を伸ばしていた。

広美は麻美の父親にもおしゃくして、「以前どこかでお会いしませんでしたか?何か大きな荷物、キャリーバックのようなものを持っていませんでしたか?どこだったかしら。」と被害者の死亡推定時刻を伝えて、様子を窺っていた。

被害者の父親は驚いた表情をして、「いや、覚えがない。他人の空似ではないですか?」と慌てた。

広美は、「あの時は芸者姿ではなく私服だったので気付かなかったのですか?」と父親の反応を確認していた。

父親は、「今日は気分が優れない。」と帰った。

高木記者が、「送って行きます。」と全員出た。

広美はこの事を西田副主任に伝えて、「あの慌てようはただ事ではないわ。私が芸者姿で出歩けば、口封じしようとする可能性があるわ。」と囮になる事を提案した。

西田副主任が、「了解。殺害現場の特定もできていません。手がかりもない為に囮に賭けましょう。須藤刑事に護衛させます。緒方係長には私から報告しておきます。」と広美の事を心配していた。

広美が囮として芸者姿で出歩いて、近くで須藤刑事が警戒していた。

    **********

数日後、芸者姿の広美に隆が声を掛けた。

「鶴千代さんじゃないですか。まさか花町以外で会うとは思いませんでした。先日お座敷で一緒した人が、私服の鶴千代さんに気付かなかったそうですが、私だったら気付くと思いますよ。いや、きっと気付きます。」と自信を持っていた。

広美は、「そうかしら、高木さんとも私服でお会いした事がありますよ。お話もしましたが、私の声を聞いても全く気付いていませんでしたね。」と笑っていた。

隆は、「えっ!?本当ですか?その時、私は何と言っていましたか?」と話の内容を聞けば思いだすかと考えた。

広美は、「私には心がないと言っていましたね。」と隆を横目でチラッと見た。

隆は、「鶴千代さんに、そんな事は言ってないですよ。」と広美の言葉に驚いて否定した。

その時、目だし帽を被った暴漢が広美に襲いかかった。

隆が止めようとしたが、暴漢は隆を突き飛ばして、「死ね!」と広美を刃物で刺し殺そうとした。

広美は簡単にその暴漢を避けた。

そこへ広美の護衛をしていた須藤刑事が、「警察だ!刃物を捨てろ!」と駆け寄ってきた。

暴漢は焦って、突き飛ばして転倒していた隆を締め上げて刃物を突き付けて、「来るな!殺すぞ!」と興奮していた。

広美は、「芸者は、お客様の事をよく見ているのよ。あなたの声や雰囲気は、以前会った覚えがあります。熊谷さんですね。刃物を渡して下さい。」と手を差し伸べて笑顔で確認した。

麻美の父親は正体を暴かれてやけくそになり、「わーっ」と叫びながら刃物を振り上げて隆を刺し殺そうとした。

隆が殺されると焦った瞬間、広美は咄嗟に拳銃を抜き、発砲して麻美の父親の腕を撃ちぬいた。

須藤刑事が駆け寄り目だし帽を剝ぎ取ると、矢張り麻美の父親でした。

隆は目を丸くして、「何故鶴千代さんが拳銃を持っているのですか?」と何が起こったのか理解できない様子でした。

広美は麻美の父親に警察手帳を提示して、「京都府警捜査一課の林です。殺人未遂の現行犯で逮捕します。」と逮捕理由を告げて逮捕した。

隆に、「私は冷たい女だとも言っていましたね。」と笑いながら、須藤刑事と京都府警に連行した。

隆は目を丸くして、「嘘だろう!」と開いた口が塞がりませんでした。

    **********

翌日、隆は京都府警の前で出勤してきた広美に声を掛けた。

「あんた、本当に鶴千代さんか?何故麻美さんの父親が鶴千代さんを狙うんだ?」と何がどうなっているのか理解に苦しんだ。

広美は、「あなただけ特別扱いできません。記者発表を待って下さい。」と告げて京都府警に入っていった。

その日は、取り調べなどで事件を明確にして、翌日記者発表があった。

麻美さんと父親との関係を説明して、娘にしていた事を説明した。

「母親に相談すると忠告されて、カッとして思わず突き飛ばすと、テーブルの角で頭を打って動かなくなり、殺してしまったとの事です。一部で囁かれていたストーカーについては、担当者が説明したように帰り道が同じで、麻美さんが亡くなった今でも麻美さんの家の前を通り帰宅しています。麻美さんが亡くなる三日前、帰宅途中に暴漢に遭遇して、今までストーカーだと思っていた人物に助けられて、その時の雑談で、青年だと思っていた人物が女性だったので、住所を聞いて誤解が解けたそうです。麻美さんは、その事をご両親に説明していなかった為に、ご両親はストーカーが誤解だとは知らなかったようでした。担当者の対応が冷たく感じたのは、女性をストーカーだと何度も訴えてきたのでうんざりしていたそうです。個人情報の保護から、その事は母親に説明していなかったそうです。」と説明した。

記者は、「麻美さんは何故、ご両親にストーカーは誤解だったと説明しなかったのですか?」と不思議そうでした。

広美が、「麻美さんは亡くなっているので真実は不明ですが、恐らくストーカーだと大騒ぎして、それが女性だった為に、今更誤解だったとは言いにくかったのではないでしょうか。」と推測した。

記者は、「近所でも仲のいい親子だと評判ですが、何故こんな事になったのですか?」と不思議そうでした。

広美は、「先ほども説明したように、麻美さんのご両親は再婚で、麻美さんは母親の連れ子で父親とは血のつながりがありません。お互いに気を使っている様子が近所の住民には仲のいい親子に見えたのではないでしょうか。」と返答した。

    **********

記者発表後、隆は広美に声を掛けて、「どっちが本当のあんたなんだ?」と広美の事が解らなくなった。

広美は、「私は仕事に忠実なだけです。仕事をしていない時の私が本当の私です。私の実家は置屋です。週末慰安旅行に行くので、その様子を取材すれば解るわよ。」とその場を去った。


次回投稿予定日は、7月17日を予定しています。

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