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第十三章 芸者体験ツアー

事件が解決してホッとしていると一課長から着信があった。

電話をとった前田刑事が、「係長、一課長からお電話です。」と伝えた。

緒方係長は電話を終えると全員に、「栃木県警から捜査協力の依頼がありました。」と伝えた。

西田副主任が、「何故三係なのですか?事件が解決したばかりで皆疲れています。他に手が空いている係もあるでしょう。」と他の刑事達の健康状態を心配していた。

緒方係長は、「他の係に回しても三係が巻き込まれる可能性がある為に、最初から三係にしたそうです。先月十五日に、栃木県内で殺人事件が発生して、その最有力容疑者の高畑友二がアリバイを主張しているそうです。被害者は滝谷健作さんで三十二歳のサラリーマンです。そのアリバイとは、滝谷健作さんの死亡推定時刻の二十時に、京都で芸者遊びをしていたそうです。その芸者は鶴千代だそうです。林君、何か心当たりはありませんか?栃木県警の笠井警部が明日京都に来ます。林君、対応お願いします。前田君、先日林君と一緒に仕事したいと希望していましたね。明日林君に同行して下さい。」と指示した。

前田刑事が、「いえ、別に希望していませんし、私は足にけがしているのですよ。」と逃げようとした。

広美は、「骨に異常はなく、大した事ないとの診断結果でしたよね?打ち合わせは充分可能ですよね。私のホッペに何度もチュウして、今更逃げるの?」と前田刑事を横目でチラッと見た。

他の刑事達は、「俺達は事件の概要が判明するまでゆっくりするから、前田!チュウした大好きな主任と頑張れよ。」と笑っていた。

広美は、「そうね。明日は前田君に頑張ってもらうわ。笠井警部はアリバイの裏をとる為に、鶴千代に会いに行くと思うから、明日、私は刑事としてではなく、芸者として京都駅に行きます。私は京都府警の刑事に同行する、ただの芸者ですから前田君、明日は頼みましたね。」と前田刑事の肩を叩いた。

前田刑事は笠井警部に電話して、「京都府警の前田です。明日は私が京都駅まで迎えにいきます。芸者の鶴千代さんにも同行願います。目印は芸者です。私は笠井警部の顔を知りませんので、芸者に声をかけて下さい。」と連絡した。

    **********

翌日広美は前田刑事と共に京都駅で笠井警部と待ち合わせした。

笠井警部が芸者姿の広美に気付いて、一緒にいる前田刑事に声を掛けた。

「前田刑事ですか?笠井です。」と自己紹介した。

前田刑事は、「京都府警の前田です。こちらが鶴千代さんです。立ち話もなんですから、喫茶店に入りましょう。」と駅構内の喫茶店に入った。

喫茶店に入ると笠井警部は、「鶴千代さんは人気No.1の売れっ子芸者だと聞きました。一度お会いしたいと思っていました。」と浮かれていた。

前田刑事が、「京都府警に捜査依頼せずに京都に来たのはそれが目的ですか?」とニヤけた。

広美が前田刑事の足を踏んで小さな声で、「あんたじゃないんだからそんな事ないでしょう。」と京都府警の恥を晒さないように警告した。

前田刑事は、男の雑談もできないと諦めて、「さっそくですが、先ほど鶴千代さんに事情を聞きました。確かにその日のその時間、栃木県からの団体客の芸者体験ツアーに参加していたそうです。」と本題に入った。

笠井警部は、「参加者の中に高畑友二がいませんでしたか?」と確認した。

広美は、「名簿はありますが、芸者遊びなので本名を名乗らない事もあります。顔写真を見せて頂けませんか?」と何故写真を見せないのか不愉快そうに高畑友二を確認しようとした。

顔写真を受け取った広美は、「間違いないです。確かにこの人はあの場にいました。席を外したのはトイレの数分間で数回ありました。二十時ごろだったと思いますが、ビールをこぼして着替えてくると席を外されて、戻ってきた時に袖口に血のようなものが付着していました。」と証言した。

笠井警部は、「本当ですか?細かい所までよく見ていますね。しかしトイレの回数が多くないですか?」と感心していた。

広美は、「芸者はお客様の事をいつもよく見ています。すぐにタオルで拭きましたがシミは残りました。トイレの事は、ビールを飲むとトイレが近くなります。ですから私達芸者は、お客様からアルコールを勧められると日本酒にします。」と芸者はお客様の汚れなど細かく見ている事を説明した。

前田刑事が、「係長が挨拶しておきたいと申しています。今後の捜査方針の打ち合わせもしておきたいので、一旦京都府警までお願いします。」と喫茶店をでた。

広美は、「私はこれで失礼します。」と笠井警部に挨拶して置屋に帰った。」

    **********

広美は芸者姿から刑事の姿に着替えながら母の初美に、先月、栃木県からの芸者体験ツアーの依頼主や、その経緯を確認していた。

初美は、「何か事件絡みなの?あっそうか。事件の事は喋れないのだったわね。」と芸者体験ツアーの資料一式、広美に渡した。

広美は芸者体験ツアーの資料と、高畑友二の袖口を拭いたタオルを持って京都府警に戻った。

広美が三係に戻ると緒方係長が、「笠井警部、主任の林です。」と紹介した。

笠井警部は、「捜査協力をお願いしましたが、どこへ行っていたのですか?」と他府県の事件には興味がないのかと不満そうでした。

広美が、「先ほど鶴千代と話をしました。高畑友二の袖口をタオルで拭いたと説明したにも関わらず、そのタオルの任意提出を求めなかったそうですね。そのタオルを受け取ったついでに、芸者体験ツアーの資料を借りてきました。」と説明した。

笠井警部は、「鶴千代さんが、シミを拭いたタオルを何故洗濯せずに持っていたのですか?」と不思議そうでした。

広美は、「鶴千代の説明では、お客様は鼻血を出されたり怪我をされたりした様子がなかった為に、事件絡みの可能性があると判断してそのまま保管していたそうです。」とそのタオルを笠井警部に渡した。

笠井警部は、そのタオルを持ってDNA鑑定の為、一旦栃木県警に戻った。

数日後栃木県警の笠井警部から着信があった。

話を聞いた緒方係長は、「先日、林君が渡したタオルに付着していた血液のDNAと、被害者の滝谷健作さんのDNAが一致したそうだ。滝谷健作さんは京都で殺害された後、栃木に運ばれた可能性があるらしい。高畑友二を任意で取り調べたが、滝谷健作さんとは知り合いで、先日滝谷健作さんが鼻血を出し止血を手伝ったので、血液はその時に付着したと主張しているらしい。」と電話の内容を説明した。

    **********

数日後、栃木県警の笠井警部から着信があった。

「高畑友二が、芸者が袖口の血を拭いたタオルを持っているとして、芸者を殺すと仲間に喋っていたらしい。高畑友二を捜したが行方不明です。栃木駅の防犯カメラに高畑友二が映っていました。京都に向かった可能性があります。鶴千代さんにガードを付けて下さい。私も京都に向かいます。」と慌てていた。

緒方係長は、「了解しました。林主任に貼りつかせます。」と伝えた。

緒方係長は広美に事情を説明して注意するように伝えた。

広美は帰宅後、初美や他の芸者達に高畑友二の写真を見せて、「詳しい事は言えませんが、この人を見かけたら私に連絡してすぐにその場を離れて下さい。この人は殺人犯なので、間違っても尾行しないように。」と伝えた。

翌日職場に小菊から広美の携帯に着信があった。

小菊は、「変な人が付いてくる。なんか、昨日見せられた写真の人に似ている!鶴千代姉さん、助けて!」と慌てていた。

広美は、「落ち着いて、場所はどこなの?」と場所を確認した。

場所を聞いた広美は、「その場所なら、左前方にパン屋があるでしょう?そのパン屋を左に曲がれば交番があるから助けを求めて!私が行くまで、その交番で待っていて。」と交番の近くで良かったと安心して、交番に電話して事情を説明し、刑事が行くまで保護するように指示した。

交番巡査の電話が終わると、芸者が助けを求めて来た。

交番巡査は、「捜査一課の林主任から、殺人犯に追われている芸者を保護するように指示されました。」と小菊を保護した。

広美は係長に報告して他の刑事達に、「いつまでのんびりしているの!早くその交番に向かい、近くで聞き込みしなさい!」と怒鳴った。

広美もその交番に向かい、小菊を置屋まで送った。

その後広美は聞き込みの指揮をしている西田副主任に電話して聞き込みの結果を確認した。

高畑友二の目撃情報が数件あったと聞いて広美は係長に電話した。

「高畑友二が京都に潜伏している可能性があります。恐らく私の居場所を他の芸者から聞こうとしたのだと思われます。また芸者が狙われる可能性があります。今回は事なきを得ましたが、事情を知らない別の置屋の芸者が狙われれば危険です。私が囮になります。」と報告した。

緒方係長は、「前田刑事は足を負傷しているので須藤刑事を向かわせる。それまで無茶するな。」と広美の身を案じていた。

    **********

京都駅に到着した笠井警部は京都府警に電話して、鶴千代の居場所を聞いた。

その時に、高畑友二の目撃証言が複数あった事を知り、急いでタクシーで鶴千代のもとへ向かった。

タクシーで現場に到着した笠井警部は現状を把握して、「須藤刑事、こんなに離れていて大丈夫ですか?高畑友二が飛び出せば鶴千代さんを守れますか?係長さんは林主任に貼りつかせると仰っていましたが、林主任はどこですか?」と心配そうでした。

その次の瞬間、高畑友二がナイフで広美に、「死ね!」と襲った。

笠井警部は、「危ない!鶴千代さん逃げて!林主任は何をしているのだ!」と叫びながら飛び出した。

その次の瞬間、広美は高畑友二を投げて、ナイフを持っている腕を捻あげて警察手帳を提示し、「京都府警の林です。殺人未遂の現行犯で逮捕します。」と逮捕理由を告げて手錠を掛けた。

笠井警部は、「えっ?!林主任?」と目を丸くして驚いていた。

高畑友二は、栃木県警から応援にきた刑事が、栃木県警まで護送し、笠井警部は広美と広美の実家の置屋へ向かい、広美がたまに芸者をしている理由など雑談していた。

笠井警部は、「林主任は隠密行動が超一流だと聞きました。まさか、人気No.1の売れっ子芸者鶴千代さんが林主任だとは思いませんでした。」と隠密行動が得意な理由を納得していた。

その後笠井警部は京都府警に挨拶して栃木県警に帰った。


次回投稿予定日は、7月10日を予定しています。

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