第5話「ハンバーグ」
「お母さん……?
お父さん……?」
返事はない。
どこにいるのかな。
ねぇ、僕、お腹すいたよ。
ハンバーグが食べたいな。
ふわふわで、あったかくて。
噛むとじゅわって肉汁が出てきて。
その上に、綺麗な赤いケチャップがたっぷりかかってるの。
僕はお母さんのハンバーグが大好き
なのに今日は、どこにもいない。
お父さんもいない。
ずっと探してるのに、見つからない。
かくれんぼしてるのかな。
ずるいなぁ。
僕もまぜてほしい。
道を歩いていると、前から小さな子が歩いてきた。
お母さんと手をつないでる。
楽しそう。
いいなぁ。
今日は何食べるんだろう。
カレーかな。
肉じゃがかな。
それともハンバーグかな。
帰ったら「ただいま」って言って、
そしたらお父さんが「おかえり」って言ってくれて。
お母さんが笑ってる。
当たり前なのに。
どうして今日は違うんだろう。
分からない。
だって、ふたりともまだ隠れてるんだもん。
……あ。
そうだ。
家にお肉があったんだ。
この前いっぱい切り分けたから、まだ残ってるはず。
それでハンバーグを作ろう。
いい匂いがしたら、お母さんもお父さんも出てきてくれるかもしれない。
きっとびっくりする。
「すごいね」って褒めてくれる。
家に帰ったら、お肉をこねて。
丸くして。
火でじゅうじゅう焼いて。
最後に赤いケチャップをかけるんだ。
僕が綺麗にかけてあげる。
お母さん、喜ぶかな。
お父さんも食べてくれるかな。
あ、でもハンバーグには野菜もいるよね。
お母さん、いつも添えてたもん。
家の裏に植えたんだった。
ちゃんと育ってるかな。
まだ芽は出てないかもしれないけど。
頭は、もう出てるはず。
土をどければすぐ採れる。
おいしくなーれ。
おいしくなーれ。
今日はきっと、みんなで食べられる。
僕だけのハンバーグを。




