第4話「お母さんは子供が大好き」
この世界には、たくさんの母親がいる。
母親がいなければ、人は生まれない。
誰もここにはいない。
母親がいるから、子供が生まれる。
そして母親は、子供が大好きだ。
優しく抱きしめて、
あたためて、
守って、
愛して育てる。
それが母親だ。
だから、母親は子供を傷つけたりしない。
……しないはずだ。
でも、ときどきおかしな母親がいる。
この母親は違った。
「大嫌い」
そう言いながら、殴る。
「貴方なんか…」
そういいながら、蹴る。
「産まなきゃよかった」
投げつける。
おかしいね。
母親は優しくて、あたたかくて、安心できるものなのに。
この母親は、どうしてこんなに冷たいんだろう。
どうしてこんなに怖いんだろう。
でも――私は知っている。
私は、本当は子供を愛していた。
誰よりも愛していた。
愛して、愛して、愛して。
眠れない夜も抱きしめた。
熱を出せば朝まで手を握った。
泣けば背中を撫でた。
何度も何度も、「大好き」と言った。
愛していた。
ちゃんと、愛していた。
でも。
届かなかった。
どれだけ愛しても、あの子は私を見なかった。
笑わなかった。
泣かなかった。
何も返してくれなかった。
まるで、そこに心なんてないみたいに。
だから私は怖くなった。
「あの子はおかしい」
何度も言った。
誰にも信じてもらえなかった。
疲れているだけだと笑われた。
違うのに。
違うのに。
私はちゃんと分かっていた。
あの子は駄目なのだと。
あの子は、このまま生かしてはいけないのだと。
私がやらなきゃ。
私しかいない。
だって私は、母親だから。
母親は子供が大好きだ。
だから――
殺さなきゃ。
あの子は、もう……




