第3話「皆の目が見えない」
僕は目が見えない。
……ううん、違う。
見えてるよ。
見えてないのは僕じゃない。
みんなのほうだ。
お母さんも。
お父さんも。
道ですれ違う人も。
みんな、目がない。
あるはずのところが真っ黒で、ぽっかり穴が空いてるみたいなんだ。
なんでだろう。
僕にはちゃんとあるのに。
何度もお母さんに聞いた。
お父さんにも聞いた。
「どうしてみんな、目がないの?」
でも、ふたりとも困った顔をして黙るだけだった。
おかしいな。
答えないってことは、分からないんだ。
そっか。
みんな、自分が見えてないことに気づいてないんだ。
かわいそう。
だったら僕が治してあげなきゃ。
だって僕だけが見えてるんだから。
僕は台所から、綺麗な銀色のものを持ってきた。
お父さんは嫌がって暴れたけど、大丈夫だよって言ってあげた。
すぐ終わるから。
ちゃんと治るから。
お父さんの黒いところに、それをそっと差し込んだ。
あったかいものがたくさん出てきた。
でも、これで見えるようになる。
僕は偉い。
僕はすごい。
僕、お医者さんみたいだ。
……なのに、お母さんは泣いた。
僕を何度も殴って、叫んだ。
「なんで貴方はいつもそうなの!
どうして普通にできないの!」
普通?
おかしいな。
お母さんも見えてないから、そんなこと言うのかな。
だから僕は、お母さんにも銀色の――
ううん。
ナイフを向けた。
そのとき、お母さんが震えながら言った。
「お願い……いい子にして。みんなみたいに……」
その言葉を聞いて、やっと分かった。
ああ、そうか。
みんな、世界を見たくないんだ。
だから目を閉じたまま生きてる。
ずっと閉じたままだから、なくなっちゃったんだ。
かわいそうに。
でも大丈夫。
僕が治してあげるから。




