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【三章開始】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第40話 旦那様と朝食にする話でもないですが

「――つまり、一連のことは国の制定した化粧品ガイドラインに不満を持った輩の仕業、ということですの?」


 ルゼルヴェの服を借りて、白のシャツに黒のズボン、服装に合わせポニーテールで栗色の髪を束ねたフルールが話をまとめる。

 とにもかくにも朝食を、とその先の話は後でだと女将に押しきられたのだ。その女将は今、食堂の仕込みをして席を外している。


「簡単にまとめれば、そうなる。何より優先させたのが、令嬢を始めとした健康被害に関することだからな。

 国で制度化する前段階として、医師の他に、国内で活動する関連事業の商会にも通達を出していた」


 ルゼルヴェはそう補足しながら、ベーコンエッグを乗せたトーストにかぶりついていた。

 見目が良いだけに、躊躇いなく手掴み食べをする様はいつ見ても不思議に思う。初対面での冷たい貴族の印象が、未だ強すぎるのだろうか。


「最終的に禁止に持っていくとしても、その前に需要が減れば、自然と供給も不要――そう、シフトしていくことが望ましかったんだが。手軽に金儲けしたい連中からすれば、これは面倒なだけだからな。これらの噂は、想定内ではあった」


「そりゃあ、倫理観が飛んだ方々なら、中毒者への治療費で荒稼ぎ……まで、視野に入れるはずですわ。綺麗事なんて、一番縁遠い人種ですもの」


 サクリとサラダを口にして、次をフォークで刺し、フルールは均等に切られた野菜に気づく。

 スライサーや機械でも使ったかのような全てが均一に切られた物を見るのは、今世で二度目だ。


 ――あら、本当に女将に言われて、手伝ってたのね。


 フルールの目の前のサラダは、以前嫌がらせで玉ねぎをルゼルヴェに任せたのと同じ。魔法で正確に切られたものだろう。

 以前ランチで食べた時の女将の料理は、荒くはないが良い意味で手作りの粋だったのを覚えている。


「貴族相手にも、製品に携わっている者たちにも実害への警戒は当然していた。そこは、良い。……問題は」


 ルゼルヴェがそこで言葉を切り、言いづらそうにフルールを窺う。それに、ああと頷き返して言葉を代わった。


「私……に、喧嘩を売る愚か者たちへの注意が疎かでしたか? フィアビリテやガルドも居ますから、当然ですわ。それに普通は、侯爵家に楯突こうとは思いませんものね」


 昨日の誘拐に、まだ見ていないが店舗は荒らされているらしい、そう来れば自然と行きつくことだ。別に、言い淀むことでもないだろうに。


「領内をうろつく不審者が増えていたのは、報告で把握していた。が、調べれば君の後ろに誰が居るのか気づかないはずがない。ほとんどは抑止力として機能もしていた」


「そうですわね、三日間の営業でも市場調査に来ていた商人は居ましたわ。モデル店舗として、私自ら対応をしましたもの。真摯に取り入れようとしている方も、キチンと居ましてよ」


 噂と実害では、大いに違う。だからこそ、我が身可愛いだけの輩が、後先考えずリスクを負うのもまた考えにくいことだった。

 もったいぶるように、フルールはフォークを皿に置き、息をつくと頬に手を当てる。


「……商売するにあたり、お伺いを立てなかった見せしめのつもり、かしらね」


 もちろんそれは、同業者の商会に対してではない。悪事を働いた商人崩れを唆した人物に対して、だ。彼らを例えるならまさに、虎の威を借る狐だろう。

 そして当てはまる人物は、一人。容疑としてなら他家だっているだろうが、短絡的かつ手の早さから疑うとなれば、先ずは身内だ。


「……すまない」


「今更ですわ。輿入れする前ならともかく、私も書類上は、もうサントュール家の一員ですもの」


 謝罪を口にするルゼルヴェに、フルールはさらりと返す。済んだことを蒸し返して居たたまれなくなるのは、フルールも同じだ。

 ルゼルヴェの顔が、まだまともに見れないでいるのがその証拠。会話するにも襟元を見てやり過ごしている。


 ――無事なんだもの、それで良いのよ。この件は。


 それよりも、今後の話をする方がよほど建設的だろう。ルゼルヴェと意見が一致していることから見ても、被害妄想ではなく相手は黒なのだ。


「荒らされたという店舗の方に、足がつくものなど無いでしょう。証拠はあるんですの?」


「昨日の件なら、前侯爵に全て任せている。その内、報告が上がるだろう。噂に関してならば、本邸と別邸とで繋がっている使用人を泳がせている。領内での不審者も、何処の商会かは尾行済みだ」


「……ああ、なるほど。ちょうど、私の件が決定打になりますのね」


 一つ、一つはわざわざ処罰するには弱いのだろう。だからこそ泳がせ、放置していたのか。

 そしてフルールのことに関しては、現侯爵夫人として越えてはならない線になる。


 ――それでも、言い逃れは出来てしまうから。


「旦那様、この後、服を着替えるついでにお願いしても?」


「なんだ?」


 フルールは、にっこりと微笑んで提案する。いつもの流儀で行くならば、子供じみた喧嘩には真っ向から買うに限るのだ。


「ドレスを一着、あつらえていただきたいですわ。それの完成に合わせて、先触れと……そうですわね、旦那様のエスコートもお願いしても?」

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