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【二章完結】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第33話 失態を悔いつつ、冷静に

 フィアビリテの周り、集まる子どもたちは皆活発だ。反対にフルールに集まる子どもたちは、ゆっくりと過ごすしたい甘えん坊が多い。

 タイプが違えば、遊び方も違う。そうなると自然と互いの距離は開いてしまう。


 ――しまった。視界から外れてる。


 フルールの姿が見える範囲で相手をしていたはずなのに、押し倒そうと徒党を組んだ子どもたちによって、前のめりにされ目が塞がれた。ほんの数秒、辺りを見渡しても姿を見つけられなかった。


「奥様声かけてくれて良いのに、大声とかめったに出さないもんなぁ……」


 これが初めてではないから、離れすぎないようにとは度々伝えていた。

 離れる場合はその都度、こちらを気にせずに言えと伝えるのだが、フルールは遠慮しているらしく声をかけてくれたことはない。


 ――好戦的な物言いだけど、相手を選んでるもんなぁ。あれ。


 さらに言うなら、分かりにくいが常に遠慮している節がある。甘え下手というやつかとも思ったが、どうもそれだけではない様子だ。


 ――そう、まるで孤児のような……。


「お兄ちゃん、なに――?」


「もっと高く高く!」


「えぇ~。じゃあ、ちょっとあっちまで戻ろうか」


 群がる子どもたちに、フルールがいたところへ移動を提案する。やんちゃ盛りの子どもはフィアビリテの高い目線が新鮮で、楽しいらしい。


「やっぱり、見当たらないねぇ」


 場所を移し、遠くを見つめて探しても見当たらない。それほどまでに遠くへ行ったのか。子どもたちを相手にしながら、周辺を思い浮かべ当たりをつける。

 ただ遊ぶことをしないで、フルールはそこに常に学びを結びつける傾向があるからだ。


「こっちだと後は……前は、花で何かしていたな……」


 植物で細工物を作っていて、子どもたちにそれがいたく好評で、フルールはせがまれるまま延々と作っていのを覚えている。

 ちょうど村を囲む堀と塀の外側に林があり、モンスターが蔓延っていた昔の名残で、林と村の間には畑も何もない。

 強いて言うなら、少しでもモンスターの侵入を防ぐ為に、村が高く設計されたことか。


 ――高低差で村の中からだと、塀が邪魔で遠くが見えないんだよなぁ。


 ただ見晴らしの良い開けたその場所では、昔と違い今は草花が咲いていて子どもたちの遊び場の一つになっていた。


「……。よいしょっと」


 一瞬の間を空けて、フィアビリテは群がる子どもたちを身体から一人、一人下ろしていく。


「お兄ちゃん、もっと――!」


「急におろすなよぉ!」


「はいはい、今日はお仕舞いだよ。あとは村の兄ちゃん、姉ちゃんたちと遊んでもらいなぁ」


 フィアビリテは、手仕事をしながら子どもを見ていた年長組に視線を送り、輪からとひょいと抜け出す。

 子どもたちに背を向けるとサクサクと歩を早め、笑みを消し剣の柄に手を掛ける。


 ――さっき……魔力が、動いた。


 それは、生活魔法の規模ではない。一度だけだが、ハッキリと大きく感じた空気の変化は何かがあった証拠だ。


「――っ、君たち」


 植え込みががさりと音を立てて、フルールと遊んでいた子どもたちだ。

 フィアビリテを見て、パアッと子どもたちの顔が明るくなる。


「お兄ちゃん見っけ!」


「ご褒美! ご褒美!」


「……ご褒、美? ねえ、一緒に遊んでた、お姉ちゃんは?」


 続く後ろにフルールの姿が見えない。子どもたちの様子を怪訝にな思いながら、フィアビリテは膝を曲げて目線を合わせて訊ねる。


「後から歩いてくるって」


「かけっこしてるの!」


「ね、ね、ご褒美、ちょうだい――!」


「あ――、ご褒美は今持ってないんだ。後でで良い? かけっこのゴール、まだ先だろう?」


「あ!」


「そう! 大人って言ってた」


 フィアビリテに指摘され、子どもたちは互いに顔を見合わせると、思い出したように声を上げた。

 また村へと向かって走り出していくその背は、もうお兄さんへの興味が微塵もなかった。その人数を数え、遊んでいた全員だと確認する。


 ――本当にもう、大声上げて欲しいなぁ。


 ルゼルヴェと共に初めて、町のフルールの家を訪ねた日を思い出す。ならず者が居座り、彼女は助けを求めず山の麓の林へと一人逃げていた。


「……先に、逃がしたとして?」


 首をもたげた嫌な予感に、フィアビリテはため息をついて走る。粗雑な塀を手をついて飛び越え、一メートルはあろうかという堀は塀を足場に跳躍した。


「さっすが……」


 ようやく視認した草原に、辺り一帯を囲う氷壁が築かれていた。先ほど感知したのはこれだろう。だが、フルールが居ない。


「たぶん、想定外が起きたんだなぁ」


 氷壁に一ヶ所、人が一人通れるだけの隙間がある。ヒビなども見あらず、破られたわけではないだろう。ならば、フルールは自分の意思で動いた可能性が高い。

 フィアビリテは懐に手を伸ばすと、モンスターの心臓部から取れる魔石を出し、上へ投げる。


「どっちが先に来るかなぁ。まぁ、順当にルゼルヴェか」


 宙を舞い、夕焼けを受けキラリと光る魔石に手を伸ばして狙いを定める。

 魔法を操り視認しやすいように出した火矢で、さらに魔石を天高く空へと押し上げた。


 炎に当てられ魔石に亀裂が入ると、澄んだ音を立てて爆ぜる。内包する魔力が辺りの雲を吹き飛ばし、粉々になった魔石の欠片が周囲を煌めき彩りながら溶けるように消えた。

 有事の際、魔法が使えない騎士や町村が使う信号弾だ。


「領内がキナ臭いって、アルディ様からも一応聞いてはいたけど。はぁ……」


 フィアビリテとフルールが領地を転々としているのを、巡回する騎士らも見ていたらしい。

 ただの野次馬、からかいのネタ程度にフィアビリテが受け止めていたら、アルディから忠告をされたのだ。


『人間が一番、質が悪いんだぜ。人の口に上がるってこたぁ、良くも悪くも、足を掬われねぇように気張らなきゃなんねぇもんだ。

 嬢ちゃんだけじゃねぇ。領内に、知らねぇやつがうろついてるとも聞くしなぁ?』


 久々に見るその光に目を細め、フィアビリテは氷壁の向こう林へと向かった。

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