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【二章完結】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第26話 頼られて嬉しかったからってやりすぎですよ、旦那様

「本当に、このままそこでやるんですかー?」


「確認すれば、わざわざ木箱でやる必要も無いと言ったのは君だろう?」


 窓越しにフルールが階下に向かって話せば、ルゼルヴェがハッキリとよく通る声で答えた。


 ――何かしら、このロミジュリ会話というか、塔の上の会話というか……。


 内容は恋愛などでは全く無いが。洪水の被害検証で、土台となる大きい木箱のサイズについて話が移った時だ。地面に直接ではいけないのかと、ルゼルヴェに聞かれた。


 ――まぁ、私も箱庭セラピーじゃないけど、室内でやるから木箱って説明したのよね。


 それでも構わないとフルールが返せば、彼は着ていた上着を脱ぎ、楽に服を着崩して階下へと消えてしまった。

 今、ルゼルヴェが居るのは、先ほどアルディと一戦交えた場所。上からでも見やすいようにか、そのもっと砦寄りのところだ。

 剥き出しの地面となったそこは開けていて、広さは十分すぎるだろう。


「話し込んでる間に、モンスターの回収が済んでるわ……?」


「まぁ、当然ですね。……今日の夕飯は豪華になりそうです」


 遠くを見ていたら、木々は倒れていたり戦闘の痕跡はあるのだが、モンスターがいた血の痕すらも残っておらず驚いた。

 フィアビリテが後ろから覗き、その声は僅かに弾んでいてなんだが嬉しそうだ。


「そういうものなの? ……ん、食べれるの?」


「ええ、毒がある個体は食べれませんけど、モンスターもなかなか美味ですよ。無理強いはしませんが」


「夜もここに居ていいなら食べるわよ。気になるじゃない。意地悪ね」


 フルールが、今まで縁のなかったモンスター食について話している間に、ルゼルヴェは地面に膝をつき、手で砂を触ると何かを思案していた。


「旦那様ー。模型はリアリティ出した方が、検証では有用ですからねー」


 頭が回るのだからこれで意味は伝わるだろうと、フルールは上から声をかけて見守る。淑女がそう何度も声を張り上げてはダメだろう。

 表面の砂をかき集めても、前世の公園の砂場で作るお遊びと同じ出来映えにしかならない。

 表面の土は、水に流されやすくそれはそれで必要な要素であるが、川の仕組みを検証するのであれば、もっと地層の深い土も使って内部を作る必要があった。


「……《成せ》」


 地面に片手をついたルゼルヴェがそう呟けば、ぼこぼこと広範囲の地面が隆起し始める。

 山や丘、平野に川、湖といった説明されずとも分かるほどに地形が、徐々に成形されていった。


 ――戦隊もののジオラマ……。


 フルールは思わず、前世の子どもの頃に観たヒーローと巨大怪獣の戦いを想起していた。

 ルゼルヴェがその巨大生命体と例えるならば、彼の眼前に広がる風景はまさに小さな領地そのものだった。


「……あれ? そういえば旦那様、何かを呟いて」


「ああ、詠唱ですねぇ。魔法使いが使う言霊で、複雑なものや精度、威力上げに使われてますね。

 ルゼルヴェはだいたい、命令形の一語で済ませてますけど、長い人もいるらしいですよ。ちなみに俺は、使えませんからね?」


 ルゼルヴェの声が不思議な反響を起した気がして、フルールが疑問に思うとフィアビリテが解説する。


「でも、そうか。奥様が詠唱を覚えたら、倒れるリスクは減りますかねぇ?」


「……貴方、根に持つわね」


「そりゃあ、護衛としては泣きたいところでしたから。でも、詠唱は俺じゃ教えられないので、ルゼルヴェになりますね」


 フルールは後ろを振り返り、フィアビリテをじとっと半目にして睨む。彼は全く堪えずに、笑って受け流していた。


「私はこのままでも困ってないわよ。あんな事態、そうそう起きて欲しくもないし」


「でも、奥様あの時、何かをイメージして声に出してましたよね? あれを詠唱に変換できたら、多分負担は減りますよ」


「発動はしてたんだから、今は別にそれでいいわ」


 魔法に必要以上を求めておらず、それよりも商品開発に携わりたいフルールは、その提案を先延ばしにした。


 ――旦那様と二人は、ちょっと気まずいわ。


 口許に手を当てて、一番の理由を胸に秘める。店舗の内覧の日、今世で初めてみっともなく泣いた姿を晒したのだ。

 しかも相手はあのルゼルヴェである。理由をつけては、フルールはずっと彼を避けていた。


「それよりも、フィアビリテから見てあれはどうなの?」


「えぇ。俺にルゼルヴェの評価をさせるんですか」


「違うわよ。あの模型、ちゃんと合ってるのか聞いてるの」


「同じ意味では……」


「――ああ? 心配すんな、嬢ちゃん。ありゃ、ちゃんと位置は合ってるぞ。ああいう小細工にだけは、本当にうめぇもんだ」


 騎士に呼ばれて部屋の外で何かをしていたアルディが戻ってきて、フルールの上から窓の外を覗くとそう評価する。


「よく分かるわね?」


「俺は領内の移動は全部飛んで済ませてるからな。見慣れた景色だよ。空は馬より早ぇんだぜ? 今度、起きてる時に連れてってやろうか?」


「空は別に、興味ないわ」


 飛行機に乗るようなものだろう、フルールはそう返した。遠くから見下ろすだけでは、地図と同じで情報を見落としてしまう。


「見て、計って、感じて、調べて、私が今必要なのは、五感を全部使う地道な手段なの」


 フルールが領地巡りをしたい理由は、今回のような問題を抱えた土地で補填が目的だ。そのためには、地に足をつけた泥臭い作業も必要だった。

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