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【二章完結】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第20話 振り回される苦労人

「――おいおい、新手のモンスターかと思ったら……、ここらで見ねぇ顔だなぁ。

 こりゃ、この嬢ちゃんの出した魔法かよ。つか、これ魔法かぁ?」


 最後を見届けること無く、気を失って倒れたフルールを軽々と支える男が居た。

 光が射す空を見上げ、辺りを見渡し、ボリボリと頭を掻くと男は一人ごちる。


「はぁ……、はぁ、……はぁ? うげぇ……、前、侯爵様……なんで、ここに?」


 そこへ息を切らしたフィアビリテが、馬に乗って駆けつけた。男を見るなり、苦虫を噛み潰したように嫌悪を露にする。


「おう、ビリー坊。あんな遠目から見て分かるモン出てきたら、そりゃあ、俺が出張るだろうが。モンスターじゃなかったがなぁ。

 ああ、そうかぁ……。もしかしてこれ、お前の知り合いか?」


 男は脇に抱えたフルールを指差して訊ねると、土嚢から飛び降り、フィアビリテの方へ足を進めた。

 フルールの魔法によって辺りの水が引き、ぬかるんだ地面は男の足を取るほどではなかった。


「あぁぁ。彼女をそんな、雑に抱えないで下さい!」


 フィアビリテが泥で汚れるのも構わずに、ずかずかと歩いて来ると、フルールを抱き寄せた。男の方も、すんなりと明け渡している。


「雑って言うがよぉ。お前、それ早く何とかしねぇと低体温で死ぬぞ?」


 フィアビリテの腕の中で、青を通り越して白くなっているフルールの顔色を、男は平然と指摘する。

 その目蓋は固く閉ざされていて、呼吸も浅い。容態が芳しくないのは、明らかだった。


「そう言うなら、さっさと暖めてくれませんかね!?」


「なんだぁ? えらく気があるじゃねぇの。その魔法使い、お前の連れかぁ?

 たく、だったら手綱くらい握っとけよなぁ……」


 口では雑なことを言いながら、眉間に皺を寄せた男は造作もなく、三人を囲うように熱風と雨避けを魔法で展開する。

 同時に、三人の濡れ鼠だった衣服からも水気が弾けとんだ。


「……貴方には言われたくないですねぇ!? あと、俺のじゃないですから!」


 髪も乾き軽くなった身体にホッと息をついて、フィアビリテは反論する。乾いた外套を脱ぐとフルールを包み、すくりと抱き上げた。


「馬鹿か、お前。魔力総量把握してねぇとか、連れて歩くなよ。半人前じゃねぇか、戦場だったら即死ぬぞ」


「……貴方たち親子の不始末を、彼女が買って出たんですよ。その言い方は、あまりにも無責任かと」


 睨むフィアビリテに、男は意味を掴みあぐねて怪訝な顔をする。


「不始末ぅ? 俺は、俺の役目をちゃんと果たしている。誰のお陰で、血の惨劇が無くなったと思ってやがる」


 誇張するでもなく、気だるそうに言う男にフィアビリテは盛大なため息を吐く。

 男がこうなったのは性格もあるが、過去の環境のせいでもあった。これ以上の問答は、ここでは無意味だ。


「……はぁ、それはそれこれはこれです。もう良いですよ。ここまで来ると、砦の方が近いですね。仕方がありません。

 アルディ様、彼女を休ませたいので、連れてって下さいよ。あと、医者と伝令も」


「んだぁ、ビリー坊。俺の城に色恋持ってくんなよ。だいたいお前、息子に興味あったんじゃないのかよぉ」


 ぶすっとした様子のフィアビリテが周囲の現状を確認して、男に話しかける。

 アルディと呼ばれた男は、面倒そうにため息をついていた。


「冗談も大概にしてくれませんかね! ルゼルヴェとは忠義であって、下心なんかあるわけないでしょうが! それに俺はちゃんと、女性が好きですから!

 あと、そのルゼルヴェの伴侶ですよ、彼女は。貴方の息子の嫁です!」


 男に遊ばれていると分かっていても、反論をしないとさらにあらぬ噂が出来上がってしまう。フィアビリテは苛立ちのままに否定しながら、必要な情報をアルディへと告げる。


「あぁ? アイツいつの間にか、結婚してたのか? んじゃあ、お前がお守りなわけ? こんな制御も荒い半人前の?」


「一年前には結婚式の招待状送ってましたよ! どうせまた見てないんでしょう。貴方って人は!

 いいから早く、砦へ案内してくださいってば!」


「苦労するねぇ。愛想が尽きたらいつでも俺んとこ来いよ? んん、でも今から連れていくのか?

 まぁ良いか。歓迎するぜ、ビリー坊。大事な女なら落とさねぇよう、しっかり抱えとくんだな」


 「だから、それは違うって何度も言ってるでしょうがぁ!」


 マイペースなアルディ・サントュール前侯爵。ルゼルヴェの父を捕まえて、フィアビリテは青筋を浮かべながら吠えた。

 男が作りだした荒々しい風に、一行は巻き上げられる。

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