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【三章開始】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第12話 実は人に触れ、この世界での生き方を勉強中です

昨日、毎日更新が出来ずすみません。

スローライフ取材ではないですが、現在、100年前の農業技術を使った田んぼ体験を受けています。

まさかの数時間後の筋肉痛で、スマホが握れなくなりました。恐るべし。

 ヒュッと風を切って放たれた矢が、遠くを飛ぶ野鳥を射止めて落とした。

 その落ちた方へと向かって歩きながら、フルールは前を行くフィアビリテに、ふと思い出して訊ねる。


「モンスターって、動物とどう違うの?」


「一番は魔力の有無ですねぇ。モンスターは、何かしら魔法を使ってくるヤツが多いです」


 フルールが歩きやすいようにと、フィアビリテは枝葉を折ったり踏んだりして道を作りながら答えてくれた。


「例えば?」


「火を吹いたりとか、無駄に速いヤツとか。人間と同じで、弱い魔法とか強い魔法とか個体差を持ってますよ。なんです? 急に」


 フィアビリテは軽く後ろを振り返って、不思議そうに聞き返す。フルールは足元に気をつけながら、獣道を歩いていた。


「単純な興味、かしら。私、モンスターとか、今まで知らなくて……。ここ山だし」


「心配しなくても、ここら一帯は出ないですよー。だからこそ、奥様の魔力発散に選んだわけですし」


「発散って……」


 フィアビリテの言い方に、フルールがやや呆れながら返す。

 木の根が盛り上がってる所をフルールが避けようとしてよろけると、彼はすかさず手を伸ばして支えてくれた。


「さすがに、村の近くでは出来ませんしねぇ。奥様、危なすぎて」


「失礼ね」


 村に滞在してしばらく、見学、夕食会に続き、午前は畑仕事、午後は子どもたちへの知育とフルールは忙しくしていた。

 先日作ったとうもろこしのヒゲ茶は、その日の仕事終わりを狙って希望者へ振る舞った。


『畑に還すだけのヒゲが……?』


『茶……?』


 怪しむ村人の前でフルールが率先してヒゲ茶を飲めば、後に引けず飲むしかなくなった彼らの顔は愉快の一言だった。


 ――ここの村、女性の方が考え方が柔軟よねぇ。


 夕食会の調理を担当していたのは、フルールに好戦的だった穏健派の代表、その奥様だった。

 フルールが作り方の説明のために調理場を訪れれば、意外なことにヒゲ茶を作るのにも興味を持っていたらしく、その場で鉢合わせする。


『主人は少し頭が固いんだぁ。村民が欠けることなく皆で冬を越せるなら、新しいものを取り入れるのは必要なとこだって、アタシは思うんだがねぇ』


『ずいぶんと、旦那さんとは違う考えなのね?』


『いやまぁ……あの人が村の代表として、気負ってるのも分かるけどさ?

 習わしを守るのと、新しい良さを取り入れるのは、両立出来んじゃないかなぁって。まぁ、アタシは難しいことは分かんねぇけどね。

 誰かが死ぬ方が嫌じゃない、ある日急に姿を見せなくなるんだよ?』


『そうね。冬越しが、やっぱり課題よね』


 作り方を覗き込み、一番に試飲していたのも彼女だった。 気づけば、村でフルールが最初に打ち解けた大人になっていた。

 彼女は美容よりも、村全体を守る意識をしっかりと持っていた。


『貴女のもてなしメニュー美味しかったわ。夕食会の時、名乗り出てくれたら良かったのに』


『やだよぉ。ああいう場は、女は喋らないもんなんだ。ただの飾りだよ。そんじゃなくてもアタシ、料理ばっかりでちょっと浮きがちだしなぁ』


 パキリと枝を踏む音がして、過去を振り返っていたフルールの意識が戻る。

 氷塊以降、またあまり魔法を使っていないとフィアビリテに指摘され、山へと連れてこられたのが今日だ。


『奥様、今、行っときましょうか。体調崩したり、村民にドン引きされたくはないでしょう?』


 村では現在、加工の説明のために、そこそこの量の備蓄の乾燥とうもろこしを水に浸けている。

 要するに、この機会を逃すとまた忙しくなるのだ。


「あ、いたいた」


 地面に落ちている野鳥を見つけ、フィアビリテは慣れた手つきで処理を始める。

 フルールの魔法発散がてら、フィアビリテは山で狩りをすることにしたらしい。道具一式を村から借りていた。


「私も覚えるべきかしら?」


「奥様は弓より、魔法の方が良いと思いますよ。たぶん、ちゃんと練習すれば狩れますね。というかやるんですか?」


 フィアビリテの後ろから、手際を見ていたフルールがポツリと呟く。彼はやや引き気味に確認してきた。


「庶民スキル身につけたら、どこでも生きていけるでしょう?」


「すでに十分だと思うんですけど、どこで生きてくんですか、まさか山奥、秘境?」


「どこかしら? あと二年の間に色々学んでおこうとは思ってるけど。選択肢、多い方が良いじゃない?」


「……奥様、逞しすぎて恐ろしいなぁ」


「身の丈にあった生活は当然でしょ」


 郷に入っては郷に従えという、この世界に生まれたのだから、ここでの生き方に慣れなければいけないのだ。


 ――いつまでも現代人感覚じゃ、ここの平民とのギャップありすぎだし。


 貴族として育った記憶よりも、まだ前世の方が意識が強い。少しずつ町で暮らすようになって生活には慣れてきているが、魔法を意識して使うことだけは、忙しいとすぐに忘れてしまう。


 ――魔法が使えたって、はしゃぐ年でもないしなぁ。


 結果、暴発する前に発散しに行きましょうと提案された。この世界で、フルールはまだまだ一人では生きていけないらしい。

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