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【二章完結】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第11話 ヒゲ茶の作り方

「え、フィアビリテ。収穫したことないの? とうもろこしはね、こう――ボキッと」


 フルールは手近なとうもろこしの茎を片手で押さえ、実を下向きにひねって根本から折った。


「……なんで農民からじゃなくて奥様講義になるかなぁ、いやまぁ予想通りですけどね。その、躊躇いの全く無い手つきとか」


「だって綺麗な手応えで採れると、ちょっと快感よ、気持ちがいいの。それに収穫って一大イベント、楽しいじゃない」


「待って、俺に変な言い方しないで。奥様」


 早朝、フルールたちは生食用とうもろこしを栽培している共同エリアの一角で、収穫の手伝いをしていた。

 収穫時期を分散するため、幾つかの区画毎に成長具合が分けられている。


「とうもろこしの話よ。あ、見て。これなんて太くて大きくて、手折るの絶対快感よ。さあほら、あとは練習あるのみ!」


「えぇ……」


 サイズ、ヒゲの色を一つ一つ観察して、収穫を見極めることに夢中なフルールは、フィアビリテのことは話半分程度も聞いておらず生返事だ。

 フルールの身長よりも高いとうもろこしなどもあり、背伸びをしたりして一苦労なのである。


「なによ。だって忙しい時期に来たのよ? 収穫ついでに、ヒゲ茶の作り方を教える話をつけたのだから、フィアビリテも手伝えば早く終わるのよ。ほら、手を動かして」


「正論の暴力ですね!?」


「あ、ここも良いわねぇ」


 冬の飼料、食料が村のメインの産業だが、夏の特産として近くの町で売買していた。その朝の出荷に間に合わせるべく、フルールははりきっている。




「――そうそう、この皮を向いてね。綺麗なヒゲだけを集めてね。外側のヒゲは混ぜたらダメよ」


 出荷作業を終えたフルールは、その足で次の作業場へ向かう。販売に向かない不良のとうもろこし、その皮剥きをする子どもたちにヒゲの回収を教えに来たのだ。

 彼らは以前木札で遊んだ子たちよりも年齢が高く、日頃から村の労働力として過ごしている。


「お姉さん、村の人じゃないのにすごいね」


「変なの、偉い人は皆、見てるだけなんだよ?」


「あっ、バカ! すみません、コイツまだ分かってなくて」


「良いの、良いの。余所者なのは本当だもの」


 子どもたちと一緒になって地面へ屈み、フルールは会話に混ざる。


「こんな捨てるところ、取っておいてどうするの?」


「お茶になるの、身体に良いのよ。むくみとりとか、今の時期の夏負けとかね。ノンカフェインだし、とうもろこしが嫌いじゃないなら美味しいわよ」


 皮を剥ぎ、プチプチと、金色やうす茶、緑ぽい綺麗なヒゲを取ってはそれぞれの部位ごとに集めていく。


「のん……?」


「小さい子から大人まで皆、気兼ねなく飲めるってこと。まぁ、どんなものも飲み過ぎは気をつけないといけないけどねぇ」


 ――水中毒とか、電解水バランスとか、カリウムとか。


 何事も適量に勝るものはない。前世、水だけ飲んでおけば、と外回りで忙しくしていた時、塩分不足で体調不良になったことは我ながら呆れた話だ。


「……日本人の塩取りすぎ問題、どこ行ったのよ」


「お姉さん何か言った?」


「なんでもないわよ?」


 ボソリと口に出してしまい、フルールは笑って誤魔化す。

 塩分を気にしすぎて逆に足りない説。まさかと思って塩を舐めれば、しょっぱく感じる前に甘くて美味しいと思ったのは、後にも先にもあの時だけ。今は遠い、苦い過去の一つだ。


「皆も、日頃からお手伝いしてるだけあって、とても上手ね。偉いわ」


「やらなきゃ飯抜きだからなー」


「そうそう、怒られるしねぇ」


「良いよね、小さい子。働かなくていいもん」


 子どもたちはそれぞれ言い合っては笑っている。先日の夕食会よりもほのぼのとしていて、フルールは微笑ましく見ていた。


「それでも偉いわよ。ちゃんと自分を褒めてあげてね。特に、ご飯が美味しいって感じる時は、それだけたくさん働いてお腹が空いた証拠だから、良いことなのよ」


「偉い人は皆、難しいこと言うね」


「そうねぇ、難しいことばかり習うからかしら? でも、自分は凄いんだ、偉いんだって思うことに身分は関係ないわ。後ろ暗い考えは、それだけで人生楽しくないもの」


「お姉さん、楽しくないの?」


「楽しいわよ? 私が楽しく過ごすためには、皆の笑顔も必要なの。だから元気に育ってね」


「なんだー。やっぱり難しいよぉ」


 手伝いの中で、一番小さい子がぼやきながら手を動かしていた。その不慣れな手つきから、昨年までは遊んでいた年齢なのだろうと推察出来る。


「そうねぇ、難しいわねぇ。学が学べる環境整備も出来たら良いのだけどねぇ」


 どうせなら、前世日本に近い環境にフルールは持っていきたかった。

 ただ、知識のない分野を闇雲に広げるわけにはいかない。発言には責任が伴い、失敗が許されない立場にあったからだ。


「皆も私も一つ、一つ丁寧にしていきましょうね」


 フルールは己に言い聞かせるように、そう言ってしばらく作業を一緒にして過ごした。

 前世から培ったものを惜しみなく使って目指すのは、見下してきた人へ見返すための美の追求と悠々自適な老後だ。


 ――その為には、見て見ぬふりじゃなくて可能な限り良くしていかないと。


 いくら外見が綺麗に保てても、利己的な人間になってしまえば心は醜くなってしまう。

 それは、フルールの求める美ではなかった。


「――さて、本当は軽く洗ってパリパリに自然乾燥が良いんだけど。今回はヒゲ茶を紹介しなきゃだから、軽く炒って焙煎しちゃって。数分煮出して試飲といこうかしら?」

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― 新着の感想 ―
トウモロコシの芯のお茶なら知ってるけど、ヒゲもお茶になるのかぁ。
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