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【一章完結】「好きにしていい」と言われたのでハンドメイドコスメを始めました ~ドライな妻が成り上がる一方、旦那様は思ってたより捨てたものではないようです~  作者: 松平 ちこ
二章 いざスローライフの旅へ。楽をするための資源、人材確保編

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第10話 プレゼンの準備はしてきましたよ?

「では、乾燥とうもろこしの買い取りの件ですが……」


「ええ、これから収穫でしょう? 乾燥させて入れ替えた後の、古い余剰分を買い取りたいの」


 萎縮する村長の切り出しに、フルールがしれっと便乗する。視線が集まるのを受け止めて、微笑を浮かべた。


「村の収益になって、来る冬に備えられるでしょう、悪い話ではないと思うの」


「冬の手仕事もあるとか聞きました。そちらの分配は、こちらに一任していただけるので?」


 ――髭もじゃ。


 話しかけてきた男を見た、フルールの第一印象はそれだった。手入れをして整えたと分かる、見事なもっこり感のある白い髭だった。


「ここの村には約五十の家族が住んでいるわね、どう分配されるの?」


「冬はどこも物入りですからね、希望者に均等割りが無難でしょう」


「いやいや、それだと気弱なものは皆、遠慮してしまう、村全体でやればいい」


「ノルマにしてしまっては出来ない者も出るでしょう。皆、暇ではないぞ」


「目先の利益に囚われて、従来の仕事を疎かには出来ん」


「冬が越せない家だってあるんだ、受けられる仕事はありがたく貰うべきだ」


 フルールが訊ねると、堰を切ったように口々と話が始まる。

 その声を聞き分けて、ちらり、ちらりとフルールは観察する。


 ――髭もじゃは利潤派。一番若そうな男が、うん革新派ね。優男っぽいのが穏健派かぁ。


「これ、口々に話しては進まんじゃろう。ご夫人の前だぞ、お前たち」


 村長が汗を拭きながら、そう嗜めた。それでも、思い思いに言いたいことがある様子が窺える。


 ――これだけじゃあ、平行線ねぇ。


「はい。じゃあ追加で話をさせてね。先ず前提条件として、村の負担にはなりたくないの。

 だから最初に、余剰分だけで良いとも言ったし、冬の手仕事としてだけでも良いのだけど……。

 やろうと思えば定期的な仕事として、永続的な報酬を約束するわ」


「お嬢様の気まぐれ、そんな口先だけで話をされても困りますね」


 仕事終わりというのに汚れた様子もなく、身なりが整っている。やや垂れ目で他の男たちに比べ線が細く、優しそうな印象だ。

 ただ、その穏健派の男は今、フルールに冷えた目を向けてくる。


「――ふふ、そうね。ここに来たのは確かに気まぐれよ、否定しないわ。

 ただ、お嬢様として育ったから当然、言葉には責任を持っているわよ。だって幼少から人の生活に与える影響は知っているもの。たった一言で変わることをね」


 背後のフィアビリテの気配がピシッと凍ったのを感じて、フルールは代わりに人差し指を立てて口元に当てると冷笑を返した。


「それに、私がここのとうもろこしの加工を使って、永続的な仕事の提供が出来るかどうかは、ヌフ……貴女を含めた何人かの村の女性がすでに、商品を使ってその効果をご存知だと思うわよ?」


「――っ、あ、あの黄色はもしかして!」


「えぇ、どこか知ってる香りだと思ったら!」


「ちょっとお前さん、引き受けてくれよぉ。あれなら絶対に儲け話になるって」


 男たちから女性たちへと視線を移し、フルールが名を呼ぶ。カームに事前に聞いていた革新派代表の妻の名前だ。

 反応した女性へと視線を送り続きを話せば、半数の女性が夫へと話しかけている。


 ――カームはわざと、詳細を話さなかったのね。


 政治や経営に女が口を出さない、それはよくあることで、この村も変わらないらしい。

 使った商品の説明をその場でしても聞き流してしまったり、夕食会の前に家で話しをされて、変な思い込みや対策など立てられるよりよほどいい。

 純粋な興味、好感だけを女性たちに与えたカームは凄いの一言だ。

 フィアビリテから鞄を受け取り、フルールは中身を出した。カームに預けた残りだ。


「今日、私の連れが洗濯場で洗い物をしていた時に何人かお世話になったみたいね、ありがとう。

 それでその時に使った物のうち、これだけの物に、とうもろこしを使ってあるわ。

 これらを今後、領都の店舗で販売します。消耗品ですから、継続的な利益が見込めますの」


 とうもろこしのスクラブ入りの固形石鹸、コーンスターチをメインとした半固形の洗顔石鹸、フットパウダー、ドライシャンプー。

 見た目に分かりやすい石鹸を先に出し、最後に粉類を出した。


「コーンスターチ、とうもろこしを加工して作る白い粉ですけれど。この中で一番手間がかかりますから、製作報酬の単価を高く設定します。

 これには、貧困層の方々や子どもに請け負って貰いたいと言うのが、私からの要望ですわ」


「そうは言っても、お店が頓挫する可能性だってあるでしょう。食料品、餌と違って、娯楽品は飽きられたらおしまいです」


「あら、先日プレオープンしたら盛況でしたわ。すでに定期的な注文をいただいていますもの」


 相手が王太子妃とは言わない、雲の上の存在過ぎて話がそれてしまうからだ。


「男性方は、もっと具体的な物もほしいところでしょう。この中に字が読める方はいるかしら、書面でも用意してあるから配るわよ。読めなくても、口頭で一つずつ説明するから、最後まで小娘の話を聞いてね。

 乾燥とうもろこしの余剰分見込み、各手仕事の単価、得られる年間利益率、貧困層解消のメリットと懸念点の双方、現状の村の問題点と課題、ざっとした項目はこんなところなの、楽しみね?」


 プレゼン本番、お腹からしっかりと声を出すためにフルールは立ち上がる。フィアビリテがサッと椅子を後ろへ引いてくれる。

 フルールが見渡せば、小難しい話が始まるのかと感じた女性陣は明らかに興味関心を失っていた。


「それから、商談が成立した暁には納品のやり取りの際に、これらの製品化した物の注文販売を割引価格にて受け付けるわ」


 従業員であれば、社内販売、社内割引は福利厚生であって不思議でもないだろう。納品のやり取りでまとめれば、行き来の手間が増えることもないからだ。

 店に行かなくても買える――気づいた女性の何人かはピクリと反応していた。

 フルールは含み笑いをして、口火を切った。

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