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【一章完結】「好きにしていい」と言われたのでハンドメイドコスメを始めました ~ドライな妻が成り上がる一方、旦那様は思ってたより捨てたものではないようです~  作者: 松平 ちこ
二章 いざスローライフの旅へ。楽をするための資源、人材確保編

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第6話 押しかけた先で、狙い通り滞在することになったけど……

「フィアビリテが、ここを選んだ理由が分かったわ……」


「その言い方、誤解招きませんかね」


「良いじゃない、今ここには身内しかいないわ。それに侯爵夫人として堅苦しい視察が目的じゃないから、ふらっと来た感じにしたかったのに、これは……」


 フルールがしみじみして言うと、フィアビリテが苦笑して笑う。

 じきに日が暮れるからと、案内された村の外れにある一軒の空き家。

 その室内を見渡したフルールは、すぐに住める設備と、ほどよく行き届いた清掃具合に驚いた。定期的に手入れされてる証拠だった。


「でも、奥様の希望通りですよね。とうもろこしを生産していて余剰がある村。少なくない数の子どもと貧困層がいる。新しい事業を始める基盤作りも可能」


 村人が居ないからと、フィアビリテはいつもの調子で喋っている。

 初対面から馴れ馴れしく、へらりとしていたこの男は、線引きが明白で一貫した姿勢を持っている。

 侯爵夫人と言うよりは常に、フルールを主ルゼルヴェの嫁として扱うのだ。


「そうね。商人も出入りしているから閉鎖的ではなくて、何かを始めるにしても取り入れやすい環境下にあって、モデルケースに適しているといったところかしら」


 牛舎や貧困層のエリア、遠くの畑など都合の悪そうな所は見られなかったが、突然の来訪にしては村長の見回りの説明対応は悪くなかった。


「まぁ、あとはまともな主要農村なら、どこも泊まる所はこんな感じですよ。モンスター被害が出た時の騎士の簡易宿泊所を兼ねてるので」


「あら。領内は平和が売りと以前聞いたけど? 村長の態度から、もっと突然の来訪に慣れてるように思ったわ?」


 モンスターの被害で派遣されるなら、滞在期間は別にしても事前に来ることが分かっている。今回とは状況が違うので理由にはならないとフルールは考えた。

 するとフィアビリテは、言葉を選ぶように思案しながら白状する。


「……確かに、学生時代のルゼルヴェが、長期休暇の度に領地を巡った過去もありますね。ちょうど奥様と同じ感じで、先触れ無しに」


「仕事人間で生真面目が売りな人が?」


 領都の宿屋の女将もルゼルヴェのやんちゃ時代を仄めかしていたが、フルールはいまいちイメージがつかない。似てると言われるとさらに、だ。


「だからですよ。前侯爵夫妻が領地経営を放置していたので、ルゼルヴェが引き継ぎするに辺り、不正がないかの裏取りは全部抜き打ちするしかなかったんです。

 ま、ほとんどがキチンとしている方々だったので、今もこうして家も管理されてますけどねぇ」


「よく腐敗しなかったわね」


「そこはあれです。内部が腐ったら、前侯爵が守ってる前線も崩壊する。結果として、領地がモンスター被害に遭うって皆分かってたんですよ。

 領境の山と森は、モンスターの巣窟ですからね」


 不正が蔓延り、一部が得をする状況になれば、領内の税収が減り、対モンスターの経費不足に陥る。それでは確かに死地と化すだろう。

 新しい領主が就いたとして、安全と領地経営の天秤が揃うかも不透明なら、確かに誠実であることが一番の長生きする秘訣だろう。


 ――天は二物を与えず、ね。


 話を聞くだけなら、領内の平和を堅実なものとした前侯爵は、モンスター討伐のために生まれたようなものだ。

 家庭と領地経営を蔑ろにしていい理由とは言えず、何度聞いても残念に思えてならないが。


「……短絡的な人が居なくて、幸いだったってことね」


「まぁ、それでも見て分かるほどには、全く犯罪や貧困がないってわけじゃないですけどね。少なくとも今のルゼルヴェの直接雇用での管轄範囲は、不正は無しですね」


「侯爵様になってから、貧困は減ったもんねー。前はもっと、浮浪者多かったもん」


 フルールが感想を述べ、フィアビリテは呆れたように笑う。そこへ室内の点検、ベッドメイクをしていたカームが戻ってきた。


「で、奥様これからどうします?」


「今日の晩餐は断ったし、早ければ明日、村の重役たちから回答を貰えると思うのよね。それまでは村長に話した通り、子どもたちと遊ぼうかしら」


「フルール、一日遊べるの? 子どもたちの体力すごいよ?」


 フィアビリテに訊ねられ、フルールは泊まることになった経緯をおさらいする。

 商談の回答を聞くだけなら後日の来訪でも良かったが、村の交流、子どもたちの教育、せっかくなので滞在することにしたのだ。

 カームが気遣わしげに窺ってくるが、フルールはさらりと返した。


「あら、カーム。そこに運動担当が居るから、心配要らないわよ?」


「あ、やっぱり頭数入ってましたか」


 フルールがフィアビリテに責任転嫁すれば、彼は予想通りだと笑う。むしろ頼み事を断る姿を見たことがない。

 ルゼルヴェの隣にいるとなると、これほどまでの柔軟性を求められるのかもしれないと思うほどだ。


「カームには、持ってきた石鹸とか自由に使っていいから布教しといてくれる?」


「任せてー、お店じゃないしね。二日もあれば、村の女性陣には良さが伝えられると思う!」


 ただの平民上がりだったメイドはいつの間にか立派な営業として成長していた。

 その頼もしい返しに、フルールは明日が待ち遠しくなった。

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