表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一章完結】「好きにしていい」と言われたのでハンドメイドコスメを始めました ~ドライな妻が成り上がる一方、旦那様は思ってたより捨てたものではないようです~  作者: 松平 ちこ
二章 いざスローライフの旅へ。楽をするための資源、人材確保編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/63

第3話 新しいスタートの第一歩

「ズボンが履きたかったわ」


「フルール。山への採取ならともかく、今日は視察。人目のあるところで、それはダメ」


 馬車の中でフルールがぼやくと、向かいに座ったカームが即座に否定した。

 おかしい女性騎士も居る世界で、なぜフルールがズボンを履いてはいけないのだ


「この格好じゃ、馬に乗れないわ」


「乗せないための格好ですからね」


 ゆっくりと通りすぎていく外の景色を眺めながらフルールが言うと、輝かしいほどの笑顔でカームに返された。


「……カーム、どんどん遠慮が無くなってきたわね?」


「会長を正すのも、部下の務めだから!」


 張り切っているのがとてもよく分かるが、フルールとしては大変複雑である。


『じゃじゃーん、開店祝いを預かってきました!』


 打ち上げの買い出しに行っていたフィアビリテが、乾杯の後に広げて出したのは二通の書類。それをフルールが受け取ったのは、もう一週間くらい前だろうか。


『あ、侯爵様ちゃんと手続きしてくれたんですね!』


 いつも旦那様呼びだったカームが、呼び名を変えたことにフルールは引っ掛かりを覚えた。その疑問がすぐに解消したのは、出された書類だった。


『暇ください! って言ったのにスルーされたから、気がかりだったけど、杞憂で良かった~』


『ちょっと待って、これカームとガルドが従業員として商会に登録されてるわよ!?』


 嬉しそうに笑うカームに、驚いたのはフルールだけ。見ればガルドも顔が綻んでいるし、フィアビリテに至っては全部知ってるという顔だった。


「何も私を商会長として、仰がなくても良いのに……」


 必要事項を書いた後は、ルゼルヴェに投げていたから、どっきり企画も良いところだった。

 それで特段何が変わったということは無いのだが、彼らからの距離感が気持ち近くなり、フルールも無下にできなくなっていた。


 ――下の意見を聞くのは、上の務めだものね。


 本邸に帰ってと伝えた時に、ただのフルールでも良いと慕ってくれた彼らだ。商会の従業員として、身元が保証されるのは良いことだろう。

 路頭に迷うことがないように、フルールは生計を立てるだけだ。


「これからフルールには、必要な場面ではちゃんと着飾ってもらうから。舐められないためにも必要なことだから!」


 そう宣言したカームは、フルールのことをよく熟知していて一枚上手だった。着替えの服を一揃えのみにして、選択肢を潰してきたのだ。


「じゃあ、そうでない場合は、いつもと同じでいかせてもらうわね」


 折れどころだろうと、フルールは線引きをした。ズボンはダメだがそれ以外なら、というカームの配慮に気付いているからでもある。


 ――貴族だからってドレス! じゃないだけマシよね。


 今の服装も、デイドレスではなく品の良いワンピースだ。刺繍や飾りが要所要所に施されていて、見れば自ずと身分が分かる仕様になっている。

 家ではもっと質素な服を着ていても何も言わないのだから、言葉通り場に合わせろという至極全うな意見だった。


「フルールの場合、お忍びとか無理だと思うから仕方ないよ」


「お忍びどころか、私はもう十分に庶民に馴染んだと思うのだけど?」


 こてんとフルールが小首を傾げると、カームがゆるく編み込んでまとめてくれた髪が揺れた。カームがそれを見て、なぜか嘆息する。


「いやいや、侯爵様袖に振っても、フルールは若手新人の商会長だから」


 そんなやり取りをしていたら、コンコンコンと小窓からノックされた。従者として馬の手綱を握っていたフィアビリテだ。


「奥様~。そろそろ休憩挟もうかと思います。横乗りで良いならちょっとだけ、馬にも乗せれますよ」


 中での会話も、彼にはバッチリと聞こえていたらしい。女性の会話を盗み聞きとはいかがなものか。いや、普通に提案してくる辺り盗んではいないのか。


「そこまでは別にいいかしら」


 好奇心から馬に乗りたいのではなく、移動手段として馬に乗りたいのでフルールは断った。それからやや声を潜めて、カームに訊ねる。


「……もう少し防音性あげる?」


「そうなると、フルールの趣旨から外れそう」


「どうして馬車って機能性と華美が比例してるのかしらね?」


「お金持ちはほら、見映えも大切だから」


「馬車の中で、わざわざ井戸端会議しなくても良いんじゃないですかね、二人とも」


 軽いノックの後、カチャリと開いた馬車の扉から、フィアビリテが笑顔で覗いてきた。

 エスコートされて馬車から降りれば、僅かな木々とそこを流れる小さな川が目に入ってきた。


「ここ水場もあるんでちょっとゆっくりと休憩して、このまま行けば、エルヴァージュ地方にはお昼頃かなってところですよ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ