表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一章完結】「好きにしていい」と言われたのでハンドメイドコスメを始めました ~ドライな妻が成り上がる一方、旦那様は思ってたより捨てたものではないようです~  作者: 松平 ちこ
一章 嬉々とした出発、目指せ美のスローライフ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/66

第41話 旦那様にも、テンプレ的やんちゃな時代があったらしい

「ここだ」


 ルゼルヴェの案内で訪れたのは、大通りから一本外れた、こじんまりとした佇まいの食堂だった。

 昼の鐘がなり、商業ギルド前に食事をしようとなったのだ。


「おや、ルヴェ坊じゃないか」


「坊、はやめてくれ。今日は連れがいる」


 ルゼルヴェが先導し、中へと入れば店内を行き来するエプロン姿の女性と目が合った。


「……っ! まぁまぁ、いっつも男しか連れてないルヴェ坊が、こんな可愛らしい方を連れて!!」


「おお! 女将、こいつはめでてぇな! 祝いをしなきゃなんねぇぞ!!」


「あんなに暗かったガキが……くぅ!」


「お嬢ちゃんかわいいぞー」


「え、あの……?」


 女将の声を皮切りに、何人かの男たちが嬉しそうに騒いでいた。

 フルールが困ってルゼルヴェの方を見れば、彼は怒るどころか諦め顔で照れたように笑っていた。


 ――あら、そんな顔もするのね。


 テンプレ的な馴染みのある場所ということなのだろう。驚いたのは仕事人間の彼に、それが当てはまると言うことだ。


「お前たちに囲まれてはかなわない。落ち着ける席は空いてないか?」


「……二階へ上がりな。メニューはいつもので良いかい?」


「二人分頼む」


 残念そうな周りを置きざりに、ルゼルヴェは右手側にある階段へ進む。

 上がった先には小部屋が幾つかあり、その手前の部屋へと入る。窓際の席を勧められて、そこから街の景色が見えた。


「……少々騒がしい連中だが、君にはこちらの方が合うと思ってな」


 ルゼルヴェが剣を側の壁に掛けると、テーブルの向かいに座り、足を組んだ。


「確かに、堅苦しいだけのところよりは……」


 領都に来るに辺り、フルールは普段使いのワンピースより、少し質のよいワンピースを着ている。髪もカームが結ってくれた。ルゼルヴェと出掛けることは、少し不満げだったが。


 ルゼルヴェの装いは、以前は身なりの良さが滲み出ていたが、今回の来訪では完全に周囲に溶け込む質素なものに変わっている。


 これで裕福層向けの店に行けば、服装が浮いているに違いない。

 庶民らしくないのは、二人揃ってその髪質と肌艶くらいだからだ。


「ずいぶんと、慣れておいでですのね。意外でしたわ」


「別邸にいた頃は、フィアビリテと共に領都によくおりていた。学生時代も休みの時はたまに顔を出していてな。

 ここへはよく食べに来ていた。子どもだからと追い返されず、皆、ああだからな。邸に居るよりよほど良い」


「旦那様は、昔から自由奔放でしたのね」


 窓の外を見て、フルールは相づちを返した。中央に高く見えるのが、先ほど鳴っていた鐘だろうか。


「……君は?」


「はい?」


 窓の外を眺めて、街並みを堪能していたらルゼルヴェに声をかけられる。外を眺めたまま、意識を少し彼に向けた。


「君も、そうだったのではないかと思ってな。領民を気にかけ、普通に接し、考え方が身分に囚われていない」


 そう言われて、フルールは初対面のルゼルヴェを思い出した。あれは女性不信だけでなく、貴族としての価値観の違いで遠ざけた可能性もあったのかと。


「残念ながら、私は普通の貴族として育ちましたわ。伯爵家ですもの、領民とは距離が元々近かったのです」


 貴族として生まれたフルールは、その枠から出ることなく育った。お転婆だった記憶もない。大人の手のかからない少女時代だ。

 馬車の事故をきっかけに、前世を思い出したに過ぎない。


 ――別人格というよりは、素直に前世持ちなのよね。どちらの記憶もしっかりしてる。


 一般的な回答を述べて、フルールは変わらず窓の外を見ていた。誰かに過去を打ち明けたところで、何かが変わることもない。

 だから、フルールは前だけを見ることに決めていた。


「……そういえば、視察に行くのか?」


「領内で私の事業を割り振るにあたって、地図だけでは分かりかねまして、見て回りたいなと思ってましたら、フィアビリテが視察と提案してきたんですの」


 ルゼルヴェが、わざとらしく話題を変えてきた。気遣いを認めて、フルールは正面に向きなおるときちんと答えた。ここから先は事業に関することだったからだ。


「フィアビリテとはずいぶんと仲良くなったようだな、よく出掛けるのか?」


「旦那様のつけた護衛ですから、どこでもついてくるでしょう?」


 彼は今、馬車と馬の番をしていて、この場にいなかった。

 少しだけ面白くなさそうなルゼルヴェの反応に、フルールが冷めた対応をする。


「接待を受けたいわけではなく、現状を見て回りたいだけですので、フィアビリテと気ままに領内を回るだけですわ。

 まさか、ダメとは言いませんよね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ