SS 40話その後 ドレスをおねだりしました
「あら、あら!? まぁまぁ、まぁぁあ!!」
ルゼルヴェに連れられ入店した服飾店。声高なテンションに圧がないのは、フルールの目の前に駆けてきたマダムが、とても小柄だったことが幸いしたかもしれない。
「あのルヴェが、淑女をお連れになったわぁぁあ!!」
両手を丸くぷっくりとした頬に当て、マダムはとても驚いていた。
金の髪を両サイドで結ってお団子にしていて、ピンクのドレスが可愛らしい人だった。
「マダムアンスリウム。彼女のドレスを数着頼みたい。一着は急ぎだ、既製のサイズ直しで良い」
「旦那様、一着で結構ですわよ?」
「新年の宴込みだ。……それに、茶会にも出るのだろう? 今から仕立てておくに越したことはない。適当に済ませるつもりはないぞ?」
隣のルゼルヴェがマダムに話しかけ、フルールはツッコミを入れる。ルゼルヴェはしごく真面目に答えた。
「……忘れてましたわ」
「だろうな。君も、何度も手を取られる方が嫌いだろう。ここでまとめて済ませておけば良い」
前世の服の手軽さで、すっかりと忘れていた。いや、意識してなかったともいうだろう。前世を思い出してからの夜会など、家にあったドレスを着ていたのだから。
「お話はまとまりましてぇ? 先ずは自己紹介を、アンスリウム服飾店のアンスリウムですわ。お見知りおきくださいませ、奥様。
ではでは、奥様はさっそくあちらで採寸を。ルヴェはそちらでお座りになって、待つと良いですわぁ」
「生地のサンプルと装飾品はあるか?」
「ルヴェも仕立てを?」
フルールは、いつの間にか側に現れた若い女性たちに案内され、店の奥へと連れていかれる。ルゼルヴェとマダムは、何やら話を続けていた。
「ああ、宴用に一着は揃いでデザインを頼む。それと、何もしないで待つのも、な。だから色々と見せてくれ」
「んまぁぁあ! 最近の流行を分かっておいでね! ルヴェったら、女心が分かるようにもなったのねぇぇえ!」
マダムの声だけが、建物内に響き渡っていた。
ドレスの出来上がりと合わせた訪問の日。服飾店で最終チェックと着付けを済ませ、出発することになった。
「……既製品のドレス、ではなかったのですか?」
「マダムアンスリウムが張り切ってな。手を加えたそうだ」
ルゼルヴェは、サントュールの砦でよく見かけた騎士服を着ていた。
そしてフルールの方はというと既製品でありながら、ドレスの色味はルゼルヴェの二藍の髪を思わせるような藍色だ。
――ドレスの方が濃い色だけど薄めたら多分、旦那様と……。
さらに彼の雄黄の瞳と合わせたのか、騎士服の意匠と同じ要素が所々黄色であしらわれている。装飾品も金だった。
「ふふふ。サントュール邸に伺うとルヴェから聞きましてよ! ならばこそ、ただの既製品で終わらせてはなりませんわぁぁあ。もっと早くお申し付けくだされば、このアンスリウム渾身の出来をお納めしましたのにぃ、無念!」
「……旦那様、何を伝えたんですか」
「いや、ありのままだが?」
ご挨拶に伺う若夫婦と思われているのだろうか、フルールがそうルゼルヴェに聞くと、彼は首を横に振った。
「仕立てる揃いの装いは期待しててくださいまし!! サントュール侯爵家御用達の名に恥じぬ物を、ご用意いたしますからねぇぇえ!」
マダムはとてもよく聞こえる声で、出発し遠ざかっていく馬車を見送っていた。
実は、フルールは他人の容姿に興味がありません。手入れ、清潔感などは見ていますが、一重や二重、ほくろや目つきといったものは全て個性は個性でまとめている性分です。
さらに相手にマイナスの印象があれば、気にもとめていないかと。なので、ルゼルヴェの容姿はこれまで美丈夫等とザックリしたものでした。
二章を執筆時に、ルゼルヴェの色を表記しようとして、作者も無いなと気付きました。一章の細部までうっかり書いてないか整合性チェックをするのに、書けるシーンが度々ありながら記載はせず話を進めていました。
確認が終わったので、SSとしてお披露目です。また昨日、二章36話をルゼルヴェの初カラー表記で改稿しています。この話以降も、チラチラと改稿して出すカラーを載せる予定です。
あとSSを一つ、三章前に予定しています(*´ー`*)
裏話でした。
ちなみにフルールの今はそうでもないですが、アルディとフィアビリテも同じ初回の印象がダメだったせいで現時点で表記がありません(笑)




