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【三章開始】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第46話 後始末のその先を

「……待たせたな」


「お茶を嗜んでいただけですから、お気になさらないでくださいな」


 しんと静まり返った室内で、ポツリとルゼルヴェが言った。カチャリとわざと音を立ててカップをソーサーへ戻し、フルールは微笑んで見せる。


「それで、今日はここにお泊まりに?」


 ルゼルヴェが明朝と言ったのだ。ならば、ここからどこかへ行くとフルールは思えなかった。


「いや、ここへは砦の者たちが来ることになっている。第一陣の見張り要員は、もう来ているはずだ。あとは、彼らに任せれば良い。私も、君も、ここでの用事はほぼ済んでいるからな」


 ルゼルヴェが手を差し出してきたので、フルールはそのエスコートを受ける。家に帰るまでが遠足なのと、同じことだった。


「お。お二人様、お帰り~」


「フィアビリテ。持ってきてもらった、あれって――」


「ああ、お渡ししてますよ。ただ、全部ではないですね。乗せきれなくて」


 馬車の前、フィアビリテが手を振ってきたので、フルールは思い出して確認する。

 王城からの使者へ渡す予定だった、手土産のことについてだ。問われたフィアビリテは、けろりとして答えた。


「あら? そうなの?」


「はい。馬一頭だったので」


「急ぎで来られたのかしら、騎士様には悪いことをしたわね」


 残して行ったことが不思議でフルールが聞き返せば、騎士は馬車ではなく単身でやってきたらしい。

 フルールは馬車の中へと足を踏み入れると、残った商品について在庫の確認をする。持ち運びしにくい瓶の多くを、この場へ残して行ったようだった。


 ――保存容器については、やっぱり要検討案件ね。


 前世の定番、プラスチックに似た物があれば良いのだが、残念ながらそういった類いは未だ見つけられていない。


「騎士はそれが仕事だ。案外、今ごろ上機嫌で走っているだろう。君が気にする必要はない」


 ルゼルヴェも馬車へと乗り込むと、フルールの向かいに腰をおろした。

 言われたことはよく分からないが、そういうことにしておこうとフルールは言及しなかった。


「一つ、というか、お伺いしても構いませんか?」


「――なんだ?」


「暇を出す使用人たちの中で、希望する者がいればですけれど、私、何人かいただきたく思いますわ」


 興味本位の話題よりも、こちらの方がよほどフルールには合っていて堅実的だった。

 使用人までその場で処罰しかねなかったルゼルヴェを止めたのは、暴君にさせないだけでなく、下心も過分に含まれる。


 ――仲裁した私は彼らにとってはさぞ、光に見えたでしょうね。


 侯爵家から暇を出される。それもまとまった数が――となれば、使用人たちへはそれだけで十分な罰になるだろう。曰く付きの者を雇う他家など程度が知れているからだ。


「確かに……、身元も、所作も即戦力か」


「はい。領都で常設店舗として運営が出来ますし、人材次第では会計管理も可能ですわよね。期間を決めて刑罰の代わりとでも言えば、仮に繋ぎとしても十分かと思いまして」


 ガラガラと馬車が動き出す。これから向かうのは、別邸から近い領都だそうだ。フルールの家だと、帰りが遅くなってしまうためだった。


「ならば本邸からも、君の商品を使い慣れた者を派遣すれば、店舗を運営したとしても君の手が空くな」


「本邸の者を駆り出しては、不満が出るのでは?」


 侯爵家の使用人ともなれば、下位貴族も居るはずだ。ルゼルヴェと関わりが深いらしい、ガルドやカーム、フィアビリテが平民というのは特殊な方だろう。フルールは、そう懸念した。


「……いや、本邸にない商品を試せるとあれば、希望者は居るはずだ。給金も出すことだしな」


 ルゼルヴェがブツブツと呟き、思案するように口許に手を持っていく。考える時の彼の癖だとは、打ち合わせを重ねる上で、フルールは最近気がついた。


「なら、店舗に携わる者には、貴族向けの商品のテスターにもなっていただけると良いかもしれませんわね。実際に使用する生の声は、集客と購買欲にも効果が見込めますから」


 実際に、前世では新商品を事前に社員が試した上で、販売する専門店などもあった。

 感想はそのまま接客で活かされたり、キャッチコピーなどカタログの面でも有益だったのだ。


「どちらにせよ、当人の意思を尊重で良いんだな?」


「罰の体裁を取るとはいえ、嫌々勤められてはコンセプトが違いすぎますわ。お客様にも失礼ですもの」


 ルゼルヴェの確認に、フルールも頷き返して同意をした。

 後日、本邸で希望者を募ったところ、女性使用人からは争奪戦が勃発し当番制にな ったことをフルールはルゼ ル ヴェか ら報 告されるこ とになる。


 また、別邸で悪事 に荷担した者は、選択. 肢を与えられることなく、解雇もしくは労役送りとなった。

 前侯爵夫人の指示に不可抗力だった者に限り、フルールの案が採用されたのだが、その全容をルゼルヴェが告げることはなかった。

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