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【三章開始】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第45話 旦那様、チェックメイトだそうです

ブクマ、リアクション、評価ありがとうございます!(*´ー`*)!

すごく増えてて嬉しさで顔がにやけました!

「主の愚行を忠言するのもまた、使用人の仕事だぞ」


 足元が凍りつき、身動きが取れずバランスを崩した使用人へ、ルゼルヴェは容赦なく言い放つ。

 肌を刺すほどのピリピリとした空気が、彼から発せられていた。


 ――あんまり、口を出したくないのだけど。


 部屋を二分するほどの目の前の氷壁に、使用人までとは、誰一人として逃す気が無いのだろう。

 やりすぎだと言いたいが、フルールはその言葉を一旦飲み込んだ。おそらく、初めてちゃんと立ち向かったのだろうから。


「……旦那様、それはやりすぎと言うものですわ」


「だが……」


 コツコツと隣へ歩いてきたルゼルヴェに、言葉を選んで進言した。フルールも言いたいことは言った。

 次がルゼルヴェだとも思う。けれど行きすぎた私怨を晴らせば、それは暴君になるだろう。


「棚上げも、矛先を見誤る のも、違いますわ。主に逆らえない使用人もまた、被害者でもありますもの。彼らには、それに相応しい処分がありますし。先ず第一にすべきことは、この向こう側でしょう?」


 フルールはふうと息をついて、静かにルゼルヴェを見つめる。今まさに、彼の言う愚行一歩手前では無かろうか。


「……ああ、そうだな。とは言っても、現行犯だ。手早く済ませることにしよう」


「ゆっくりでも構いませんわ。私、ティータイムを楽しみますので」


「よく過ごせるものだな」


 頭を振ったルゼルヴェは、微笑を浮かべ指を鳴らすと、使用人たちの足元の氷が音もなく溶けて消えた。いつ見ても器用なものだ。

 氷壁のすぐ側、フルールは冷えた紅茶に手を伸ばし、カップに口を近づけた。


「お邪魔でしたら、先にお暇させていただきますけれど?」


「いや、いい。ここで出ていかれるのは困る」


 おそらく最後になるだろう、ならば好きなだけどうぞと、フルールは気を利かせたつもりだったのだが、ルゼルヴェに断られてしまった。


「……あら、痛そう」


 懐に手を伸ばしたルゼルヴェが、同時にテーブル上の氷を取り払った。その向こう側を見てフルールは驚く。

 静かだとは思っていたが、まさか義母の口を氷で塞いでいたとはルゼルヴェの所業には恐れ入る。


「――っ!」


「前侯爵夫人とは言え、謂れの無い侯爵夫人への暴行が許されるわけではない。貴女が選べる選択肢は二つだ。

 一つは、この離縁状にサインをして修道院へ入るか。一つは、全ての罪を明らかにし罪人として刑を受けるか。さて、どうする?」


 血走った目でルゼルヴェを睨んだ義母は、氷を外そうと手で踠いたのだろう。爪が割れて血が滲んでいた。

 さらにルゼルヴェが懐から取り出した離縁状にはすでにアルディの署名が入っており、それを見た義母はさらに顔を憤怒で歪めている。


「――っ、はぁ! ルゼルヴェ! お前、よくも母に……こんな仕打ちが、出来るわねぇ!」


「母らしいことなど、一度もされていない」


「息子らしい可愛げも無かったくせに、何を言ってるのよ! あの人も、お前も、私にちっとも優しくしてくれなかったくせにぃ! もとはと言えば、あの人が出ていったのが全て悪いんじゃない! お前もそう、私の前から居なくなったじゃない! 私が悪いんじゃないわ! お前たち男が、全部、全部、悪いのよぉ!」


 氷が溶かされ、義母の真っ赤に腫れた唇が露になる。彼女は鼻息を荒くし、責め立てるように罵った。それに堪えた様子も見せず、ルゼルヴェは冷え冷えと返した。


「選ばせるだけ、親孝行だろう。ちなみに生家からは絶縁状の用意があるらしいからな。他の選択肢など存在しないと、思ってくれて構わない」


「お父様とお母様にまで!? お前ぇ、証拠もないのに有ること無いこと、でっち上げたわねぇ!? 私が悪いことなんて、一つもしてないわっ!! 手を下しても居ないもの! 全部、男どもが悪いのよぉ!」


 バンと、テーブルを叩きテーブルクロスを握りしめると義母は、ルゼルヴェを指差して忌々しげに声を荒げた。

 この短期間に生家という退路まで、すでに断っていたらしい。


「貴女と同じにしないで貰おうか。言っただろう。全ての罪を明らかにし罪人として刑を受けるか、と。

 それに、彼らならすでに爵位を譲渡して、今は隠居生活だ。現在の当主は貴女の弟だ。もちろん双方ともに同意を得ているがな」


 ルゼルヴェは淡々と、言葉を述べていた。ここへ来る前の動揺も、先ほどの怒りも、今は全てが見えず静かなものだった。


「故意に不当な噂をばら蒔いた王家への謀反、侯爵家への侮辱罪。侯爵夫人経営の営業妨害。侯爵夫人の誘拐の教唆、先ほどの暴行未遂。事細かに上げて良いのなら、地下牢にて書面でお渡しするが?」


「なによ、なによ、なによぉ! お前たちに罪はなく、私にだけ全てを押しつけると言うのぉ!?」


 ルゼルヴェはトドメとばかりに列挙して、義母を冷淡に見つめている。テーブル上の氷に阻まれ、こちらへ仕掛けることも出来ずに、ただギリギリと歯軋りをする彼女は髪を振り乱し向こう側で暴れていた。

 そして、それでも選択をしなかった。


「ちなみに私は侯爵家から罪人を出しても、痛くも痒くもない。前侯爵夫人の罪など、現侯爵夫人の功績の前には、ただの塵あくたでしかないからな。君なら、そうだろう?」


 話を振られると思っていなかったフルールは、数度瞬きをすると笑みを返した。

 離縁状には本人の直筆が必要だが、捏造することなど簡単だ。ルゼルヴェはあえて、それすらしないと公言したいのだろう。


「……まあ、前侯爵夫人の数々の前に、私自身が醜聞まみれですからね。一つ増えたところで、問題は何もありませんわ」


 使用人の処遇に関しては解雇するにしても、口を挟みたいことがフルールにはある。

 逆に前侯爵夫人に関しては、どれを選んでも表舞台に返り咲くこともなければ、今後関わることもない。


 ――義母の暴挙を防げなかった。その一端を汚名を被ることで、彼なりのケジメをつけられるのなら、反対する理由はないわね。


 フルール自身助けようとは思っていないのだから、ルゼルヴェの意向に沿うだけだった。


「そう言うことだ。急な話で考える必要もあるだろう。貴女には、一晩だけ自室で猶予を与える。

 それと執事長、使用人は全員、明朝までは通常通り職務に当たるように追って沙汰は出す。逃げ出そうとするのなら、それ相応の罰を追加で受けて貰うことになる。肝に銘じておけ」


「ルゼルヴェェェエ!! 私は悪くないわ! 悪いのは全部、全部、お前たちなんだからぁ!!」


 前侯爵夫人の雄叫びは、目配せしたルゼルヴェの指示で、使用人が総出で下がらせるまで続いていた。

一章にチラッと嫌な役で出てきた毒母。まさかのここまでザマァされるとは(; ̄ー ̄A

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