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【三章開始】「好きにしていい」と言った旦那様、ただのコミュ力ゼロだった~念願のハンドメイドコスメをしちゃいますね~  作者: 松平 ちこ
二章 領地経営に口出しします!

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第44話 旦那様が抜けた理由は……

「おい、下らん芝居はやめろ」


「えぇ~。前侯爵夫人も奥方も気づいてなかっただろう?」


 ルゼルヴェはほとんど近寄らないとは言え、別邸の間取りは頭に入っている。騎士を見送ろうとした使用人たちを下がらせ、二人で廊下を歩いていた。


「どちらもまともに社交に出ていないのだから、王太子など見ているわけが無いだろう」


「ちょっとルゼルヴェ、その言い方、傷つくから止めてよ。僕の知名度も支持率も無いみたいじゃないか」


 騎士の制帽子を取り、髪型を崩すとラフィネはイタズラが成功した子どものように笑う。


「こんなところまで来ていて、何を言ってるんだ? 暇なのか?」


「暇じゃないよ。お前の仕事もしてるんだから。スルスのところへ手紙が来たからね。

 横からすり替えさせてもらった。ま、スルスの真似事だね。今度は僕が種明かしするんだぁ。ま、僕も、奥方を見てみたかったしね?」


 ルゼルヴェはそれに呆れながら、気になったことを訊ねた。その為に、わざわざ見送りに出てきたのだ。

 対するラフィネは、無邪気に笑って答えている。


「彼女、良い子そうだ。芯がある目をしてたね。あ、スルスの方がもちろん綺麗で素晴らしい女性だよ」


 カラカラと笑い、ラフィネは人目も憚らずに話す。やましいことなど何もないと、帽子を手でくるくると回して遊んでいた。


「あとは釘指し。お前が手を抜くとも思えないけど、今回の件どうするのかと思ってさ。奥方がしっかりしていたし、杞憂だったけどね」


「……お前が、わざわざ?」


 玄関口に差し掛かり、扉を開ければ太陽が眩しく出迎えた。逆光になったラフィネの表情が見えなくなる。


「不穏分子を野放しにするほど、僕は甘くは無いよ。怨嗟が形を変えて、スルスに害を及ぼしたらどうするの?

 サントュール領はお前が以前掃除したみたいだけど、他領は越権になるだろ。なら、一線を越えた商会は、王家から新制度への見せしめとしてちょうど良いし」


 ルゼルヴェは眩しさに目を細めて、先に前へと歩き出したラフィネの背を追いかける。


「それに、お前が、というか侯爵家が本当に王家へ……なんてことになれば惜しいからね。ちゃんとするなら良いんだよ」


「なら、確かめた甲斐はあったのか?」


「じゃなきゃ、ここに一人で歩いてないね。お前が使えなかったら、奥方も僕がもらっていたよ。王城勤めとして召し抱えるためにねぇ。

 ほら、答え合わせが済んだら戻れよ。今頃二人がバチバチやってるはずだよ?」


 ルゼルヴェを振り返り、ラフィネは意地悪く口許に笑みを浮かべた。その目は未だ、品定めするかのような熱を宿し、笑っていなかった。


「若き獅子、王太子殿下にご挨拶申し上げます。侯爵夫人より荷をお預かりしております。ご同行願えませんでしょうか」


「やぁ、フィアビリテ。久しぶりだな。楽にしろ」


「助かる~。久しぶりで舌噛むかと思いましたよ。奥様から、王太子妃殿下に贈り物です」


 会話が一区切りしたのを見計らって、馬車の方からフィアビリテがやってきた。臣下の礼を取り、頭を垂れて挨拶をする彼に、ラフィネが許しを与えている。


「ルゼルヴェ、聞いたか? 奥方はやはり出来た人のようだぞ。目を離せば惜しいことになるだろうな? 戻らなくて良いのか?」


「先に失礼する!」


 そのやり取りを見ていたルゼルヴェに、ラフィネが再度含みを持たせて声をかけた。

 ルゼルヴェは挨拶も省略し、その場から立ち去った。向かうのは先ほどの部屋だ。




「あの人を立派だとか言わないで頂戴! 家族を捨てたのよ!」


 まだ距離があるというのに、廊下からでもはっきりと分かるヒステリックな声が聞こえた。

 それにビクりと身体が反応する。前へと動かした足が、どうしようもなく重く感じた。

 長年染み付いた癖はそうそう抜けないらしく、ルゼルヴェは小さく笑い、失望の念を自身に抱いていた。


「ルゼルヴェをご覧なさいな。父として慕わずとも、前侯爵としては尊敬していますわ。貴女よりもよほど子どもの、彼の方が中身はとても立派で気品がありますわねぇ?」


「この――っ!」


 光が差すように強い声が、ルゼルヴェの背を押した。もつれるように動かした足が次第に速くなっていく。

 同時に、耳に刺さった声に警鐘が鳴る。急げと心が急いた。


「本当に醜い人ね。私が作る美容の品々は、心の清い方を後押しするためのものよ。すぐに癇癪を起こす方になど、屈することは有り得ませんわ」


 辿り着いた室内、飛び込んできた光景に使用人は誰も止めに入っていない。あれほど苦手意識があった母は、醜悪で矮小な何かに見えた。


 ――あんなのが怖かったのか、私は。


 フルールがそれをまっすぐ見つめ返し、臆することの無いような笑みを向けている。

 ほんの一瞬、そのフルールの瞳が揺れた気がした。気のせいかもしれない。でもそんなことは今、どうでも良い。


「私の妻に触れないでもらおうか」


 まっすぐに前を見つめ、両者を隔てる氷の壁を築く。さらに使用人たちへ靴を縫い止めるように氷をまとわせた。


「侯爵夫人への数々の愚行、貴女方は何をしたか分かっているのだろうな?」

実は、今話で累計100話になりました。

記念すべき回を、旦那様が総取り……。


二章も終盤ですね。ブクマ、リアクション、評価いつもありがとうございます☆

この作品を少しでも楽しんでいただけたなら、 ぽちっと応援していただけると作者喜びます( *´艸`)

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