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第六話

大聖堂で起きた出来事はアヴィの帰郷を伝えている。オッドアイの少年もアヴィに会いに神殿へと向かった。

ソーヤの森

エリゼルド達は西側の森の中に入り、アヴィの氣を頼りに奥に進む。

「首都の森だけあって美しいですな」とルフェリトロールは言う。定期的に整備されている森は遠くにある木々まで見え、鳥の囁きが聞こえていた。

「姉ちゃん見ろよ。この湖、人魚が居るぜ」

ソーヤの森の中には湖があり、清らかな水が流れていた。

「姉ちゃ〜ん、人魚が居るって」ナポリはもう一度ベベルに伝える。

「ベベルさんは抜けてますからな」

「素直な子だからね。人魚に興味を抱かないだけだと思うけど……」

「どうかしましたか?隊長」ルフェリトロールはエリゼルドを見る。考え事をしていた。

「いや。取り敢えずアヴィの所に急ごうか」

エリゼルド達はアヴィの元へ行く。


アヴィは森の中央付近に横たわっていた。「アヴィ」とエリゼルドは走り寄りアヴィを抱えると「ごめん、皆」と謝る。

エリゼルドは人魚の罠にかかったのだ。

人魚は人間に化けて人間をおびき寄せ、悪戯をする事を好む種族。アヴィを抱えた瞬間目に見えない鎖が身体に巻きつき動きがとれなくなっていた。

「エリ君、どうしたらぁ」エリゼルドに触れようと近付くベベルに怒る。

「触るな。君までかかるつもり?少しは弟を見習おうか」とエリトは言う。

びくつくベベル。「師匠、ここは俺らにまっかせろ!人魚を懲らしめるぜ」

ナポリの笑顔は少し大人びて見えた。ベベルもナポリの成長に気付く。

「ナポリ、本も読むべきですよ。人魚は妖です。変に攻撃をすると隊長たちに被害が招く事もあります。確か尾びれの色でどのタイプか分かるはずです」ルフェリトロールの豆知識が役立つ。

ベベルはルフェリトロールの知識の幅の広さを改めて知る。小さな自分の手を見た。


「君には君の良さがある。気付いたのなら一つ前進したんだ」エリゼルドはベベルに言う。ベベルの目が潤む。エリゼルドはベベルが涙を流さないように助言を続けた。

「ナポリは夢に向かって一つずつこなしてる。君はどうだろ、僕に認めてもらいたい?それとも他に気になるものがあると思うけど」

「私は、エリ君のお嫁さんに…」エリゼルドの前にストンと座る。ナポリとルフェリトロールは人魚を捜していた。

「うん。僕の嫁さんになるにはどうしたらいい。まあ、ベルがいう俺の花嫁はどれを指す?」

「…隊長」ベベルはエリゼルド・クイックラインを示した。

「うん。俺はアヴィが好きだ。君の思いには答えられない」

ベベルは振られ、胸が締め付けられるような表情をするがエリゼルドを諦められない。

「ガーゼレビアさん」とベベルはエリトを示す。

「僕は初めて会った時からアヴィを想ってる。悪いね」ベベルはエリトに何か話そうとしているが、言葉が詰まって出てこない。

「認めてもらうにはどうするべき?

魔法札にするのか、魔法に戻るのか。そう言うのも含めて考えるべきだ…いい?」

ベベルは頷く。「ナポリとルーの所へ行って手伝っておいで」エリゼルドの声かけによりベベルは二人の所に行く。三人は手掛かりを探す為に左の道へ進んだ。


「行った?」エリトに声を掛ける。

「君て子は…本当に心配したんだからね」とアヴィに返す。笑うアヴィは起き上がるとエリトに押し倒された。

「最後まで演技してもらおうか」エリトは真顔で言う。エリゼルドはじっとアヴィを見た。

「アヴィ、来てはだめとはどう言う意味?」練習場で浮かんだアヴィについて尋ねた。

「私は何も…」

エリゼルドはアヴィを見る。何も隠してない様子。「僕の勘違いか」


「人魚のせいにしてるけど、倒したらどうするのさ」

「大丈夫。ちゃんと適任者用意してるから」アヴィの中ではシナリオが出来上がっていた。

エリトは楽しむアヴィを見る。

「お手柔らかに頼むね」エリゼルドはアヴィのシナリオ構成の難易度を気にしていた。

「赤きの為」とアヴィ。

「まあ、無事ならいい」エリゼルドは膝に肘をつく。エリゼルドは笑う。その笑みは赤き翼に哀れんでいた。


「どぅ、わあ⁉︎」

ナポリは急坂に転び落ちる。

「きっと落ちてる所だと思うんだ」とエリゼルドから膝枕をされるアヴィは展開を話す。

「うん。君の庭みたいなものだからね」エリゼルドは三人の身体の骨を気にしていた。


「ぷぅ」

ベベルは両側に咲く花から糸を振りまかれ全身にまとわりつく。「ベトベトするぅ」

「で綺麗な花だから危機感なく通り過ぎて液をつけられる」

「カンスの花だね。臭いがつくね。あまり触れられたくないな」エリゼルドにスキンシップをするベベルが帰ってきた時を気にしていた。


「これは珍味ではないですか」ルフェリトロールはキノコを取る。「無理だぜ」「わぁ…」

リハル姉弟は逃げ出した。キノコは動く。それはキノコに似た尾の先だった。何者か確かめる前にルフェリトロールも逃げ出した。

「でルフェリトロールはよく珍味本を読でるから、珍しいものに手にかけてキノコドラゴンに追われる」

「確か草食動物だったね」

「そう、ただ追われるだけ」

「君、空間魔法を使ったね」

空間魔法、ある領域に触れると別の場所に行ってしまう。

「落ちた瞬間は見逃せないよ」と笑うアヴィ。

「君て子は。だったら、演技はなしだ。様子見に行こう」エリゼルドはベベル、ナポリ、ルフェリトロールが落ちた空間は[森の域]と分かったからである。

「やっぱり、エリトも甘い」空間魔法がある所に向かうエリゼルドの背中を見ながら一人話すアヴィ。エリゼルドは「行くよ」とアヴィを呼んだ。


森の域

「ねぇ、ナポリ?なんか森の中変だよ〜」ベベルは整備されているソーヤの森と比べてここの木は伸び切った枝が多い事に気付いた。

「ベベルさんはやはりしっかりしてます。

ここは[森の域]と呼ばれる場所でしょうな」

ルフェリトロールは自分が発した言葉に自分が問いかける。「森の域ですか」

ルフェリトロールは来た道を見る。

「ははーん、ルフェリトロール。曲がった道間違えたんだろ?人にはぎゃんぎゃん言ってけどルフェリトロールが間違えると、しらばくれるんだぜ」

「まるでナポリだねぇ」ナポリは失敗すると隠す癖がある。それを探すのが上手いベベル。「そ、そんな事ないぜ」「んー、またやらかしたなぁ?」じりじりと迫るベベルに怖気付くナポリ。「ぐう…、どこの姉弟も姉には勝てないのかい」


クイックライン兄妹、セリカが強そうに見えるがエリゼルドから怒られないだけである。基本セリカは兄に忠実だ。「嫌われたくないよ」とセリカは言う。

「僕が兄で問題ない?」とエリトが言う。

プレッシャー姉弟、前回の件で姉に甘えている姿を感じ取られたリジン。姉に叱られる事はないらしいが…。

「姉ちゃんは弟思いだったはず?」と今のリジンは言う。

そしてリハル姉弟。

「もう少しお二人さんは落ち着きを得て欲しいですな」何だかんだ世話をしていたルフェリトロールが言う。


ぶんぶんぶんぶんと頭に浮かんだキョウダイ達を振り落とすナポリ。「やめてよー」とベベルはナポリの頭を掴もうとする。ボサボサになるまで頭を振るったナポリは「姉ちゃんが姉で良かった気がするぜ」と力を抜いた笑みを溢した。

「もぅ、誰と一緒にしたのぉ?」


「相変わらず緊張感がない姉弟だな」手っ取り早く魔法札[飛行]で森に向かい、三人に発見できない所で様子を伺うエリゼルド。

「仲良くていいじゃん。私は居ないから」アヴィはエリゼルドの前にかがんで見ていた。

「別に。アヴィは僕達が居るから問題ないよ」と不機嫌そうに言う。アヴィはエリゼルドを見る。見られているのに気付いたエリトはアヴィの頭を撫でた。

「な、何?」とアヴィ。

「…別に」不機嫌そうなエリゼルドはもう居なかった。


「森の域に長居は無用です。お二人さん、出口を探しましょう」

「師匠たちどうするんだ⁈」

「お二人なら自分達で解く事でしょう。それよりも暗くなる前に抜けますよ」ルフェリトロールはあっさりとエリゼルド達を捨てた。

「ナポリんとこのルーさんてぇ」

「ピット族だっけだな〜。やっさしいの」


歩くルフェリトロールについて行くベベルとナポリ。その後にエリゼルド達も続く。

「ふうむ」と考え込むルフェリトロールの姿に「バレた?」とアヴィ。

エリゼルドはアヴィの口を手で塞ぐ。「ベル達の声が聞こえない」

リハル姉弟は森の雰囲気に気付かず、話しで盛り上がっている。辺りを見ずルフェリトロールの後について行く。

「うおっと!」ルフェリトロールが立ち止まっていた事も分かっていなかった。

「面白い仲間手に入れたね」とアヴィの視線はベベル達だが、圧はエリゼルドにむける。

「うん。その為に森に来たんだ。会得して帰らせる」アヴィは三人を見離さないエリゼルドを見る。「いいよ。エリトが選んだから期待しても」と呟いた。

エリゼルドはアヴィを見る。「ごめん。聞き取れなかった」


アヴィは笑った。その笑いに釣られエリゼルドは苦笑いする。「前言撤回した方がいいかもね」と片目を瞑るエリト。

ベベル達の頭上から獣が降りてきた。ベベル達の身体が一瞬浮く。尻餅をついたベベルは獣をみて絶句。

ルフェリトロールは「ナポリ」を呼んだ。「お、おう」ルフェリトロールの隣まで走り二人は一緒に術を唱えた。

ルフェリトロールの毛色が白から青に変わり、額に模様が浮かびあがった。


ルフェリトロールは地面を蹴り獣の身長より高く飛ぶ。続けてナポリも杖を出し獣に直進。「チェンジ」と叫ぶ。ルフェリトロールは足が大きくなり、ナポリは杖がハンマーに変わる。「「ダブルクラッシュ」」獣の頭と左足に激突。獣は痛みにより怒り出す。雄叫びを上げた。「効いてないぜ」とナポリ。

「防御力が高いのでしょう。獣はグーゲンと呼ばれる者ですな。風属性が弱点です」

ベベルは慌てて加勢をする。「ま、任せてぇ!二人は一緒に打撃してっ!」

「んじゃまあ」ナポリは杖を地面に叩くと杖が反応し2本になる。「ルフェリトロール、いっくぜ」

「頼みましたよ、ベベルさん」とルフェリトロールは少し不安そうだ。


「風薫る、緑子よ。葉を立たせ奮起せよ。リーフドーー⁉︎」魔法を打とうとした時、金髪が視界に入った。パチンと指鳴らしをする。

「そのままルフェリトロール達に打ち込んで」

ベベルは「ラン!」と言われた通りに動く。

ナポリ達の素早さが上がった。

「風薫る、緑子よ。御霊のその記憶を」緑色の光に包まれるアヴィ。ベベルを中心に妖精達が時計回りに飛んでいく。ベベルの脳内が正しい組み合わせへと繋げていく。間違って覚えていた術を治していた。

ナポリとルフェリトロールは弾かれ、グーゲンの拳を喰らう。地面に引きずられた。


グーゲンは走りながら拳を後ろに構え勢いよく拳を突っ切る。周りの木々が騒めくように揺れる。拳と拳が重なり攻撃を止めるエリゼルド。

「ベル、アヴィを困らせるなよ」と横顔でベベルに伝えた。「エリ君…」エリゼルドの態度でベベルのやる気が上がった。立ち上がりエリゼルドの隣に立つ。「上出来」とエリゼルドは笑う。その笑みにベベルも表情が緩む。

「…やっぱり甘い」とアヴィは横目をやった。

「ナポリ」ルフェリトロールは次の構えをする。それにナポリも答えた。

素早さで速くなったナポリ達の行動についていけれないグーゲン。「柱、柱、柱、柱ぁ‼︎」と連続で魔法札を使うベベル。円柱を飛び伝うナポリ。最後の円柱に着けばグーゲンの後ろ頭の位置。狙いは完璧。柱に足が着く時に円柱が砕けた。

「へ?」ナポリは砕けた円柱と共に落下。ルフェリトロールは水属性の魔法でナポリの身体を水のクッションが救った。


ベベルは右手を出したまま立っているエリゼルドを見た。「エ、エリ君?」そのまま座り込んだ。「戦闘離脱するんだ」と上半身を曲げてベベルを見るアヴィ。

円柱を砕いたのはグーゲンではなく、エリゼルドだ。グーゲン自体も周囲を左右に見渡し何が起きていたのか分かっていない様子。

「どうしてっ⁈」ベベルが声を上げた事によりナポリ達も気付く。

「ベル、柱を全て置いたら上手くいくと?壊されるかもしれないを予想して動こうか」エリゼルドは戦闘の助言を言う。

「でもでもぉ、今、そんな事言ってたらナポリが」ベベルは言う。「…いい?」とエリトが返した。冷めた声がベベルを黙らす。


「師匠…」ナポリはポソと言う。ナポリは杖を握り締める。「dai」と杖を金棒に変え、ぐるぐると回り竜巻を作り出す。エリゼルドはナポリを見た。「まだ荒い」と助言する。

グーゲンは拳を上げるが振り下ろせない。

「悪いね。君が動くと間に合わないんだ。ここは協力して貰うよ」エリトの圧でグーゲンは身動きできない。


竜巻の巻き数が2倍、3倍と増えていく。ずずずと金棒がナポリの手から外れかかっていた。「今だね」と口角をあげてエリゼルドは言う。「サイクロン」と大声を上げグーゲンに激突。竜巻を抱き抱え耐え忍ぶグーゲンの背後にナポリは巨大化したハンマーを両手で持つ。「ビックドン‼︎」竜巻の中にグーゲンが入り、全身に傷が入る。ナポリは休むなく打ちのめす。更に変化した2本の杖で叩き込み留めの一撃を打ち込んだ。グーゲンは失神。

ナポリは誇らしげに立つ。ルフェリトロールはナポリの所に行き、共に喜びあった。


エリゼルドは喜ぶ二人の姿をみて笑う。地面から赤いヒビがひっそりと現れているのを知らずに。

それしん⑥やり遂げるナポリ

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