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第五話

コンコンコンと窓ガラスを叩く音が聞こえる。ヲルオテュクはカーテンを開けるとオッドアイの少年を見るや窓を解錠。少年を部屋に入れ直ぐにカーテンを閉めた。

「帰って来るのならひと言話して。

誰も見られてない?」閉めたカーテンを強く握り少年の顔を見る。

大聖堂の一件が終わった翌朝赤き翼は神殿の魔道具がある場所に訪れていた。そこにはリジンの姿はない。普段通りの会話するものの何処か歯切れが悪かった。

「エリ君、やっぱり辞めよー?」ベベルはアヴィに世話になる事を躊躇っていた。

「止めはしないけど、シバを追う事は辞めないよ」エリゼルドの内容は現実を突き刺す。

「降りたい人は今なら引き受ける」エリゼルドは赤き翼に選択肢を渡した。ルフェリトロール、ナポリは残る事を了承するが二人は濁らした。メルフィーナは消えたリジンを放っておけず何をするにも上の空。

「メルフ」と呼ばれ「何かしら」と話しを聞いていない事が多い。再度話すがメルフィーナは答えとは別にリジンの事を尋ねた。エリゼルドは何も言わない。


「私は赤き翼に恩がある。…どんな仕事でも付き合うわ」とメルフィーナ。

エリゼルドを見るとエリトを思い出す。するとリジンを思い出す。二人の関係性が勝手に浮かぶ。リジンが居ない事をエリゼルドのせいにしてしまう。そんな気持ちに蓋をする。メルフィーナの脳内は同じ内容を繰り返していた。

「シバを追うのは先になるから、良かったら暇やるけど。仲間を思う事は悪くない。行っておいで」

エリゼルドはメルフィーナの背中を押すが返事は三文字「いいえ」だった。ベベルはナポリが残るよう説得されていた。「強制はしない」とエリゼルドも何かと突き放す。

微妙な空気感が漂っているが赤き翼は一人を除いて欠ける事なく任務遂行を決める中アヴィが話しに加わった。

「生命はひとつしかない。ちゃんと分かってる?」と赤き翼に手厳しい。

「アヴィ、各自で決めた事だ。シバ関わらず生きて帰る事は常に考えてるよ」


エリゼルドはアヴィの左頬を触る。「大丈夫みたいだね」アヴィの体調が万全か確認した。

「メルフィーナ、朗報。多分腐ってない。用事を済ましに首都から出たけどね」アヴィはメルフィーナの精神を安定させる。内容は不明でもリジンが正常であればまだ良い。

「ありがとう」とメルフィーナは笑った。


アヴィは魔道具の棚を動かし隠れ扉を開く。

「入って」と赤き翼を誘導。

「魔法室と言うより実験室に近いですね」

「まあね、フルフレム族の技術をモデルに創られた場所になる」ルフェリトロールが嫌う種族だが考えようによれば使える事に納得していた。

「ふむ、卓上の知恵だけでは意味がない事を実感します。私達は知恵を絞り、形を作り上げる最後までやり遂げる事を心掛けてます。フルフレムはやはり無謀ですな」


アヴィは引き出しを開けると何百種類の札が保管されていた。

様々な材料を壺で煮て瓶詰めし蒸気の熱で蒸す。作りたい魔法によって属性や副作用等を併せ入れ更に加熱後魔法液が完成。魔法を閉じ込める札に液を染み込ませたら合言葉と魔法を魔法陣で閉じ込める。使用時に魔法陣にかけた合言葉を発すると魔法が発動する仕組みになっている。

持ち運ぶにも許可が要る。札が入っていた机の上には日付、使用者、魔法札、枚数、管理者の項目シート表が置いてあった。


「使うと言っても私を始め、限られた人しか使ってないかな。在庫切れにならないように使用者が使った分の札作りするから周りは面倒くさがるのが現実ね」

「でもでも、作り方を覚えれば長ったらしい術を唱えなくていいのならぁ、私は魔法札がいいなー」

「そう思うでしょう?説明したように魔法を作るにはこの本を覚える必要がある」魔法材料本と題名が書かれている分厚い本の中身には魔法の作り方が載っていた。その本を見るには試験を受ける必要がある。


「女神候補生になる事だよ」

ベベルはエリゼルドを見た。「すると」ルフェリトロールもすかさずアヴィを見る。

「残念。私は別」

「アヴィには特別な能力が備わってる。守られている理由は最近見たよね」とエリト。

「じゃあ、教えて貰っても意味ないじゃん。俺なんか男じゃんか!」[女神]候補生の為、女性しか神にはなれない。

「そこ、で、私の出番。推薦書を提出すれば女神候補生ではなくて、神官部門を受ける事が出来る。分かりやすく言えば、現人神の神官ね。女神か神官であれば魔法札の使用許可を得るから神官になる事を薦める」

花嫁になる夢を持つベベルにとって神官になる事は大きく目的が外れていた。ナポリは賢者になる夢がある。「神官の能力がありゃあ、滑石の賢者になるぜ」

賢者の分類は攻撃特化の金剛、魔法特化の滑石に分かれる。ナポリは金剛賢者を目指していたが滑石でも問題ないようだ。


神官は5段階の業務担当に加えて現人神と大聖堂と勤務場所により区分も変わってくる。神官と言えば現人神の神官が一般だが、神官になると大聖堂の神官が一般。業界に入ったら違うと言うのに近い為リジンが間違えたのも実は正しい。現人神の神官になるには現人神の神官の推薦書がなければ踏み入れる事が出来ない。現人神を護る為、現人神の神官が見定めた人のみ許された職種になる。現人神の神官であるアヴィも推薦書を作成する事が可能だ。


女神候補生は女神=現人神になる人物。候補生は女神になりたい人を指す。神通力が必須になるが一般人にも神通力を秘めている者が居る為、現人神不在を避ける為に予備として祀る事がある。神が生まれたら世代交代が基本。

「やはりアヴィさんも女神候補生になれますな」

「…ルー、踏み込んでいけない線があるのは知ってる?」アヴィはつっかかるエリゼルドを宥める。

「そうだね。私の場合は推薦で候補生になっただけ」アヴィの神通力は他の候補生より群を抜いている。次期女神と言われている程能力が高いが為に神殿に住み監視されている。アヴィ本人が候補生である事を嫌う為、現人神の神官として務めていた。

女神候補生は志願するものであり推薦で候補生になる事は例外である。

「凄い人だったのね」メルフィーナは感心していた。


「エリ君と出会ったきっかけはぁ?」

「俺はガーゼレビア家だよ?リグゥウアウンに仕えているから神殿の出入りは普通。まあ、リグゥウアウン自体が特殊だから傍に居ず自由に過ごす事が出来たから、アヴィに会う確率が上がったんだと思う」

リグゥウアウンはエリトを使用人扱いではなく弟、親友としてそばに置いていた。アヴィに会い親しくなった事で更に神殿の使用範囲が広がったとの事。

「隊長もすんげ〜」ナポリから見るエリゼルドはまぶしかった。「俺も隊長みたいに大物になるぜ」と張り切る。


「この辺で自己紹介は終わり。

どうする?受ける、受けない?」アヴィは神官試験を申し込むのか尋ねた。

「考え、させてください…」

「どうして?」エリゼルドはベベルが断ると思っていなかった。

「わ、私は花嫁修行してるんですぅ」ベベルは思いを伝えた。身体を左右にねじるベベルにエリゼルドは少し距離をとる。

「エリトの花嫁?」

「エリトさんと思わなかったけど、エリ君はやっぱりカッコいい」エリゼルドを見つつ話した。

「だったら、受けるべきだよ」と言うエリゼルドに「やっぱりエリ君、エリトさんなんだねぇ」ベベルの目はトロンとしていた。

エリゼルドも含め男達には理解出来なかった。エリゼルドの場合は話しを逸らすが今回は話しを拾う。

「エリトは女たらして事か」とエリゼルドの顔を見て話すアヴィ。

「何、言ってんだか。興味ないよ」エリトは溜息をつく。


エリゼルドの誘いでベベルも神官試験に参加する事に決まり応募用紙にサインをした。神官試験は日時、試験場所が指定されている事に対し現人神の神官はその都度試験を行う事が出来る。合格を貰うには3人の神官の内定が必要になる。

「私は推薦をした身だから私以外の神官に会ってお題を貰って」

ついてきてとアヴィはベベルとナポリを呼ぶ。エリゼルドは「俺達は別の部屋で待とうか」と別室に向かった。立ち去るエリゼルドを見送るベベルに笑顔を送るエリゼルド。ベベルが噴火した。

「エ、エリトさんてサービスいい」と火照る顔を両手で冷ます。ナポリは「姉ちゃん」と呼ぶが何かしらの身振り手振りをしているベベルに届かなかった。

「見守りましょうか」とアヴィは言う。数十分後ベベルは神官を目指す事を決意した。ベベルのやる気を見て少し笑みを出すアヴィ。「行きますか」と二人を試験官まで連れて行く。


「…初めまして、ベベル・リハルです…」

「ナポリ・リハルだ!」

二人は最初の試験官に挨拶をする。二人の挨拶を済ましても閉眼したまま微動だにしない神官におろおろする二人。ベベルはアヴィに助けを求めた。「カルナリア」と神官の愛称を呼んだ。

アヴィの声に反応したカルナリンスの瞳は赤い眼をしていた。

「…赤い眼…」ベベルはぽそと呟く。呟きは恐怖に近かった。


エアリス国では赤い眼は異端とされている。

赤い月が現れた日、世界を脅かした魔物が出現し世界崩壊寸前迄追いやられた。女神と女神候補生が命懸けで世界を守り切れたと言う。赤い月に似る赤い眼は不吉とされ災いを招く事から赤い眼を持つ人間を遠ざけるようになった。

カルナリンスは赤い眼を持つ異端とされ保護として神殿に入れられている。

「アヴィさま」とカルナリンスはアヴィに一礼をし再度目を閉じた。カルナリンスはアヴィが推薦した現人神の神官であり今回の試験官として務む事になった。


「では、お題は神官の心得になります。貴方様は神官とはどのようなものでしょうか」

ベベル達は優しい問題だった事に気が楽になる。「一人ずつ伺います。お好きに進めて下さいませ」

ベベルとナポリはじゃんけんで順番を決め、先手はナポリになる。

「神官とはエアリス国を守る現人神、カグナ様を守る人で現人神が居ないと困るように神官も居ないといけない人だ!」

「神官とは神に仕えし者。尊き存在。高嶺の花。憧れの的ぉ」

「一般的な答えで正解となります。神官になるきっかけはそのようなものです。私は異端の称号を頂き神殿に移りました。アヴィさまに出会った事がきっかけで神官になる単純なものです」カルナリンスはニコと笑う。

「では、次の質問です。神殿とはどのようなものでしょうか」

じゃんけんの結果ベベルが先手になる。

「はい、神殿とは神聖なる場所で踏み入れる事が出来ません」続きを話すベベルの言葉を遮ってカルナリンスは言う。

「そうです。しかし、貴方様は神殿に踏み入れてます。何故ですか」

「それはアヴィの姉ちゃんが魔法札を見せてくれたからだよな」とナポリが答える。

「アヴィさまは女神候補生になるお方。神殿に入る事を許されます」

二人は大神官リーシャの事を話した。

「成程、理があると。エリゼルド殿は立ち入り出来ませんが彼はガーゼレビア家のご子息と伺っています。ですので支障ありません。しかし、プレッシャーの弟、リジン殿は入れません。神殿に入る事が許されるのはアヴィさまとエリトさまになります。では、神殿に入った場合どのような処罰がくだりますか」

二人は見る。処罰内容を知っているのか二人は発する事が出来ない。二人は試験というより拷問をされている感覚へと変わった。


「二人の答えは自分が罪人になった事により処罰を恐れ黙秘をする、でしょうか」二人の態度を察し「神官になるには法律についても理解する必要があります。貴方様が神殿に入った理は例外にはなりますね。招いている相手がアヴィさまになりますから無罪です」

二人はアヴィを見る。笑って返すアヴィ。

「では、現人神の神官になるには犠牲を払います。貴方様は何を差し出しますか」

ナポリが答えた。

「犠牲は払わない。俺は賢者になる夢があるんだ!魔法札が手に入らないなら今まで通り金剛になるぜ」

ナポリの思いに引っ張られベベルも伝える。

「わ、私は花嫁になる為に好きな人の為に神官試験を受けましたー。犠牲が大切なものであれば私も受ける事はできません」

アヴィは笑って下を向く。カルナリンスはアヴィを見た。アヴィは頷く。

「第一試験は終了です。貴方様は」


ガチャとドアを開ける。エリゼルド達はベベルとナポリ、後に続くアヴィを見る。

「はやかったわね」

「…うん」ベベルは対面しづらそうだった。エリゼルドはアヴィを見る。

「私がはやまったかな」とエリトに伝えた。

「そう。二人共、お疲れ様」

「怒らないの?」とベベル。

「正直、怒りたいね。シバどうするのさが次に出てくる言葉になる」

「わ、私の場合は間違った呪文を正すことっ」

「そうだね、基本に戻る。いい事だと思うよ」エリゼルドの答えに安心感を得るベベル。

「俺は変わらず金剛になることに決めたぜ」

「夢を持つことは良いことだね」

エリゼルドの答えに頷くナポリ。

「ナポリ、今のままではシバに太刀打ちできないと隊長が話していました。力をつけるべくものを取り入れてみる時です。折角のお誘いを無駄にしてはなりません」ルフェリトロールはナポリに伝えた。

「けどさ、犠牲を払うんだったら意味ないじゃんか」

「そうだよぉ、そうだよぉ」とベベルもナポリの答えを重ねる。メルフィーナはリハル姉弟を見た。


「犠牲、か」思案するメルフィーナをアヴィが外に誘う。不機嫌そうについてきたメルフィーナは「どうしたの?」と言った。

メルフィーナの右手にネックレスを渡した。

「綺麗ね。私に?」

「リィンの形見」とアヴィ。

慌ててアヴィに返す。「違う。バカに渡してほしい」余計なことを口走りリジンが赤き翼に帰りにくくなってしまう事をアヴィは心配していた。

「あ」メルフィーナはアヴィの思いを理解する。アヴィは再度メルフィーナにネックレスを託した。

メルフィーナはネックレスを見る。リィンが亡くなった事を思い返した。

「リジンは、とっくの昔にリィンさんの事は吹っ切れていたんだね」とネックレスに語りかける。

「そう?」

「ええ」メルフィーナはリジンに寄り添っていた。その時に何かを感じとったのだ。「私の答えは間違ってないね」とアヴィは「バカに会ったら宜しく」と伝えると[飛行]の魔法札をメルフィーナに渡した。

「行きたいところを念じたら、人、場所、物、何処でも連れて行ってくれる」

魔法札の使い方を教えた後エリゼルド達が居る客間へとアヴィは帰る。

メルフィーナはその場に残り魔法札に願いを込めた。


アヴィが客間に戻った時にはエリゼルド側も行き先が決まっていた。アヴィはメルフィーナの事を話しエリトは今後について伝える。

「リハル姉弟の育成を僕がする」

「エリト、厳しいよ?」とアヴィはベベルとナポリに言う。

「師匠だから楽々だって!」根拠のない自信を持つナポリ。その姿にアヴィはナポリに鍵を渡す。

「使って」

鍵は魔法札が保管されている部屋の鍵だった。「時と場合、というより札がないと死ぬよ?」アヴィはエリトの腕に手を伸ばす。ガーゼレビアだったら容赦ないが、クイックラインなら…「エリ君でお願いしますぅ」「隊長でここは!」二人は同時に話した。

ルフェリトロールは「確かに命あってのものです。エリゼルドさん、ここは私からもお願いします」と頭を下げた。

「皆、甘ちゃんだね」

「いいんじゃない。少しはスキル上がるから」

アヴィの同意に三人は喜ぶ。

「君たち」とエリゼルドの態度を見た三人はアヴィの申し出を取り下げないよう猛反発してきた。

「アヴィを盾にしてどうするのさ。先が思いやられるな」左目を瞑り見逃すエリト。

「アヴィの姉ちゃん、使えるぜ」

「エリトに挑む熱意に譲っただけ」

「エリ君とワンツーマンでの指導ー。きゃああ」ぶんぶんと横に顔を振るベベル。

「しっかりして下さいよ、お二人さん。強くなってきてください」ルフェリトロールは二人を見守る。


神殿内練習場

「ベル、ナポリ。準備できたらいつでも」

「よぉ〜し、一本決めようぜ!姉ちゃん」二人はハイタッチする。

「これが、[泡]でー」ベベルの両手に20cm程の泡が泳ぐ。

「ほう、簡単に発動するのですか」ルフェリトロールは発動の仕組みをじっくり目で研究する。

「ベル、そのまま投げようか」

「は、はぁい」ベベルは思いっきり天井に上げた。ナポリはジャンプする。自慢の杖を出し泡に電気を入れ快速球を発射。エリゼルドは笑う。単なるステップで回避されるが「いいね。けど、攻撃場所が見えすぎる」と助言する。

「次」エリゼルドは次の攻撃の指示。「普段は俺たちが居るけど、居なかったら?動かないと君たちが防御側になるよ」

「まっかせろ!」ナポリは「dai」と言う。杖は金棒のような形に変化し「サイクロン」と叫んだナポリは回転しながら竜巻を作り出しエリゼルドに向かう。

「うん」竜巻の渦に触れ火花が出る。次第に竜巻の流れが逆方向に回った為ナポリは飛ばされた。「一緒に来てどうするのさ。竜巻単独、ナポリ単独で来ないと金剛にはなれないよ。ルーに頼って二人で金剛になるんだったら話は別だけど」

ナポリは跳び前転し「ルフェリトロールなしで金剛になるんだ!」「そうであってもらわなければ困ります」とルフェリトロールも言う。

「基礎からの教えになるんだね。

ルフェリトロール、私、少し出掛けてくる。この調子だと終わる迄には帰って来れる」とアヴィは練習場を出る。ルフェリトロールもその場で本を出し寛ぐことにした。


ベベルはもたもたしていた。エリゼルドは「柱」と力強く言う。ベベルの周りに円柱が3本立った。

「使わないとどんな魔法か分からないよ。魔法札の弱点はそこにある。君達の魔法は同属性なら応用きくが、魔法札はそこに刻まれた魔法しか出せない。[柱]は3つの円柱が出た。今みたいに敵の行動を塞いでも良し」エリゼルドは同じ魔法札を自分の床に発動する。

「俺の所に発動すれば高さが出る。行けなかった道に行く事も出来るし、上から攻める事も出来る。魔法と違って使い道を探そう…いい?」

ベベルはエリゼルドを見る。「エリ君、魔法札使えるのぉ?」

「注目点はそこじゃない。学ぶ気ある?まあ、実際使わなくても本に記されているけどね。けど、手元にないんだ。だったら、自分で魔法札を知るべきだ。いつまで甘える?」

ベベルの近くへ。「本当の僕なら解雇してるからね」ぶっ、「ベ、ベル」エリトは顔を拭く。

「ごめんにゃしゃい。エリ君カッコよすぎて鼻血が出ちゃう〜〜」「っと」エリゼルドはそのまま倒れるベベルを支えた。

「何なんさ。相変わらずなんだから」

「仕方ないぜ!姉ちゃんの弱点は隊長なんだ」

「そんなことで…まあ、いいや。ルー、ベルをお願い」ルフェリトロールの隣でキュン死にしているベベルを置きナポリのみの修行となった。

「姉弟揃って失望だけはやめてね。…アヴィに会いにくくなりそうだな」ナポリが居る方の目を瞑りエリトは言う。

「ふふ〜ん、俺が姉ちゃんの分までやるさ!」

「だったら、まずは氣の乱れを出すな。安定してからだよ」

「はいっ」

「返事だけは立派だよ」


大の字に寝っ転ぶナポリの全身は痣や傷だらけ。だが、ナポリはへらへら笑っていた。

「まあ、悪くないね」

「やったあ‼︎隊長の許しが出た!」大の字の手足を上に上げる。

「じゃあ、そのままで体力作りに励んでね」

エリゼルドの中では修行は終わってなかった。「そんなあ〜」と泣き事を言う。

ルフェリトロールは本を閉じる。隣にはアヴィは居なかった。エリゼルドはルフェリトロールにアヴィの居場所を聞くが、行き先を伝えずに出て行ったきり戻らないとの事だ。氣を探知するエリゼルド。「西側…」

「アヴィさんの居場所が分かるのですか」

「うん。俺達と違う氣が流れてる。まあ、気配を消してない前提だけで…」エリゼルドはナポリを呼ぶ。「はい!師匠」

「実践といこう」「へ?」

「西側は丁度森に位置する場所になるね。アヴィと合流しながら教えたことをしてみよう」


『…来ては、だめ…』

聞いた事ある声玉が聞こえた。エリゼルドはその声をアヴィだと感じる。

水中に閉じ込められているアヴィの姿が見える。だがアヴィの氣は森の中。エリゼルドは考えるより先にアヴィが居る場所を目指した。

それしん⑤魔法札と基礎

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