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婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 水無月カレン


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112/130

第112話 同じ手つき

 二つの束を、私は並べた。


 港を弱めた決裁の連なりと、私を追放した裁定の連なり。


 日付を順に並べる。


 ――重なっていた。


 偶然で、日付が、これほど揃うことは、ない。


 私は、二つの束を何度も見比べた。見間違いであってほしい、とどこかで思いながら。だが、何度見ても、順序は同じ物語を語っていた。


 港の管理権を締める決裁が動きはじめた時期と、私への疑惑が「発見」された時期が、ほとんどずれていなかった。


 同じ部署。同じ順序。同じ、名を残さないやり方。


 記録は、私がずっと信じてきたものとは違うことを語っていた。


 辺境の自立の手足を、王都が一本ずつ外していったあの時期。その最後の仕上げの一つが――私だった。


 辺境がなぜか妙に安定している。誰か、有能な者が裏で支えているのではないか。


 のちに王都がそう気づいて私を呼び戻そうとしたことがあった。失った“便利さ”に、後から気づいて。


 でも、それは順序が逆だったのだ。


 王都は、最初から知っていたのではないか。


 辺境を陰で支え、王都の行政をも陰で整えていた、名の出ない要がいること。


 そして――中央へすべてを集めるには、その要が邪魔だったこと。


 だから、消した。


 恋のもつれに見せかけて。聖女の涙で飾って。誰も、それを政治だとは思わないように。


 私の追放は、火遊びの結末ではなかった。


 火遊びは、隠れ蓑だった。


 私は、両手で顔を覆いたくなるのをこらえた。


 泣くためではない。


 ――ようやく、要が見えたその入り口に立ったからだ。

火遊びは、結末ではなく、隠れ蓑だった。

ここが、読者の皆さまが「要」と呼んでくださった場所です。

静かに、遡ります。

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