第112話 同じ手つき
二つの束を、私は並べた。
港を弱めた決裁の連なりと、私を追放した裁定の連なり。
日付を順に並べる。
――重なっていた。
偶然で、日付が、これほど揃うことは、ない。
私は、二つの束を何度も見比べた。見間違いであってほしい、とどこかで思いながら。だが、何度見ても、順序は同じ物語を語っていた。
港の管理権を締める決裁が動きはじめた時期と、私への疑惑が「発見」された時期が、ほとんどずれていなかった。
同じ部署。同じ順序。同じ、名を残さないやり方。
記録は、私がずっと信じてきたものとは違うことを語っていた。
辺境の自立の手足を、王都が一本ずつ外していったあの時期。その最後の仕上げの一つが――私だった。
辺境がなぜか妙に安定している。誰か、有能な者が裏で支えているのではないか。
のちに王都がそう気づいて私を呼び戻そうとしたことがあった。失った“便利さ”に、後から気づいて。
でも、それは順序が逆だったのだ。
王都は、最初から知っていたのではないか。
辺境を陰で支え、王都の行政をも陰で整えていた、名の出ない要がいること。
そして――中央へすべてを集めるには、その要が邪魔だったこと。
だから、消した。
恋のもつれに見せかけて。聖女の涙で飾って。誰も、それを政治だとは思わないように。
私の追放は、火遊びの結末ではなかった。
火遊びは、隠れ蓑だった。
私は、両手で顔を覆いたくなるのをこらえた。
泣くためではない。
――ようやく、要が見えたその入り口に立ったからだ。
火遊びは、結末ではなく、隠れ蓑だった。
ここが、読者の皆さまが「要」と呼んでくださった場所です。
静かに、遡ります。




