↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 水無月カレン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
105/130

第105話 枠

 王都に残した、数少ない伝手のひとつ。財務官補佐のセドリック・ヴェインから返書が届いた。


 私が問い合わせた、再統合案の進み方について。


 この返書を寄越すだけでも、彼には危険がある。それを承知で書いてくれた。王都にも、まだこういう人が残っている。


 その事実に少しだけ救われながら、私は封を切った。


 読んで、私は違和感の正体を掴んだ。


 再統合案は、緊急決裁の枠で進められていた。


 私が設計した、あの枠で。


 だが――中身が、抜けていた。


 期限は「追って定める」となっていた。切られていない。


 三者の承認は、形式上は取られていたが、監査官の欄が「兼任」で埋められていた。監査する側と、される側が同じ人間だった。


 事後の公開監査は、「機密に該当するため保留」とされていた。


 枠は、そこにあった。名前だけ、そこにあった。


 中身は、ひとつ残らず骨を抜かれていた。


 よくできている、と皮肉にも思った。


 どこにも違法はない。どの欄も、埋まっている。誰がこれを検めても、「きちんとしている」と頷くだろう。


 形が完璧なほど、中身が空っぽだった。


 私は、返書を膝に置いた。


 制度を作るとき、私は悪意のある個人を想定していた。速さに酔って暴走する誰か。それを止めるための枠だった。


 でも、私は想定していなかった。


 ――枠そのものを、盾に使う人間を。


 「きちんと手続きは踏んでいます」と言うために、手続きの形だけを残し、中身を空にする。そうすれば、後で誰かが責めても、「制度に従っただけだ」と言える。


 制度に従っただけ。だから、私は悪くない。


 私が作った枠が今、その言い訳の道具になっていた。


 この枠のおかげで、王都の誰かが今日も安心して眠っている。名を書かずに済んだ、誰かが。


 匿名の署名。骨を抜かれた枠。


 二つは、同じ顔をしていた。誰も負わずに済むための顔。


 私は、しばらく動けなかった。


 自分の手が、間接的にそれに加担してしまった気がして。


制度は、悪人を止められる。

けれど、制度を盾にする人は、止められなかった。

これは、レティシア自身の宿題です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。