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体育祭編・その2

 Side 藤崎 シノブ


 =お昼休み・一年A組の教室=


 昼休み。

 藤崎 シノブ含む一年A組は教室を控室代わりにしていた。

 

 まだ十月頭の暑さが残る季節に運動場で休憩するのはキツイと言うのもある。

 他のクラスの人間などがシノブと亮太郎に詰め寄ってのヒーローインタビュー状態になってしまうのもあり、関係者以外は立ち入り禁止扱いにして、出入り口は屈強な外国人の警備員が教室のガードについていた。

 日本人でなくとも、カタギに見えない外国人に近寄りたくはないものだ。

 

 異常な身体能力を見せつけたからと言って、化け物扱いされるワケでもなく概ねは「そんなに重りをつけて大丈夫?」と心配されたぐらいだ。

 重り以外にも自分に掛かる重力を上げる修行用のマジックアイテムとかも付けて色々と随時調整している。

 

(クラスメイトに恵まれてんなぁ自分)


 一部のクラスメイトからは避けられてるが、ここは地球の日本であり、命のやり取りが多かった異世界ではない。

それぐらいで済ませてくれるだけ立派な心の持ち主だ。

  

「お疲れ様。本当に重り付けてるのか疑わしいぐらいに凄いのね?」


 ふと、長い黒髪の爆乳美女、黒川 さとみが呆れたように言う。

 五十mの大きな建造物ぐらいのサイズの怪人を空高くぶっ飛ばせるような奴なのだ。これぐらいは出来るだろうと思う反面、少しシノブと亮太郎の心配をしていた。


「世の中には上には上がいるみたいだし、これぐれいは出来ないとね」


 異世界の仲間達や、闇乃 影司の保護者、大宮 優。

 地球に戻って来てから関わった事件にはあまり出張ってきてはいないが、邪神や魔王も力を抑えて日本橋に住み着いている。

 メイド喫茶ストレンジの店主、ヘレン・P・レイヤーも実力は未知数だが、旅の仲間ぐらいの大魔法使いぐらいはあるだろうと感じていた。

 

 それに今地球を襲っている相手が相手だ。

 強くなるに越したことはない。


「何か、合宿が怖くなってきたわね。首を突っ込んだ自分達が悪いんだけどさ」


 さとみは先日の事件――ハンドレッド事件を思い出しながら心の中で何度目かになる反省をする。

 一度目の少女A事件の時は何処か現実感が無かったが、二度目のハンドレッド事件の時、大阪日本橋で三勢力分の特撮物に出て来そうな敵戦闘員の大部隊に襲撃されて正直死を覚悟した。

 そのまま場の流れでゲートを境に自衛隊の駐屯地に突撃し、五十m級の巨大化怪人達が暴れ回る最終決戦場にまで乗り込んだ。

 ただの高校生達がである。

 シノブと亮太郎の二人が性質の悪い扇動者、偽善者呼ばわりされる原因にもなってしまった。

 その事をさとみは後悔している。


「まあなるようになるさ。人の噂も七十五日って言うし、半年も経てばそんな奴も居たなぁって扱いになると思うよ?」


「半年後に世界が存続していたらね」


「さとみさん、今日は体育祭だからそう言う話題はNGにしましょ?」


「え、ええ」


今日は折角の体育祭。

準備、企画協力など色々と奔走した行事だ。

客寄せパンダ呼ばわりされてもシノブは客寄せパンダを貫き通すつもりだった。


(異世界に居た時はもっと大変だったな。異世界と地球を比べるのもなんだけど)


異世界で勇者活動していた時も士気高揚や軍事費稼ぎのために色々奔走したものだ。

正直、自分が思っていた勇者活動とのギャップの違いで悩んで、亮太郎に文句言った時期もあったが、愛だの勇気だので腹は膨れないし、魔王を倒した後も世界が救われた人々の生活は続くのである。


その当時の事を考えれば体育祭で客寄せパンダになる事ぐらい、特に苦でもない。

女校長や担任、自衛隊や警察とも関係が構築出来るのなら安いもんだ。


「何か思ったより楽しんでるわね」


「今回の体育祭、裏で谷村さんと一緒に色々頑張ったからね」


 今の藤崎 シノブや谷村 亮太郎のネームバリューを駆使したパワープレイの成果でもある。

 その結果、日本橋の各勢力やガーディアンズ、I市の人達、警察、自衛隊、消防をも巻き込んだ一大イベントになった。

他にも様々な援助の手が広がっている。


「この流れに乗ってライドセイバーの映画出演も頑張るか」


「え、今凄い情報をさらりと」


 その話題に食いつくさとみ。

 彼女は特撮オタク、戦隊派戦隊ピンクに憧れている女子だ。

 どうしても気になる。


「ちょい役、ちょい役だからね?」


  シノブとしてもライドセイバーの格好して好き放題暴れた手前、断りづらかった。

 学校にも親にも許可はとってある。

 谷村さんは正直乗り気(特撮界隈への高いリスペクトゆえの遠慮)ではなかったが、ライドセイバーでの活動を大目に見て貰った礼として参加するようだ。

 


 =昼・運動場、スポーツチャンパラ=


 独自の競技、スポーツチャンバラが開始。

 頭にのっけた紙風船をスポンジ棒で割られたら負けと言う独自ルール。

 体育教師だけでなく、本職の自衛官や警察官が協力者と言う体で審判を行う。

 そう言った点でも独特の緊張感があった。

 今年初めての競技だが、原因は先日のシノブVS1年A組の要領で自分達も参加したいと言う声があまりにも多かった。

 それを聞いて悪ノリした校長が手加減、ハンデ付きなどの条件のもと、藤崎 シノブも快諾して参加。

 だが思った以上に希望者が殺到し、そこを校長が「チャンバラで決着つければいい」と言う形で、体育祭の競技として、申請されたチーム単位でケリをつける事を提案した。


 その中には1年A組の面々もいた。

 


 Side 黒川 さとみ


「いい!? 皆背中を合わせて、円陣を組んで迎撃に徹するのよ!!」


「絶対に単独で行動するな!! 二人一組で死角をカバーするように行動するんだ!!」


 と、一年A組は気合を入れて作戦通りに動く。

 罰則期間中に何度も何度もシノブや亮太郎に揉まれたA組たち。

 ハンドレッド事件で実戦を経験したのもある。

 そう言う事もあってか彼達に奇妙な一体感があった。

 

 そんな中で黒川 さとみは思った。

 藤崎 シノブと谷村 亮太郎との関りを経つか否かの話だ。

 そうすれば日常に戻れる。傍観者になれる。

 だが彼達も何となくではあるが気づいていた。

 絶対に正しい答えなどない事に。

 何処かで決断して水掛け論から脱却しなければならない。


(私の答えは決まってる)


 黒川 さとみは思う。

 自分のやろうとしている事は、言ってる事は間違いではないのかと。

 英永の言い分は、言い方はキツイが部分的には理はある。

 

(私はシノブの傍に居たいし、強くもなりたい)


 最後は自分で決断をしなければならない。

 だからさとみは決断した。

 強くなる必要はないかも知れないが、戦隊ピンクに憧れて、非日常に憧れて、日本橋でメイド喫茶でのアルバイトをしてまで生きて来た。

 天川 マリネの事件やハンドレッド事件に首を突っ込んだりした。

 死ぬような思いもした。

 それでも、考え方は変わらなかった。


『一年A組チーム勝利です!!』


『いや、凄いですね本当に!!』


 気が付けば、無我夢中で戦って勝っていた。

 その事に嬉しさはある。 



 インターバルを挟み、遂に藤崎 シノブ戦。

 藤崎 シノブは体力お化けでもあるらしく、疲れた様子は見せていない。

 重りに土嚢に加えてまだ暑い日差しの中で剣道の防具を付けている。頭には風船を載せていた。

 まだ部活対抗リレーは先の筈だ。

 そもそもシノブは剣道部所属ではない。

 亮太郎ともどもネクプラバトル部に入部したとは聞いているが、大なり小なり様々な事件に巻き込まれ、部活の禁止が言い渡されている状態だった。

 

(隙があるとかどうとか分からないけど、少しでも目を離したらダメ。変に距離をとっても詰められて終わる)


 これまでの経験からさとみは思考を働かせる。

 包囲作戦は何度もしたが、結局敗北している。

 一度に襲い掛かれる人数は決まっているし、シノブは後ろに目でも付いているのかと言うぐらいに攻撃は察知してくる。

   

(一回だけならこの方法で勝てるかもしれない……)


 後で怒られるかもしれない。

 だが勝つ方法はこれぐらいしかない。


『試合開始です!!』


 試合開始の音が鳴る。

 ゆったりとした落ち着いた足取り。

 これは罠で、隙あらば一気に距離を詰めて来る。

 縮地だとか、特殊な歩法とかを実戦レベルで行えるのだ。

 そもそもにして、その気になればパワーインフレが進みまくったバトル漫画のキャラみたいな動きも出来る。

 ハンデとして最初は手は出さないとかしてくれているのだろう。

 ある意味、それが最初の賭けだった。


 包囲が完成して、クラスメイトが数人掛かりで突貫した。

 審判が慌てて止めようとする。

 シノブは冷静に捌いて、一流の剣豪のような剣速で頭の紙風船を割る。 

 だが飛び掛かった勢いまでは殺せない。

 それを容易に避ける。

 包囲はまだ崩れてない。

 そこへ—―


『こっ、これは!?』


『武器を投げた!?』


 生き残ったメンバーでスポンジ棒を投げた。

 まさかの展開に会場はどよめく。

 急に決めた競技なのであり、細かいルールは決まっていなかった。

 後で教師に怒られるかもしれないが、それでもクラスメイト達は一矢報いたかった。

 当然、シノブは流れる様な動作でそれを迎撃していく。

 残りのメンバーはさとみを含めて既に駆け出す。

 倒されて転がっているメンバーも事故を装い、シノブの足に手を掛けたり、ヨタヨタとわざとらしくシノブの方に倒れ込む。

 卑怯である。

 ルール違反として敗北言い渡されても仕方ないレベルだ。

 まあそれでもシノブなら許してくれそうだと思ってくれた。

  

 弾かれたスポンジ棒は近寄って来た相手の頭部直情の紙風船を潰していく。

 困難な態勢にも関わらず、とんでもない神技を披露する。

 さとみは奇跡的に回避できた。

 何人かまだ生き残っている。

 スポンジ棒を拾い上げ、斬りかかる。

 

『決着!? かなりグレーゾーンな戦いでしたが……スロー再生してみましょう!!』


 会場はザワザワとどよめく。

 グレーゾーンなレベルのズル技。

 それを次々と己が技量一つで捌いてみせたシノブ。

 最後は片手で、利き腕じゃない方の手でクラスメイトを抱えながら捌いていった。

 だが動きはやはりと言うか鈍かった。

 藤崎 シノブの身体能力は驚異的である。

 だがそれは加減を間違えれば周囲の人を傷付けかねない諸刃の剣でもある。

 それを最大限利用して嵌めて、予想外の手を使って相手の紙風船を潰した。

 結果は—―


『僅差です!! 僅差でまさかのAチームの勝利です!!』


『あ、どうも藤崎 シノブです。ちょっとわりとグレーゾーンな戦い方をしてましたけど、今回は大目に見てあげてください』


 何時の間にか藤崎 シノブは放送席に移動して、1年A組を擁護する発言していた。

 喜んでいいのかどうかは分からない。

 ハンデもメチャクチャつけてもらって、それでグレーな手をつけた。

 それでもさとみは嬉しかった。

 会場が拍手と歓声に包まれる。 



 Side 藤崎 シノブ


 =部活対抗リレー=


 続いて目玉競技の一つ。

 部活対抗リレーが行われる。

 勝ち負け云々よりもコメディ色強めの競技。

 男子はやはりと言うか爆乳だらけでセクシーな衣装に身を包んだ女子プロレス部や漫画アニメ研究部に目が行っている。校長もよく許可した物だと思う。

 継いで注目を集めているのは—―審判役としてライドセイバーの衣装を着こんだ藤崎 シノブ、そして谷村 亮太郎だ。

 撮影会社に色々と大目に見て貰っており、今回はサプライズ、宣伝の一環である。


 観客も色々な意味で盛り上がる中、シノブの手でスタートの合図が行われた。

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