体育祭・その1
Side 藤崎 シノブ
=体育祭当日・早朝、琴乃学園の武道場=
(今日は何事もなけりゃいいんだけどな)
今日は体育祭当日。
藤崎 シノブ、谷村 亮太郎は基本は裏方である。
オリンピック選手が幼稚園の運動会に本気で選手として参加する様なものだ。
絵面的なアレコレで参加するのは無理である。
だが出禁にするのは教育機関として色々とマズイと思ったのか、可能な限りのハンデや重り、そして教師から手加減を要請されて運動会に臨む事になった。
マスコミの類はもちろんシャットアウト。
会場の警備は警察官、自衛隊、消防署などが配置。
そこにガーディアンズが穴を埋めるように警備する形である。
早速効果として動画配信者やら、不良やら不審者が捕まっていた。
爆弾を仕掛けたなどの脅迫を行った奴も対処済み。
何でも屋の闇乃 影司に依頼と言う形で警備についてもらったのも大きい。
後は無事に運動会を開いて無事に終える。
それを祈るだけであった。
藤崎 シノブは日課として武道場に赴き、清掃を始めとして一人トレーニングを積んでいた。
今日の稽古は流石に休みだと言うのに、準備運動と称して武道場には意識が高い武道系の部員達が集まって稽古を頼んで来た。
運動会と言うイベントが待っているので、加減はするつもりだ。
(本当に、皆イキイキしているな)
まるでテレビの中のヒーローだか、有名人にでもなったようだ。
じっさい藤崎 シノブの活躍は漫画やラノベの主人公のそれなのだが。
シノブや亮太郎の影響で、ライドセイバーとメタルヒーローのコラボ映画が決定したぐらいに今や世間的に評判があり、有名である。
藤崎 シノブ自身も向上心が高く、人柄もあってか琴乃学園の猛者達に受け入れられた。
シノブも最近は罰則とか云々関係なしに武道系の部員の面倒を見ている。
最近は武道系の部活の間でシノブと亮太郎の取り合いが発生している程だった。
☆
=朝・琴乃学園運動場=
早朝練習が終わった後、体操着を身に纏う。
教室で朝礼を追え、運動場に順次クラス単位で移動。
体操着姿で学生達は整列。
校長の挨拶に始まり、急遽生徒の代表として藤崎 シノブが壇上のマイクの前に立つ。
異世界から帰還してまだ一カ月、十月の頭ぐらい。クーラーを手放すにはまだ惜しい気候だ。
体育祭の飾りつけはガーディアンズの他に色々な方面から協力が打診され、ドローン撮影を通して巨大な液晶モニターに活躍を表示する方式をとるらしい。
女校長は女校長で色々とはっちゃけてしまったようだ。
(こう言う場面は異世界でもあったな)
あの時とは違って無理して士気を上げなくてもいいのが救いだ。
最低限しらけさせないように注意すればいいので楽なもんである。
皆シンと静まり返り、大多数は好機の目線でシノブに見詰めてくる。
スピーチの内容をある程度知らされている教師もにたような感じだ。
『どうも、色々あってこの場に立つ事になり、生徒の代表も任されました藤崎 シノブです。本当は裏方要員に回りたかったんですけど、教育機関として色々と問題があるらしく、選手の一人として参加する事になりました』
彼方此方で笑いが起きる。
『もちろん皆さんも知っての通り、相方の谷村さんともどもハンデはつけるつもりです。あと、皆様も知っての通りささやかではありますが学年、クラスごとにごとにプレゼントを有力者の方に用意させていただきました』
『さらには部活対抗リレーにもプレゼントを用意させて頂いております』
『語る事は以上ですかね? それではこれよい体育祭の開催を宣言致します』
と、無難な形で語り終えた。
皆から拍手が送られる。
☆
=種目・100m走=
100m走。
重りとして40kgの土嚢を背負ってシノブは参加した。更に両腕両足に重りを付けている。バトル漫画の主人公の修行状態だ。
亮太郎も似たような感じである。
教師も生徒も苦笑はしていたが、これでもハンデになるかどうか分からないぐらいなのは何となくだが理解していた。
さらに二人は少し遅れてスタートと言う形になる。
『こちら実況席、あまり個人を応援するのはアレなんですがこの体育祭の大注目の選手の登場です!!』
『審判の先生も、並んでいる生徒達も緊張していますね』
皆ここ一番の有名人の出番に皆注目していた。
スマホで撮影まで始めている。
クラスの誰かはまた掲示板で話題にしたりするのだろうかと苦笑した。
『今スタート!!』
そしてスタート。
皆全力疾走。
シノブは少し遅れてスタート。
流す感じで走るが、それでも重量差を感じさせない程に速い。
『速い速い!? 本当に五十Kg以上の重りついてるんですかアレ!?』
『ちなみに自衛隊の空挺の方は四十Kgの装備に身を固めて十キロを行軍するそうです』
会場が大盛り上がりだ。
オリンピックの陸上選手並みの速度に抑えているがそれでも常人離れしている。
『今ゴール!! シノブ選手、僅差で一着です!! ハンデを物ともしません!! と言うか本当に重り付けてるんでしょうかアレ? ちょっと後で確認して行っていいでしょうか?』
『あっ、先生がチェックしてますね』
審判の先生が念のために重りに不備が無いのか確認していっている。
シノブから重りを受け取り、その場に思わず崩れ落ちた。
素人目に身ても演技ではない。本当に重たい重りをつけて走っていたのが素人目でも分かる。
『大丈夫でしょうか? 重りは本物だったようですね』
☆
=特別プログラム・綱引き=
『えーとここで学校側から緊急で組まれた特別プログラムです』
『藤崎 シノブ選手と谷村 亮太郎選手VS自衛隊、警察、消防署の綱引き合戦です』
『二対三十の綱引き勝負。本来なら相手になりませんが、藤崎選手は一撃で熊を殴り倒す程の腕力がありますからね。谷村選手も同じぐらいの実力者でありますから』
それでいて二人とも重り状態は継続したまま。
観客は二人と三十人の応援、半々だ。
両者ともに緊迫感が漂う中で、試合開始。
『拮抗状態になりました!!』
『連合チームが本気になってますね!!』
綱引き拮抗状態。
二人(ハンデ付き)VS三十人の戦い。
徐々にだが二人は連合チームを引っ張っていく。
そして――
『激戦を制したのは藤崎 シノブ、谷村 亮太郎のペアです!!』
『思ったよりいい勝負になってます』
拮抗状態。
徐々に三十人の連合チームが押されていく。
両者ともに必死の形相だ。
思ったより手に汗握る展開である。
シノブと亮太郎はハンデを勝手に追加したのだろうか。
そして――
『勝負あり!!』
『藤崎、谷村ペアの勝利です!!』
わぁと会場の歓声が沸いた。
ただの綱引きでえらい盛り上がりである。
普通の運動会でもこうはならないだろう。
『互いの健闘を称え合ってます!!』
『色々心配しましたが杞憂でしたね』
今や二人はスーパーヒーローであると同時に有名人である。
面倒なあれこれや立ち回りが必要となる厄介な御身分だが、そんな事を感じさせない様子だ。
歓声と拍手が会場を包み込み、舞台にたった人々を祝福する。




