出会い再び
「で、どこまで潜るのですか?」パーカーを脱ぎながら、シャイナが聞いてくる。
「とりあえず、境森まで。」
「え~、涼音、私無理だよ~。」
「桃花さまは、私がお守り致します。」キャラが力強く宣言する。
「ははは、良かったね、桃花。」
そう言いながら、涼音はどんどん進んでいく。
キャラとシャイナも問題なく涼音に続く。
(私だけ、凄く場違いだよ~。)桃花は涙目になりながら、それに続く。
「う~ん、おかしいね。」
「そうですね。」
「涼音、何が?」
「魔物がいないんだよ。」
「動物もですね。」
「まぁ、まだ浅いからかな?」
「絶対におかしいよ!」そう叫ぶ涼音たちは、七番目の森「黒森」にいた、次が「境森」である。
「えぇ、確かに。」
「あり得ないな。」
「やっぱり、いないの?」
「うん。」
「今まで、一度も経験したことない。」
「こちらの森のことは、良く判りませんが、私達の森でもこんなことはあり得ません。」
「どうする? 戻るか?」
「いや、キャラ、境森迄は行こう、そこも同じ状態なら、帰って姉さん達に報告しよう。」
「解りました。」
「え~、大丈夫なの~?」
「私がお守りします。」
「う~。」
「行くよ。」
「此処もか。」涼音がぽつりとつぶやく。
「うん、涼音様、あちらに何かの反応が。」シャイナがある方向に指を差して言う。
「あぁ、空間が揺らいでいるな。」
「え? キャラ、それって。」
「あぁ、まずい。」
「あああ、どうしよう。」涼音が狼狽える。
「あら~、これは。」シャイナも狼狽する。
「うむ、どう対処しようか?」キャラは男前な対応をするが、実は何も考えていない。
森が、どこかと繋がりつつある。
「今から帰っても、間に合わないよね。」
「えぇ。」
「無理だな。」
「え? え? 何が起きてるの?」
「一番良いのは、姉さん達をここに連れてくること。」
「間に合いそうもないですね。」
「だよねぇ。」
「いや、涼音、だよねぇじゃないよ、何が起きてるの?」
「うん、桃花。」
「なに?」
「森のことは何処まで解る?」
「え~っと、最初はキャラさんの森としか繋がっていなくて、その後にシャイナさんの森と繋がった?」
「うん、その後、魔族の国と繋がった。」
「あ~、アモナさんの?」桃花が悲しそな顔で言う。
「うん、もう塞いだけどね。」
「え~っと、まさか?」
「うん、今桃花が考えているので正解。」
「どこかと繋がるの?」
「歴史的瞬間に立ち会ってるんだよ。」
「良い顔して、とんでもないこと言わないで~。」
「事実だから、どうしようもない。」
「そうですねぇ、今は見守るしか。」
「いざとなったら、桃花さまを抱えて逃げます!」
「今直ぐ逃げるって選択は無いんだ?」桃花が言う。
「すみません、一応森の守護者なので。」キャラウェイが頬を指でかきながら言う。
「姉さんたちに比べれば、少し劣るけど、私達だってそれなりだから。」
「そうなの?」
「大丈夫だよ、いざとなったら桃花の神威で。」
「黒龍に通用しないものが?」
「あはは。」
「涼音、笑ってごまかさないで。」
「一応、あたしも最上級の5人の末席なんで。」
「あ、忘れてた。」
「桃花、何気に酷い。」
「だって、いつもの涼音を見てるから。」
「お二人とも、繋がりますよ。」シャイナが緊張して言う。
揺らいでいた空間が、元に戻る。
いや、元に戻るという表現は、どうなのか。
その向こうには、違う森の存在を感じられた。
そして、桃花以外の全員が臨戦態勢を取って、目をつぶった。
「桃花、目を閉じて。」
「え?」
「早く。」
「解った。」桃花は固く目を閉じる。
その刹那、桃花でも判るすさまじい存在がそこに現れた。
「護壁、堅牢。」涼音は防護壁を唱える。
「そこにいはるのは、この森の守護者で良いどすか?」その存在が言う。
「すまない、私は森の守護者であるが、この森の守護者ではない。」キャラが答える。
「ん~、でも森の守護者と同等の力を感じるんどす。」
「はい、それはあたしです。」涼音が目をつぶったまま手を上げる。
「あぁ、成程。」
「すみません、あたし未熟なもので、まだ森に認められていないんです。」
「え? 認められているようどすが?」
「へ?」
(何だろう、目を瞑っていても、涼音の動揺が手に取るように判る。)桃花が思う。
「あ、本当だ。」涼音が声を上げる。
「ほほほ、面白い方どすな。」そこにいる存在が声をあげて笑う。
「ごほん、改めて、こちらの森にようこそ。」涼音の声がする。
「はい、お邪魔させていただきおす。」
「私達は、貴方に敵対いたしません。」
「はい、うちもどす。」
「え~っと、目を開いても良いですか。」涼音が問う。
「えぇ、何故目を瞑っているのかと思ったら、そう言う事どすか。」そこにいた存在が言う。
「どうぞ。」
私は、片目を開けて目の前の人(?)を見る。
そこにいたのは、肌の色が少し緑色をした、絶世の美人だった。(桃花基準)
「ふわ。」涼音もその人の顔を見て固まっていた。
「ふふふ、お初どすな、うちは白魔族連合のべリアーナと申しおす、以後お見知りおきを。」その人(?)は優雅にお辞儀をする。
「魔族の方ですか?」涼音が臨戦態勢で言う。
「その通りどす。」
「力の試しが要りますか?」
「なんどすか、それ?」
「いや、つい最近まで、魔族がいて、その者には上位の力を見せないと納得しなかったので。」
「あぁ、それは黒魔族どすな。」
「黒魔族?」
「えぇ、力至上主義で、魔力でも武力でも自分より上の存在に傾倒する馬鹿どす。」
「あ~。」
「何か?」
「すみません、思い当たる節が。」
「成程。」
「つい最近まで、アモナと言う魔族がいたんです。」
「あぁ、黒魔族の族長の娘どすな、最近まで行方不明とされてありんしが。」
「黒龍に殺されました。」
「え?」
「その後、アモナの近親者と言う魔族が現れて。」
「黒魔族の族長でありんしか?」
「多分。」
「それは、私の姉さん達が・・」
「滅したと。」
「で、べリアーナ様。」
「べリアーナと呼び捨てで良いどす。」
「では、べリアーナ、どういたしますか?」
「どうするとは?」
「力の試しは?」
「要りしまへん。」
「え?」
「先ほども言いましたが、うち達白魔族は力の試しなどは行いまへん、異なる文化とは、可能な限り『対話』で物事を決めおす。」
「個の力の優劣は、関係ないと?」
「その通りどす。」
「成程。」
「では、問いましょう、貴女の名は?」
「あ!」涼音が名乗りもせずに、話を進めていることに気付く。
「しし、失礼いたしました、あた、私は、結衣涼音と言います。」
「私は、キャラウェイ・クリシュトガー、この森と繋がった、違う森の守護者だ。」
「初めまして、べリアーナ様、私はシャイナ・キルシュファナー、同じく、別の森の守護者です。」
「あの、あの、私はただの高校生の春野桃花です。」
「そなたは、巫女か、珍しいの。」
「で、べリアーナ、何でここに?」涼音が問う。
「こちらの森で、時空振が起り、ここと繋がったので調査に来たんどす。」
「え? たった一人で?」涼音は驚愕しながら言う。
「命を終えるのは、一人で充分どす。」
「ではべリアーナ、私と同行してください。」涼音が真剣な顔で言う。
「同行?」
「はい、私は森の守護者としては若輩、私の姉さん、真の森の守護者にご面会してください。」
「真の森の守護者?」
「はい。」
「ふふふ、異なる森の守護者が一緒に行動している事も奇妙どすが、真の森の守護者が森にいない事も面妖どす、」
「あ~、その通りです。」涼音は諦めたように言う。
「ふむ、うちが身を隠す衣はありんすか?」
「え?」
「そなた達とは、容姿が違うゆえ、必要でありんす?」
「あの、私のパーカーを使ってください。」桃花が取り出して言う。
「おぉ、お借りするでありんす、では、案内よろしゅう。」
「はひ、こちらに。」涼音が思いっきり噛みながら言う。
5人は、森の出口を目指した。
「うぅ、圧がすごいよ~。」桃花が涙目になって言う。
「大丈夫、そのうち慣れる。」涼音が何の根拠もなく言う。
「本当に?」
「・・・多分?」
「答えるまでの間と、疑問形がめちゃめちゃ心配なんだけど!」
「大丈夫、桃花。」
「へ?」
「成るようにしか成らないよ。」
「涼音、それ、全部見放してるよね!」
「考えたら負けだよ。」
「やだよ、そんな未来!」
「やばい事は、姉さんに丸投げすれば大体上手くいくから。」
「私、無関係だよね!」
「そうだと良いねえ。」
「涼音、短い付き合いだったね。」桃花が死んだ目で言う。
「あっ。」涼音が小さく叫ぶ。
「なに?」
「しーっ。」涼音がそう言いながら、足元の石を数個拾う。
「封魔石!」涼音はボソッと呟き、全ての石を指ではじく。
石は弧を描いて飛び、草むらにいた者に着弾する。
「「「「うぎゃぁぁぁ!」」」」という叫び声と共に、「「「「ガキョッ、ビシッ、メリメリメリ」」」」と嫌な音が響き渡る。
暫くすると、声も音も聞こえなくなった。
「よし、成功!」そう言いながら、涼音が草むらに入っていく。
「涼音?」桃花が声をかけると、涼音は何かを手にして戻ってきた。
「なにそれ?」桃花が、涼音が手に持っているものを見て言う。
「オーガですね。」
「シャイナ、正解。」
「オーガ?」
「桃花、こちらでは鬼が近いですね。」キャラが桃花に言う。
「お、お、お、鬼なんているの、ここ?」
「普通にいるよ。」
「まじかぁ。」桃花が驚愕していると、ベリアーナが興味津々と言う顔で近づいてくる。
「ふむ、面白き技でありんすね?」
「封魔石といって、そこらの石に対象を封印する業だよ。」そう言いながら、手の物をべリアーナに見せる。
「うちも、できるやろうか?」
「僧侶の素養があれば、あぁ、桃花は出来るよ。」
「へっ?」
「うちは、少しだけありんす。」
「おぉ、それならできる、いや、べリアーナのレベルはいくつ?」
「れべる?」
「え?」
「れべるとは、なんでありんす?」
「あー、べリアーナ、看破して良い?」
「かんぱ?」
「べリアーナのレベルを見て良い?」
「おや、そんな事が出来るんでありんすか?」
「出来るよ。」
「お願いするでありんす。」
「んじゃ。」そう言うと涼音は右手の親指と人差し指で円を作り、べリアーナを見る。
「べリアーナ 魔族 ホワイト種
鑑定士 レベル70
魔法士 レベル68
スキル ******
*******
*******
耐性 *******
*******」
「職業以外看破できないのは、初めて。」
「へぇ~、うちは鑑定士と魔法士のレベルがあるんやね?」
「え~っと、僧侶適正は何処に?」
「あぁ、魔法士は魔術師と僧侶の両適性どす。」
「成程、ではレベルが22以下の『モノ』を封印可能です。」
「で、きっと対価がいるのでありんすね?」
「えぇ、その対価は?」
「物質交換の技でどうどす?」
「物質交換?」
「例えば、今着ているものを、別の物と交換する「教えてください!」涼音が超食い気味に、べリアーナに詰め寄る。
「涼音、頭を冷やせ。」桃花が初級魔法で涼音の頭に水の塊をぶつけることで、涼音が我に返った。




