急転
「さて、何処から聞こうかな。」理沙がにっこりと微笑みながら言う。
「何で、黒龍クラスの化け物が此処にいるの?」
「な、我を化け物扱いするか。」
「え~、違うの?」真紀が困ったように言う。
「う、む、我の力を抑えられなければ、我は化け物だな。」
「おぉ、それは力関係を理解したと理解して良いのかな?」理沙が言う。
「理不尽に思うが、ソレで良い。」
「別に、抗っても良いよ、その方が楽しい。」詩織がにっこりと微笑んで言う。
「詩織の戯言は無視して、貴方はどうしたい?」理沙が黒龍に聞く。
「出来れば、平穏を。」
「はぁ、平穏かぁ、あなたの存在自体がそれを脅かしている。」真紀がため息をつきながら言う。
「そのようだな。」
「で、我に何を望む?」黒龍が問う。
「ふむ、その対価は何?」理沙が言う。
「ふむ、貴様らの命。」
その言葉を言い終わる前に、詩織が手に持った刀を黒龍の腕に突き刺す。
「な? ぐわぁぁぁ。」
「うるさい!」
「詩織、可哀そうだよ。」真紀が言う。
「当然の報い!」そう言いながら詩織が刀を引き抜く。
「くぅぅ、傷が再生しないだと?」
「私が錬成する刀は、草薙の剣。」詩織が言う。
「草薙?」
「所謂ドラゴンスレイヤーと呼ばれるもの。」
「な、何だと?」
「お前の今の立場が理解できたか?」
「くぅ。」
「詩織、脅しすぎ。」理沙がヒールをかけながら言う。
「うぅ、今の立場を理解した。」
「おぉ、それは良かった。」理沙が微笑みながら言う。
「んじゃぁ、何で貴方ほどの存在が此処にいるのか聞いて良い?」
「気が付いたら、此処に縫い付けられていた。」
「縫い付ける?」
「あぁ、それも、魂をだ。」
「おぉ、それは超高等テクニック。」
「我も、誰にやられたか理解できん。」
「危険な存在、このまま滅する。」
「詩織、まだ使い道があるから抑えて。」
「くぅ、分かった。」
「使い道か。」
「えぇ、貴方は私たちにとってその程度。」
「今のこの状況を、どうにもできないのがその答えだな。」
「で、肝心なことを聞く。」
「うん?」
「貴方はどうしたい?」
「むぅ。」
「出来るなら、自由を望む!」
「だよねぇ。」
「でも、貴方の魂が此処に縫い付けられてるから。」
「縫い付けられているから?」
「可能なのは、此処からあなた自身が抗って出るか。」
「抗って出るか・・」
「ここで死ぬか。」
「ぬぅ。」
「その二択。」
「抗う方法は?」
「おぉ、積極的だ。」詩織がびっくりしたように言う。
「まぁ、死ぬか生きるかの選択だからねぇ。」くすくす笑いながら真紀が言う。
「詩織も、真紀も茶化さない!」
「へ~い。」
「ほ~い。」
「魂の浸食を自分で消し去る。」理沙が優しく言う。
「ぬぅ。」
「縫い付けられた魂からの、負の欲求を精神で押さえつければ可能。」詩織が言う。
「簡単に言ってくれる。」
「ダンジョンのコアになっていたナーガと言い、龍族ってバカ?」真紀がやれやれとポーズを作って言う。
「返す言葉もない。」
「で、わしは、そこに封じられた龍を敵として、屠ればいいのだな?」
突然、今までそこに居なかったものの声が聞こえる。
「誰?」理沙が声の方向を見て言う。
そこには、魔族の男が立っていた。
「いつからそこに。」理沙が驚愕して言う。
「まったく気配が感じられなかった。」詩織も同様に言う。
「攻撃されていたら、全員死んでいた。」真紀も身構えながら言う。
「これは失礼、私は魔族の王、ダンテ・フィードリッヒ・ライヒャルトと言う。」魔族の男が綺麗に礼をする。
「質問する無礼をお許し願いたい。」理沙が一歩前に出て言う。
「おぉ、許そう。」魔族の男が言う。
「貴方の目的は?」
「おぉ、我が愛しい娘、「アモナ」が滅せられたのを感じたのでな、その敵討ちと言う所か。」
「つまり、此処にいる黒龍を差し出せば、それで納めて頂けると?」
「ははは、何を言ってるんだ、アモナを助けられなかったお前達全員、いや、此処に存在するすべての命をもって、その対価としよう!」
「あ~。」詩織がライヒャルトの前に歩いていく。
「つまり、あたしたちを皆殺しにするって解釈で良い?」
「ほぉ、理解が早いなあばばばば。」
「敵って事で間違いないよね。」詩織が魔族の心臓部分に刀を突きさして言う。
「なぁ、その刀は我を滅するのか?」
「それだけじゃ駄目だね。」真紀が懐から短刀を取り出し、詩織が突き刺したすぐ傍を突き刺す。
「ぐわあぁぁぁぁぁ。」
「これで、滅せられればいいんだけど。」
そこにいた存在が霧散する。
「ふははは、我の影を滅するとはな、本体で相まみえるのが楽しみだ。」
その言葉を残して、そこにいた存在が消失する。
「厄介なことに巻き込まれた。」詩織がぼそりと言う。
「ちょ、黒龍さん?」真紀が叫ぶ。
「な、何時の間に?」理沙が言う。
そこには、黒龍の死体があった。




