最上級の出陣
遅くなりましたが、あけおめです。
今年も細々と更新していきますので、良しなにお願い申し上げます。
「た、大変なのじゃぁ~。」
「し、詩織さん、す、涼音が、ま、真紀さんを、真紀さんを。」
道楽亭のドアを入ると、ナーガと桃花が慌てて話し出す。
「おぉう、ちょ、落ち着いて、何があったの?」シュワが二人に声をかける。
「こ、こ、こ、」
「うん?」
「黒龍がいたのじゃ。」
ガチャン!
カウンターの奥で、何かが割れる音が響く。
「黒龍?」理沙が手に持っていたカップを落としていた。
「涼音はそう言ってた、そして真紀さんを連れて来てって。」桃花が声を絞り出す。
「真紀を連れて来いってことは。」詩織がカウンターから起き上がって言う。
「そう言う事だね。」理沙が何かを決意しながら言う。
「詩織、真紀を呼んできて。」
「了。」そう言いながら詩織は奥の部屋のオレンジ色の陣に消える。
「なんちゅうモノが、浅い森に出てくるかな?」理沙は独り言のようにつぶやくと、奥の部屋に消えた。
「アモナさんはどうしたのですか?」シュワがナーガに聞く。
「黒龍の一撃で。」
「一撃で?」
「四散したのじゃ。」
「つぅ、魔族をね?」
「あぁ、恐らく魂も残っていないはずじゃ。」
「好戦的な方でしたが、相手の力量も判らなかったのね。」
「そのようじゃ。」
「あの、シュワさん、黒龍って?」
「桃花さん、龍種は最凶の種族です。」
「え?ナーガさんもそうなんじゃ?」
「桃花殿、我は竜種じゃ。」
「我が竜は、その名の通り、竜なのじゃ。」
「え? よくわかんない?」
「龍は、ドラゴンと言った方がしっくりくるのじゃ。」
「ドラゴン?」
「桃花さん、ナーガタイプは蛇に手足が生えたもの。ドラゴンは、トカゲが巨大化した物と思えば良いと思います。」シュワが言う。
「トカゲ? ゴ〇ラみたいな?」
「そうじゃな、そして、我はドラ〇ンボールの神〇と思えばあながち間違っておらん。」
「伏字が多いけど、何となく判ったよ。」
「色々駄目ですね。」シュワが首を振る。
「さて、真紀を待って行こうか。」
理沙が、フル装備で出てきた。
「うわ、理沙姉、本気ね!」シュワが言う。
「今の装備は、不死者との戦いの時にも装備していなかったね。」
「相手は黒龍様だよ、最大限の敬意を払わなくちゃね。」
「お待た~、連れて来た~。」ドアから出てきた詩織も今まで見た事がない装備を身に着けていた。
「黒龍だって?」その後から現れた真紀はローマ法王が来ているような法衣姿で現れた。
「はぁ、絵里がいてくれたら、もっと簡単に終わったかもだけどね。」理沙が言う。
「居ないのだから、仕方がない!」詩織が答える。
「まぁ、うちらで何とかなるっしょ。」真紀が伸びをしながら言う。
「絵里さんって?」桃花がシュワに聞く。
「最上級の5人のお一人です。」
「最上級の5人?」
「元々は、理沙姉、クー姉(久美子)、ミー姉(美絵)、絵里姉(絵里)、シー姉(詩織)、が最上級の5人と言われていたの。」
「え? 初めて聞いたよ。」
「クー姉は、交通事故で命を落とした。」
「え?」
「その代わりに、クー姉の妹の真紀姉が選ばれた。」
「それ、聞いても良いことなの?」
「構わないですね。」
「そして、ミー姉も色々あって、引退した。」
「それで涼音?」
「本当は、涼姉は、クー姉の代わりだったんだ。」
「久美子さんって?」
「僧侶の上位職だった。」
「涼姉も僧侶適正が高かったけど。」
「けど?」
「真紀姉の方が、涼姉よりも上位の能力だった。」
「はぁ。」
「その後涼姉は、境森の深遠で先代の森の王に挑んで、死にかけた所を真紀姉に助けられた。」
「はぁ、涼音って何気に苦労人なんだね。」
「最後の方は自業自得。」
「さて、では行こうか。」理沙が言う。
「しゃーない。」詩織が答える。
「龍か、久々だね。」真紀が言いながら店を出る。
「あの、私も一緒に行っていいですか?」桃花が言う。
「足手纏い。」詩織が桃花をちらりと見て言う。
「あんたの『神威』は通用しない相手だよ。」理沙が言う。
「貴女のレベルじゃ瞬殺だから、私たちに任せて。」真紀が言う。
「まぁ、こっそりついてきたら、自己責任?」真紀がにっこりと微笑んで言う。
「いくんですか?」シュワが桃花に言う。
「シュワさんもそのつもりなんでしょ?」
「涼音を屠るのは私ね。」
「ふふ、仲良いね。」
「我は、留守番しとくのじゃ。」
「では、ナーガさん、お願いしますね。」
「まったく悲壮感を感じないんだけど。」
「最上級の5人が3人揃ってるから。」
「それ、凄いの?」
「あぁ、桃花さんは不死者の進行を知らないんだすね。」
「不死者?」
「不死の魔王が、不死の女王と供に、森に入ろうとしたんです。」
「へ~。」
「感動が薄いですね。」
「いや、良く判らないし。」
「森から、アンデットが町を襲い始める所だったんです。」
「ほえ? 何それ怖い、リアルゾンビ?」
「とにかく、理沙姉、シー姉、涼姉の三人が、エルフと獣人達と協力して、進行を防いだんです。」
「そんなの始めて聞いたよ。」
「知ったら町中がパニックです。」
「あ~、確かに。」
「とにかく、「最上級の5人」が3人もいれば、森の中の出来事は大概が終わるんです。」
「何となく解ったよ。」
「で、涼姉が、真紀姉を連れて来てと言ったって事は。」
「事は?」
「涼姉が死にかけてる。」
「え?」
「そこまでして、桃花さんを逃がしたかったって事です。」
「な、涼音が?」
「多分。」
「涼音ぇ~、ひっぱたいてやる!」
「え?」
「自分を犠牲にして助けられても嬉しくない!」
「いや、桃花さん、それだけの相手だって事です。」
「だって。」
「涼姉がそうしなかったら、きっと全員がそこで死んでる。」
「実際、アモナさんは消滅してる。」
「はぅ。」喉の奥から込み上げる物を桃花が耐える。
「今は、姉さん達の後を付いて行くだけです。」
「うぅ、判ったよ。」桃花はよろよろと理沙たちの後を追った。
「私、忘れ去られてますよね。」
「我が守ったのじゃ。」
「何か、釈然としないのは何故でしょう?」
「気にしたら負け、じゃな。」




