再起動
「愛華がいないと、なんかこの部屋広いね。」
「涼姉もそう思いますか?」
「あぁ、まだ慣れないな。」
「もう、一か月ですから、そろそろ慣れないと。」
「シュワ、知り合いが消えるのはいつまでたっても慣れないよ。」
「おはようございます。」
「おはよう桃花。」
「おはようにゃ、桃花。」
「シュワさん、コーヒー淹れて。」
「はいにゃ。」
「あー、あたしも欲しい。」
「うわ、二人の好みが違うから、凄く面倒にゃ!」
「あたしは桃花と同じで良いよ。」
「にゃ?粗挽きをドリップで薄くで良いにゃ?」
「うん。」
「涼姉は細引きをドリップで濃くにゃ。」
「今はそう言う気分なの。」
「解ったにゃ。」
シュワは4人分のコーヒーを煎れる。
「どうぞにゃ。」カウンター越しに桃花と涼音の前にコーヒーを置く。
「ありがとう。」
「サンキュ。」
「しー姉もどうぞです。」シュワはカウンター越しに詩織の前にカップを置く。
「ん~、てんきゅう。」と言って、突っ伏したまま詩織がコーヒーを啜る。
「毎回思うんだけど、あれ、どうやって飲んでるの?」
「桃花、最上級の一人だよ?」
「え?それって?」
「判らない!」
「ほえ?」
「きっとね、この店に係る全ての此処の禁則事項の一つ。」
「え?そんなに凄い事なの?」
「あー又だよ。」理沙姉が奥の部屋から出てきた。
「おはようございます、理沙さん。」
「あー、桃花おは。って、丁度良いや。」
「うわぁ、嫌な予感。」
「なによぉ、涼音。」
「素材でしょ。」
「解ってるじゃない。」
「因みに、どんだけ?」
「ん?量?期限?」
「両方!」
「境森にいる骨烏10羽。で時間は3時間かな。」
「うお、理沙姉。無理ゲーだよ。」
「お邪魔します。」
「あぁ、シャイナ、まずい時に・・いらっしゃい。」
「はい?」
「んじゃ、行こうか!」
「え?」
「桃花は巫女装束をさっさと着る!」
「え?え?え?」
「何なら手伝うよ。」
「いや、良いから、自分でできるから。」
「ちっ。」
「ちょ、涼音、「ちっ。」ってなに?」
「何でもない!」
「そう言う涼音は、相変わらず学校のジャージなんだね。」
「可愛い忍者装束って、なかなか無くてさ。」
「いや、忍者装束に可愛さは・・。」
「シャイナはそのままで良いよね。」
「はぁ。」
*********
「う、う。もう一時間過ぎたよ。」
「あと30分で集められなかったら、道楽亭を中心に半径30kmが消えるよ~。」
「涼音、後3羽です。」
「シャイナ~。骨鳥は希少種なんだよ~。」
「しかも、昆虫種の巨大な奴が出る場所だし。」
「涼音、私も頑張るからあきらめないで!」
「う~、桃花が癒しになってるから、頑張る。」
「涼音、右に骨鳥の反応!距離300m。」
「シャイナさん、そのすぐ横に巨大な昆虫が!」
「うわぁ、ロックオンされた!」
「カ、カマキリだね、あれ。」涼音が忍者刀を抜きながら言う。
「体長が7m程ありますけど、そう見えますね。」シャイナも弓を構えながら言う。
「わ、私帰っても良いかな。」桃花がビビりながら言う。
「え~、桃花の神威でびしっと終わらせちゃってよ。」
「涼音、怖い事言わないで。いろんな意味でアウトだよ。」
「え~そかな?スサノオなんか良さげでないかい?」
「やだよ。そんな危ない神様。」
「おー、桃花はどんな神様か知ってるんだ。」
「一応勉強したよ。」
「偉い偉い!」
「全然褒められてる気がしないんだけど。」
「気のせいだよ。」
「涼音、奴が攻撃を仕掛けてきました。」シャイナが矢を射りながら言う。
「おっと、桃花、マジで神威して。」
「え~、無理無理無理。」
「でないと、うち等の何人か死ぬかも。」
事実シャイナが放った矢は、カマキリの額に当たったが、装甲に弾かれていた。
「何それ!」桃花が叫ぶと同時に涼音がカマキリの一撃を忍者刀でいなす。
カマキリの攻撃は、捕食をするために、その鎌で獲物を挟もうとするものだ。
7mサイズのカマキリのその行為は、普通の人間には見切れない速さだった。
「ちょ、きついこれ。」涼音が弱音を吐きながら、カマキリの鎌の攻撃をいなす。
「シャイナ、お腹の部分が柔らかそうだからそこに攻撃して。」
「了!」
シャイナが弓の攻撃をカマキリの腹部に放つ。
すると、その矢は簡単に、カマキリの腹部に刺さる。
「お、効いてそうだよ。」涼音が鎌をいなしながら言う。
「シャイナ、もっと重い攻撃ないかな?」
「すみません、ありません。」
「数を当てるしか無いのか。」そう言いながら、涼音はカマキリの下に滑り込む。
「秘技、一閃。」そう言いながら忍者刀でカマキリの腹部を縦に引き裂くように切り裂く。
カマキリの腹から体液が迸るが、その量は少ない。
「浅かった。」
「くそ、忍者刀の刀身の長さじゃ、届かないか!」
シャイナが横に回りながら、弓を射って、その腹部に確実にダメージを与えるが、致命傷には程遠い。」
「桃花、マジヤバイ!」涼音がそう言った時、カマキリが鎌で涼音を跳ね飛ばした。
「涼音!」そう言いながら、桃花の雰囲気が変わる。
「良いよ、覚悟した。もう知らないからね。」桃花がにっこりと笑いながらそれを口にする。
「神威!スサノオ!」
桃花の全身が光に包まれる。
その光の中で、桃花の身体が膨らむ。
巫女衣装が体形に合わせて膨張する。
「ふははは。」
そこには、筋骨隆々の男が存在していた。
スサノオは腰に有った剣を抜く。
「害虫が。」そう言うとゆらりと前に出る。
カマキリはその行動に合わせて鎌を振り出すが、その攻撃を剣でいなすと、そのままカマキリの首を撥ねた。
「おぉ~瞬殺だよ!」
「凄いですね。」
しかしその瞬間、スサノオが声を発する。
「足りん!」
「え?」
「我を降臨して、この程度の魔物だけとは!」
「うわ、まずいね。」
「スサノオ殿!」
「何だ、エルフ!」
「その周りにいる骨鳥を掃討してください!」
「はぁ?たかが数百匹ではないか。まぁ良い。」そう言いながら剣を無造作に振る。」
「おや、意外にいたようだ、まぁ、これで勘弁してやろう。」
そう言うと、スサノオは桃花から離れる。
「マジでやばかったね!」
「涼音、私の感知では、3400羽の骨鳥が駆逐されています。」
「うわぁ、まじ?」
「えぇ。」
「全部拾って、理沙姉に届けよう。」
「え?全部ですか?」
「理沙姉なら何とかしてくれる。多分。」
そう言いながら、涼音達は骨鳥を理沙姉に貰ったマジックアイテム「時間停止の部屋」に集めて道楽亭に戻った。
理沙姉が、にっこりと笑いながら、口元をぴくぴくさせていたのは別の話だ。
「ねぇ、やっぱり神威ってやばいよね!」
「何となく解った。」
「え~。信じて良いの?」
「解んない。」
「アマテラスだとどうなるんだろう?」
「一回使ってみようよ。」
「え~?」
「でも、うん。そうしないと何も解んないよね。」
「桃花、何気に男前!」
「え?何かやだ!」
「ひゅ~ひゅ~。」
「涼音、やっぱり友達止めようかな。」
「ごめん、ごめん、ちゃんと協力するから。」
「う~、釈然としない!」
「悪かったよ!もう茶化さない!」
「う~、まぁいっか、許すよ。」
「桃花、大好きだよ。」
「な、何でいきなり懐くの?」
「ふへへ、桃花様の魅力ですがな。」
ベコン!
「痛った~い。」
「デコピンは練習したからね!」
「うぅ、私の桃花が染まっていく!」
「染めてんのは誰だよ!」
「おぉ、あたしか。」
「そうだよ!」
「はははは。」
「笑い事じゃない!」
「はははは。」
「涼音~。」
「いや、もう、あたしじゃどうにもなんないよ!」
「う~。」




